「ラ・ラ・ランド」


 昨日は近所のシネコンのレイトショーで念願の「ラ・ラ・ランド」を観た。
 以下、思いついたことを幾つか
 まず 傑作だと思う。21世紀でもミュージカルはありだということを証明した映画だ。そしてこの映画は諸々突っ込んじゃいけない。映画的記憶を駆使して愉しむ、素直にドラマ、ダンス、ミュージックを受け入れる、そういう種類の映画。
 この映画には過去のミュージカルのエッセンスがつまっている。それを証明するような編集された動画もアップされている。まさしくミュージカル・クラシックのオマージュとして成立している。
La La Land - Movie References on Vimeo
 ライアン・ゴズリングエマ・ストーンはダンスナンバーをよく演じきったと思う。ほとんどがワンカットシーンである。多少、たどたどしさや優雅さに欠けていたからといってたいしたことはないと思う。この映画はあくまでオマージュなのだから、いちいちそれをアスレア・ロジャース。アステア・パウェル、アステア・チャリシィのそれと、ジーン・ケリーレスリー・キャロルと比べてもしょうがないのだと思う。
 この映画のオープニングの高速道路での群舞、トラフィック・ダンス・ナンバーはまちがいなく「ロシュフォールの恋人」からインスパイアされたものだと思う。一方はスローなナンバーで気だるい雰囲気、一方はアップテンポな快活なナンバーという違いはあるが、いずれも一気に映画の世界に引き込む重要なシーンだ。そして古き良きミュージカル映画を現代に、一方は60年代世界に、一方は2010年代世界に再現しようという大いなる試みである。デイミアン・チャゼル監督と音楽のジャスティン・ハーウィッツを「ロシュフォールの恋人」のジャック・ドゥミミシェル・ルグランと比較してみるのも楽しい試みかもしれない。
 そしてこの映画のメイン・テーマは多分、エマ・ストーンがオーディションシーンで独唱する歌の歌詞に表現されているのだと思う。それは夢追い人の狂気が<新しい色>を示してくれるということ。あらゆるクリエィティブの世界で新しい何かを生み出すのは夢見る愚か者のイカれた行動によると。
 それはそのまま監督デイミアン・チャゼルのメイン・テーマなのだと思う。前作「セッション」でミュージシャンの壮絶な狂気を描き、本作「ラ・ラ・ランド」でもクリエイター=夢追い人の狂気を描いた。

どうか乾杯を 夢追い人に たとえ愚かに見えても
どうか乾杯を 心の痛みに