これでも菅政権を、自民党を支持できるのだろうか

 国会は16日に閉会した。案の定、閉会と同時に五輪を巡るバタバタと、有観客数1万人といた数字が出て来た。元経産省菅原一秀氏の政治資金規正法違反による罰金刑と公民権停止なども報じられた。しかし国会が閉じられているためこれらを追求する場もない状況だ。

 朝日新聞20日長官の2面に菅政権にとっての通常国会150日に関する解説記事が載っていたが、読んでいくと頭がクラクラしてくるような話ばかりだ。なぜ、こうした記事が国会開会中に書かれなかったのか、あるいは連日報道されなかったのかと思わざるを得ない。

国会150日間、答弁スカスカ 首相答弁、自民からも「簡潔すぎる」:朝日新聞デジタル

 記事内には菅首相の「国会に出ない」「説明しない」という国会軽視の姿勢が鮮明に書かれている。

 コロナの感染拡大に見舞われた1月以降、緊急事態宣言や重点措置の地域指定に関する衆参議運委での国会報告は15回あった。政府のコロナ対策には国民の私権を制限する内容が含まれている。本来、私権制限の是非は国会が法律で定めるのが筋だが、その裁量を政府に委ねるにあたり、野党側はほぼ毎回、首相が出席して国会に説明するよう求めた。しかし、首相が応じたのは、わずか2回だ。 

 <緊急事態宣言に関する政府の衆参議院運営委への説明と首相の出席>

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 そして菅首相の野党の質問に直接答えずまったくはぐらかせる答弁内容である。

 テレビでも中継のあった5月10日の衆院予算委で3回目の緊急事態宣言が発出され、東京五輪の開催の可否についての注文が集まっていたときの質疑だ。立憲民主党山井和則との質疑がこれである。

山井議員「ステージ4(感染爆発)の状況でも(五輪)は開催するのか」

菅葬儀 「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく」

  山井議員は6回にわたり同じ質問を行い確認を求めたが、菅総理は「いま申し上げた通り」と繰り返した。

 これがテレビ報道となると野党の追及不足であったり、決め手を欠いた追求と報じられる。菅総理は野党の追及を無難に乗り切ったという形で一定の評価されて報じられる。しかし国会中継を見れていれば、首相や政府の質問はあまりにも質問者を小ばかにしたような対応である。

 政治においては、特にリスク管理の要諦としては、様々な状況に対応るためのシミュレーションを行うのが普通だ。野党はまさに感染爆発した場合にどのような対応をとるのかというリスクへの対応を問うているのだ。それが国民の安全安心を守るためには絶対に必要なことだからだ。もしもリスクに対してなにも備えるべきものがないとどうなるのか。3.11原発震災の時に政府や東電、原子力ムラから繰り返された無責任な言説、「想定外」という言葉がまたぞろ唱えられることにならないのかどうか。

 感染爆発が起きた状況化での五輪開催について、政府はどういう対処を行うのかどうか。それを問うたのに対して「感染対策を講じ、国民の命と健康を守っていく」という総論だけを繰り返す。具体的な対応については何一つ説明する言葉を持っていない。

 こんな政府が、こんな総理大臣がありえるのだろうか。

  記事では菅総理の不誠実な答弁と軌を一にするような官僚たちの「国会軽視」の対応も批判的に解説している。

 「国会軽視」の姿勢は、政府全体に広がっている。官僚にも、首相や省を守ることを優先するかのような姿勢が目立った。

象徴的だったのが、首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」の外資規制違反問題だ。武田良太総務相が、国会で答弁席に向かう総務省幹部に「『記憶がない』と言え」と声をかけた。東北新社から事前に相談したと名指しされた幹部は、「記憶にございません」を繰り返した。

  記憶にないということで事実関係についての説明を拒む。事実があったかどうか、それを否定して万が一、事実認定されれば虚偽となるけれども、記憶がない答えていれば責任を回避できる。

 そもそも優秀な官僚が「自ら行った決済や決済手続きに向けた準備」を行いながら、その記憶がないなどということがありえるだろうか。前例踏襲し、責任問題になっても回避できるように、ようは自己保身のためにも、また組織の省益を守るためにも、彼らは記録をとり、自らの決済に正当性を確保する。

 彼らが「記憶にない」を連発するのは、事実を答弁することによって組織にとって、またその省益にとって不利益となるからである。そしてその場合の多くは政治家が、権力者が介在しているからである。森友学園加計学園の問題では当時の首相安倍晋三とその妻昭惠の関与を否定するためである。総務省東北新社による接待疑惑や東北新社外資規制違反問題については、総務省に対する接待要員だった菅首相の長男の関与の問題。それらに波及することを避けるために官僚たちはただひたすら「記憶にない」を連発するのだ。

 最新の世論調査でも菅政権の支持率はまだ34%ほどあるという。

朝日新聞世論調査―質問と回答〈6月19、20日〉:朝日新聞デジタル

 その34%の理由に対しては、「自民党中心の内閣である」24%、「他よりよさそう」51%とこの二つの理由が7割強を占めている。国会で118回の虚偽答弁を行った安倍晋三元首相、そして国会への出席が少なく、野党の質問にもまともに答えない菅首相、それらの政権のどこが「他よりよさそう」なのか。

 昨年来、選挙法違反。政治資金規正法違反で元法相、元経産省が罪を問われ、カジノに関して中国系企業からの収賄容疑で逮捕された国会議員、さらに鶏卵業者との収賄によって議員辞職した元農林水産大臣。さらに同じく政治資金の疑惑から一時睡眠障害という理由で入院していた甘利氏や近い時期に説明を行うといったきりで約束を果たしていない下村議員などなど。そうした収賄に関わった議員が多数いる自民党中心の内閣のなにを支持できるのか。

 自民党支持者の皆さんの誰か答えてもらえないだろうかと思ったりもする。皆さんはもしも自民党が野党である時に、政権党からかくも多数の不祥事があっても、政権党だからと大目にみてくれるのだろうか。