ギリシア神話のあれこれ

 絵を観ているとキリスト教の知識、ギリシア神話の知識が要求される。そのエピソードが判っていないと名画を十分に鑑賞というか味わえないというか。入門書の類や美術館で絵画の解説がしてあるキャプションにも、そのモチーフの解説であることが多かったりする。なので少しずつそういう本も読まなくてはと思ったりもする。

 あとアトリービュートという、絵画のモチーフの属性となるものを理解することも重要になってくる。アトリビュート、持物(じぶつ)とか属性と訳される、その人物を特定するような事物ということらしい。なぜそういう属性によって人物を特定するのかといえば、おそらく絵画が宗教の布教等に利用されてきたこと、そして教会を訪れる一般大衆に絵とそこに描かれたものを説明するときに、テキスト=文字ではなく、絵から直接受け止められるようなものが必要だったからなのだろう。

 近代以前の識字率、文盲率みたいなことを考えれば、図像上のルールを設けておくことは大切なことだったのかもしれない。

 絵画の入門書にもところどころでそういうことへの解説がある。最近もキンドル・アンリミッテッドで以下の本を読んでいて、ギリシア神話アトリビュートについての記述があった。

 そこでついでだから、同じアンリミテッドで無料で読めるマンガ本とかを見ながら、簡単なメモを作ってみた。ある種の個人的なメモなのでそれは違うみたいなこともあるかもしれないけど、短時間で作った個人的アンチョコなので、まあそういうものだということだ。

 

 

ギリシア神話・オリュンポスの神々と英雄

1.ゼウス

ラテン語表記:ユピテル
・英語表記  :ジュピター
男神、オリュンポス12神
アトリビュート:鷲、雷電、笏など
・権能:天空、雷、嵐、雨
・父:クロノス、母:レア
オリュンポス12神を束ねる、ギリシア神話最高神。父クロノスをはじめとするティタン神族との戦いに勝利し、世界を治める全知全能の神として崇められる。天候を自在に操ることができ、雷を操る雷霆(らいてい)を携えている。天体におけるゼウスの象徴は木星。好色なことでも知られており、神や人間を問わず、多くの女性たちと浮名を流した。

 

2.ヘ-ラー(ヘラ)

ラテン語表記:ユノ
・英語表記  :ジュノ
・女神、オリュンポス12神
アトリビュート:孔雀、笏、王冠
・権能:結婚、貞節、母性
・父:クロノス、母:レア、ゼウスの正妻
ゼウスの正妻で、結婚や貞節を司る女神。6月を表す「JUNE」はヘラのラテン語名であるユノからとられており、6月に結婚するとヘラの加護で幸せになれるという言い伝えから、「ジューンブライド」という風習が生まれたとも考えられている。ヘラ自身は、夫ゼウスの浮気癖にたびたび悩まされている。その浮気相手や子どもに制裁を加えるため、嫉妬深い女神として描かれることもある。

 

3.ポセイドン

ラテン語表記:ネプトゥヌス
・英語表記  :ネプチューン
男神、オリュンポス12神
アトリビュート:トライデント(三つ又の矛)、イルカ、馬
・権能:海、川、泉、地震
・父:クロノス、母:レア、ゼウスの兄
ゼウスの兄弟で海を支配する神。三叉(さんさ)の鉾(ほこ)「トライデント」を持ち、海の波を自在に操り地震などの天災を起こすとも考えられている。司る天体は海王星で、海王星のマークはトライデントを象ったもの。海のように激しく、また雄大な性格。ゼウスと同じく好色で、さまざまな女性との逸話が残されている。豊穣の女神デメテルには拒絶されたが、馬に変身したゼメテルを同じく馬に変身して追いかけて交わり、名馬アレイオンが生まれる。ポセイドンは馬の創造主として馬術を人間に教えるようになった。

 

4.ハデス(プルトン)

ラテン語表記:プルト(ディース)
・英語表記  :プルートー
男神
アトリビュート:王杖、番犬ケルベロス水仙
・権能:冥界、死
・父:クロノス、母:レア、ゼウスの兄
ゼウスとポセイドンの兄弟。オリュンポス12神には数えられていないが、冥界を治める重要な神。死者の魂に冷静な裁きを下す冥界の王であり、「ハデス」という言葉そのものが死語の世界を指すこともある。冥界は地中深くにあり、入り口には3つ首の番犬ケルペロスがいるとされた。
ハデスはあまり表舞台に出ることがなく、ゼウスはポセイドンに比べると逸話の少ないが神だが、死を恐れる人々によってハデスを奉る神殿は多い。

 

