ステーキハウス55

Dining | Disneyland Resort
ディズニーランド・パーク開業と同時オープンの老舗ディズニーランドホテルの由緒正しきレストラン。以上でも以下でもなし。お味はまあリゾートホテルのレストランだし、アメリカだし、ステーキだし、ということでこれについても以上でも以下でもなし。
ロケーション的にはキャラクター・ダイニングで有名なグーフィーズ・キッチンのトイ面に位置していて、朝食なんかだとなんとなくグーフィーズ・キッチンにうまく時間的に入れなかったお客さんが収容されているみたいなイメージを2日間とも朝そのまえを通っただけの印象ではまあそんな感じです。
ほんでもってお食事のほうは、たぶんセットがあるのだろうが、なんとなくウェイターに進められるままにすべて単品で注文。ようは言われるがままみたいな感じだったので、かなり割高になってしまったかな。前菜、スープ、サラダ、ステーキ、デザートなどなどで、リゾートのレストランにしてはかなりの額払ってきた。でもまあいいか、この旅行できちんとお店の中で食事したのがほとんど初めてだったのだから。それまでファミマのサンドイッチとか、テイクアウトで食べたドーナッツとか、ハンバーガーとか、ほぼそんなものばかりだったから。おまけにビールも飲んだし、ワインもフルボトル、ほぼ一人で空けてきたし。
食事のほうは、よくも悪くもアメリカン。味きわめて濃ゆし、量も異常に多い。前菜とサラダでほぼ一食分に匹敵するだろうっていう感じで、妻と娘はメインのステーキでてきた時点でほぼギブアップ状態だったし。私は、完食しましたよ。ミディアムレアのステーキは量、厚さ、焼き具合もそこそこで実際美味かったし。でも大人の私でもマジに腹いっぱいになった。実際そういう量である。
妻と娘は二人ともメインのステーキを半分くらい残した。もう食べきれないと言う。お肉大好きの娘にしてギブアップなのである。恐るべしアメリカン・ディナーである。こういうのを普段食べなれているアメリカ人に肥満が蔓延するのもかくありなんという感じだ。
なのに、なのに、ウェイターからデザートどうする、「デリーシャス」みたいに勧められると、一も二もなく「食べる、食べる」と即答。お前らステーキ残してそれはないだろうというところなのだが、タルトだのなんだので、なんかメニュー観てても美味そうな響きがするので、まあ記念、イベントみたいな感じで二人分頼む。大きなお皿に美しく盛り付けた、まあデザート、名前からなにやら忘れた。たぶん20ドル以上したような気もするが。まあ文字通りデザートは別腹というのを目の当たりにさせてもらった。
このレストランの壁面ほとんどに額に入ったセピア色の写真が一面飾ってある。最近の若い人たちはなにやら美男美女の古い写真みたいなものでしかないのだろうが、我々のようなオールドな映画ファンにはその写真の一つ一つが垂涎の的みたいなものなのである。1940〜60年代くらいのハリウッドの大スターたちが食事をしている、やや寛いだ感のあるポートレートばかりなのである。ひょっとしてこのレストランで撮られたものという気もしないではなかったが、あまりにも大スターたちばかりなので、雰囲気作りに飾ってあるものだろうくらいにも思った。
後で私たちのテーブルについたウェイターとは別にパンのお代わりを持ってきてくれたウェイターが、回りの写真についてうんちくというか説明をしてくれた。まあ英語だから意味の半分もわかりゃしないのだけど、そりゃ勢いと前後の文脈みたいな感じで、どうもこの写真はみんなこのレストランで彼ら大スターが食事をした時のものだというようなことを誇らしげに話してくれた。この誇らしげは、いかにも皆さんが座っているこのレストランのテーブルはこういう由緒正しいものなんだよ的な感じで、私はこういうのが大好きである。
ウェイターはすぐ後ろに飾ってある写真のカップルを指差して、「これが誰かわかります」みたいなことを聞いてくる。東洋人にはわからんだろうな〜的な感じだったと思う。私が「ボガート、ローレン・バコール」と即答すると、ウェイターは目を丸くする。その隣の写真はちょっと悩みながら、「ケーリー・グラント、アンド グレース・ケリー?」と話を向けると、ウェイターは「ノー、ノー、シー イズ エヴァ・ガードナー」と。
私は「オーケー」と答える。なんとなく、たぶんなんとなくだけどこの初老のウェイターも映画が大好きなんだろうなと思った。たったそれだけの二言三言だけだったけど、少し心が通じ合ったような心持がした。そしてもう一度回りを見渡すと改めて飾ってある大スターたちのポートレイトに歴史とかそういうもろもろを感じたりもした。
たぶん推測だけど、オープニング当初のディズニーランドにウォルト・ディズニーは知り合いの大スター達を積極的に招待したのだろう。位置関係としてもハリウッドからはすぐ近くである。映画界の大物であるウォルトが声をかければスターたちも招待に応じざるを得なかっただろう。あるいは大スターたちを広告塔として利用するため、相当なお金をかけてのかもしれない。ディズニーランドで遊ぶスターたち、ホテルのディナーで楽しそうに食事をとるスター。それは夢の舞台であるディズニーランドを彩るための要素の一つだったのかもしれん。
改めて店の名前、ステーキハウス55の55という数字の意味を考えさせられることになるな。55はイコールsince 1955ということ。55年からやっているよということ、ようはディズニーランドの開業と同時に始めた由緒正しきレストランだということ。だから創業以来ここはディズニーランドの夢の一部として皆さんに寛いだ雰囲気と美味しい食事を提供してきているのだよと、まあそういうことを示唆しているわけなんだろう。
まあまあ、その手のウンチクはどうでもいいことだし、思い巡らし過ぎ、考え過ぎといってしまえばそれまでさ。でも映画好き、ハリウッド映画好き、しかもオールドタイマーにとってはなんとも居心地の良くなる場所ではあったかな。最初にも書いたけど、メニューには多分良く読めば、きっとエコノミーなセットメニューとかもあっただろう。言葉がわからない部分もあるけど、単品づくしでオーダーしたのだから、けっこうぼられたのかなと思う部分もある。この手のリゾートレストランにしてはかなり割高だったのもたしか。でも、私は映画的な雰囲気とかで楽しめた部分もあるし、妻と娘はとにかくディズニーのホテルでディナーが食べれたということで、まあまあ一生に一度あるかないかのささやかな贅沢を味わえたという感じで、それなりの良い一夜だったのではないかと思う。