丸木美術館

 一度は行ってみたいと思っていたのだが、テーマの重さに中々足を向ける勇気がなかったというか、なんとなく避けて通ってきてしまった場所だが、まあ近くだからと比較的軽い気持ちで家族で訪問した。
http://www.aya.or.jp/~marukimsn/

 「原爆の図」は圧巻である。正直言葉もない。ただこの絵を多くの人が観るべきだとは思うし、自分も遅まきながらこれからも何度も観る必要があるとは思った。
 この絵がある意味、日本の原水禁運動を支えてきたのではないかという気もした。ただし戦後の第五福竜丸にモチーフにした作品などにはなんとなく原水禁運動のプロバガンダ的な思惑が透けてみえたりするものもあった。芸術がこのようにして運動に利用されていくということなのだろうか。もちろん私の拙い鑑賞眼が感じた拙い意見ではあるのだが、何か芸術家の感性と衝動によって制作された「原爆図」とは違う趣のようにも思った。
 その他では共同制作作品である「アウシュヴィッツ」や「南京大虐殺」はやはり背筋をゾクゾクとさせるものがあった。特に「アウシュヴィッツ」には描かれるユダヤの囚人の姿にビュフェを思わせるものがあった。丸木位里はある意味、戦後の不安感や虚無感を表出した実存主義に近い心性を持っていたのかもしれないなどと漠然と思ったりもした。これもいつもの勘違いではあるのだろうが。