5.デメテルデーメーテール

ラテン語表記:ケレス
・英語表記:シアリーズ
・女神、オリュンポス12神
アトリビュート穀物の穂の冠、穀物の束、鎌
・権能:豊穣、農業、穀物
・父:クロノス、母:レア、ゼウスの姉
ゼウスとの間に、娘コレー(のちのペルセポネ)がいる。デメテルが象徴するのは豊穣。彼女が期限を損ねたり、悲しみにくれたりすると、作物が実らなくなる。コレーが冥界の王ハデスでさらわれた際には、娘を探して世界中をさまよった。

 

6.ヘパイストス

ラテン語表記:ウルカヌス
・英語表記  :ヴァルカン
男神、オリュンポス12神
アトリビュート:鍛冶の道具(金槌、鉄鋏、斧、ふいご)、松葉杖、助手の巨人キュクロプス
・権能:神、鍛冶、火、古くは雷と火山の神、後に炎と鍛冶の神とされた
・母:ヘラ
ゼウスがあちこちで愛人と子を成していることに憤った正妻ヘラが、ひとりで産んだ子とされている。外見が醜く足が不自由だったためヘラから捨てられ、海の女神テティスとエウリュノメによって育てられた。成長後はオリュンポス12神に加わる。
鍛冶を司る神で職人の象徴でもあり、アポロンやアルテミスの弓矢などを作ったとされる。女神アプロティーティーの夫。

 

7.ヘルメス

ラテン語表記:メルクリウス
・英語表記  :マーキュリー
男神、オリュンポス12神
アトリビュート:羽根つきのサンダル、翼つきの帽子、伝令の杖、ラッパ、財布、牝羊
・権能:旅人、商売、高尚、泥棒
・父:ゼウス、母:マイア
羽のついた帽子とサンダル、2匹の蛇が絡みついた意匠の伝令杖ケリュケイオンを手にした伝令神。最高神ゼウスの使者として、さまざまな場面に登場する。生まれてすぐにゆりかごから抜け出し、太陽神アポロンの牛50頭を盗んだという逸話がある。

 

8.アポロン

ラテン語表記:アポロ
・英語表記  :アポロ
男神、オリュンポス12神
アトリビュート:弓、矢、矢筒、竪琴、弦楽器、月桂樹の冠、牧羊杖
・権能:予言、音楽、医術、太陽など
・父:ゼウス、母:レト
 予言、音楽、医術、道徳、弓矢、そして太陽を司る神であり、ゼウスの息子。双子の妹にアルテミスがいる。権能の多さからも見てとれるが、万能の神であり、若々しく美しい理想の男性像とされあ。古代ギリシアではゼウスに次いで信仰を集めた。一方、悲恋のエピソードも多い。

 

9.アルテミス

ラテン語表記:ディアナ
・英語表記  :ダイアナ
・女神、オリュンポス12神
アトリビュート:弓、猟犬、鹿、三日月のアクセサリー
・権能:狩猟、弓矢、貞淑、お産、月など
・父:ゼウス、母:レト
 アポロンの双子の妹で狩りの女神。弓の名手で、美術作品などでは鹿を引き連れ、弓矢を携えた姿で描かれた。時代が下ると月の女神としても崇められるようになった。処女神で潔癖なところがあり、ときに苛烈な行動も辞さない。狩人のアクタイオンが誤って彼女の水浴びを見たため、アクタイオンを鹿に姿を変えさせて彼の猟犬に殺させてしまう。

 

10.アテナ

ラテン語表記:ミネルウァ
・英語表記  :ミネルヴァ
・女神。オリュンポス12神
アトリビュート:武具、アイギスの盾、フクロウ
・権能:戦い、知恵、純潔
・父:ゼウス、母:メティス
 戦いの女神アテナは、自ら鎧兜を身につけて戦う戦士であり、勇敢で思慮深く、多くの人々から信仰された。ゼウスは自分の息子に王位を奪われることを恐れ、身籠った妻メティスを飲み込むが、やがてその頭の中から、成人し武装した姿の女神アテナが飛び出したという。

 

11.アレス

ラテン語表記:マルス
・英語表記  :マーズ
男神、オリュンポス12神
アトリビュート:槍、剣、矛槍、狼など
・権能:戦争、蛮族の父
・父:ゼウス、母:ヘラ
ゼウスとヘラの間に生まれた軍神だが、同じく戦いを司るアテナと比べると暴力的・破壊的な戦いを象徴しており、神々のなかでも嫌われ者だった。さまざまな蛮族の父といわれる。ローマ神話では軍神マルスと同一視され、ギリシア時代よりも優遇されるようになった。英語ではマーズと呼ばれ、火星は彼の名を冠している。

 

12.ヘスティア

ラテン語表記:ウェスタ
・英語表記  :ヴェスタ
・女神、オリュンポス12神
アトリビュート:炉、竈など
・権能:かまどの女神、家庭生活
・父:クロノス、母:レア、ゼウスの姉
かまどや家庭生活の守護神。ポセイドンとアポロンから求婚されたが、どちらとの結婚も望まず、ゼウスに処女の誓いを立てた。平和的で穏やかな性格。常に炉の側を守っているためエピソードは少なく、ディオニュソスに12神の座を譲ったとする説もある。クロノスとヘラの長女で、クロノスに最初に呑み込まれたが、クロノスがゼウスによって倒された際には最後に吐き出されたため、最も年少と言われることもあった。

 

〇 ディオニュソス

ラテン語表記:バッコス
・英語表記  :バッカス
男神
アトリビュート:葡萄、葡萄の葉の冠、松かさのついた杖、酒杯、山羊など
・権能:豊穣と葡萄酒、酩酊の神
・父:ゼウス、母:セメレー(テーバイの王女)
ヘラはゼウスの浮気相手セメレーを憎み、ヘラの謀略で人間の娘であるセメレーはゼウスの光輝に焼かれて死んでしまう。ゼウスはヘルメスにセメレーの焼死体からディオニュソスを採り上げさせ、地震の腿の中に埋め込み臨月がくるまで匿った。
その後、ディオニュソスはブドウ栽培を身につけ、放浪をしながら自らの神性を認めさせるため信者の獲得に勤しむ。彼には踊り狂う信者やサテュロス聖霊)が付き従った。
ディオニュソスはオリュンポス12神の一柱に数えられることがあるが、これは元々12神のヘスティアが、彼が12神に列せられないことを憐れんで、その席を譲ったためと言われている

 

〇 アフロディーテ

ラテン語表記:ウェヌス
・英語表記  :ヴィーナス
・女神
アトリビュート:バラ、イルカ、白鳥、エロス、ホタテ貝
・権能:愛、美
・両親なし
海の泡の中から生まれたとする。一説にはティタン神族の長クロノスが、父であるウラノスの男根を切り落とし海へ投げ入れると、そこから泡が生まれアフロディーテとなったという。その美貌は夜空にひときわ輝く金星に重ねられた。その美しさのため恋のエピソードに事欠かず、軍神アレスや美少年アドニストロイア王子アンキセスなど数多くの男性を魅了した。きまぐれで最初に結婚したのは醜いヘパイストス。

 

〇 ヘラクレス

ギリシア神話における最強の英雄。父はゼウス、母はペルセウスの孫であるアルクメネ。赤ん坊のころから怪力で、ゼウスの正妻ヘラより差し向けられた毒蛇を素手で絞殺したという。その後、ヘラの呪いで発狂し、家族を殺してしまったヘラクレスは、罪を償うために12の試練に挑む。

 

〇 エロス

アフロディテの従者とも息子ともいわれる男神ローマ神話ではアモル、クピド(キューピッド)と同一視されている。青年の姿で描かれることもあればば、羽の生えた幼児として登場することもある。
エロスに射られた者は情熱的な恋心を抱くようになる金の矢と、射られると人に嫌悪感を抱くようになる鉛の矢を手にしている。

 

〇 ペルセウス

セウスとアルゴス王女ダナエとの間に生まれた英雄。アルゴス王は孫に殺されるという神託を受けていたため、母とともに海に流されてしまう。自身の出生を知らずに育ったペルセウスは、暮らしている土地の領主から母を守るため、ゴルゴン退治の冒険に出ることになる。

 

〇 イアソン

イアソンの父アイソンは、イオルコス王の座を弟のペリアスに奪われ、息子をケンタウロスの賢者ケイローンに預けた。成長したイアソンを見たペリアスは甥を遠ざけるため、コルキス王アイテスがもつ「黄金の羊毛」を持ち帰れば王位を譲ると難題を与えた。そのためイアソンは、巨大な舟アルゴー船をつくり、ヘラクレスなど名だたる英雄を集めて航海に出た。
その後、さまざまな冒険を乗り越え無事に黄金の羊毛を持ち帰った。コルキスから連れ帰った妻メディアの助力もあり、王座の奪還に成功するが、やがて気性の激しいメディアによって破滅していく。

 

〇 パリス

トロイアな王子で、将軍ヘクトールの弟。三女神の美の争いに審判を下すことになり、これをきっかけにトロイア戦争が起こる。

 

〇 オデュッセウス

イオニア海に浮かぶイタケ島の王で、トロイア戦争では並びなき知将として活躍した。トロイアの木馬を考案して鉄壁の守りを陥落させ、長きにわたる戦いに終止符を打った人物。
オデュッセウスは、詩人ホメロスによる長編叙事詩オデュッセイア』の主人公でもあり、トロイア戦争終結後、彼が長い放浪の末に故郷に帰るまでが描かれている。一つ目巨人の島、人食い巨人族、怪物セイレーンとスキュラといったかずかずの苦難や魔女キルケとの蜜月など、エピソードに溢れている。