アデル(ADELE)礼賛

19 [輸入盤CD](XLCD313)

19 [輸入盤CD](XLCD313)

  • アーティスト:Adele,アデル
  • 発売日: 2008/01/28
  • メディア: CD
グラミー賞総なめとか、やたら話題になっているややレトロな雰囲気の太め新人さんというイメージでテレビとかから入ってくる情報を軽く受け流していたのですが、改めて聴いてみました。そんでもって、ぶっ飛びました。凄い衝撃です。
最近は自宅のオーディオでCDかけるときは、基本流しというか、聴き流すという感じなんですが、この人の曲はじっくり聴き入るべきだと思いまして、思わず1年に一度か二度使う程度のヘッドフォンをセットして音量上げて聴きこみました。この人の歌声を評してよくいわれる、ブルージーなスモーキーヴォイス、まあハスキー・ヴォイスというか、ややしわ枯れた声みたいなイメージなんだが、この人の場合はどうもそれだけではない。よく伸びる高音域から、低めのハスキーまで、変幻自在、七色の声音とでもいえばいいか。
このデビューアルバムでは、息遣いの一つ一つが伝わってきます。さらにはアコースティックにふっているんでしょう、ギターやベースの指使い、左手で弦をタップし移行するキシミ音までが、すべて伝わってきます。音楽をきちんと聴いて、それこそ背筋がゾクゾクとくる感覚を本当に何十年ぶりに味わっています。そして歌声に聴き惚れて、それこそ目頭が熱くなるような気持ちの昂ぶり、もうこういう感覚を音楽から受けるのは本当に久しぶりのことです。もうオジさん泣きそうです、ウルウルの一歩手前にいます。
たいていこうやって深夜にPCの前にいるときは酩酊状態にいるので、ややもすれば大袈裟な感じにもなるが、アデルについていえば、シラフでもほぼこういう思い入れ状態になると思う、と、もちろん今現在は酩酊状態にあるにはあるけど。
アデルのアルバム、曲に関しては、いずれきちんと書きたいと思う。今はただ断片的な感想を幾つか述べるだけにとどめる。
「ADELE19」はスタティックな雰囲気を漂わせている。それでもアデルのパワフルな歌唱、歌力みたいなものは十分に伝わってくる。1曲目の「DAYDREAMER」、ギター1本を伴奏にした静かな静かな曲想である。フォークというか、そうだな、70年代後半から80年代にかけて、ジャズ系ミュージシャンを多用して、ややフュージョンにふった頃のジョニ・ミッチェルみたいな感じだ。フォークテイストからジャズに傾倒し始めた頃のジョニのブルージーな雰囲気とよく似ている。このアコースティック・ギターのアルベジオにかぶせるプラスワンは何かあるかといえば、そうだな、ジャコみたいなうねるベースなんかいいかもしれんなと単純に思いつき。
すると2曲目の「BEAST FOR LAST」はベースをメインにフィーチャーしてきたよ。ブルースあるいはゴスペル風の面白い曲である。リズミカルにしてジャージー、1曲目が高音のキレイな声質だとすれば、この曲はまさしくスモーキー満開である。
そして3曲目の「CHASING PAVEMENTS」、おそらくこのアルバムからシングルカットされた珠玉のバラードである。マイナーな曲調での静かな出だしから一気にこみ上げる思いを爆発させるようなサビへの突入、すげえと思わざるを得ない見事な構成である。それをこの稀代のヴォーカリストが見事に表現していくのである。
ディーヴァっているんだよね、とオジさん改めて思いました。
と、酒を回ってきたので、だんだん訳わかんなくなってきたから1曲ごとの感想はこのへんで幕ひこう。本当はずっとくっちゃべっていたいくらいなんだけど、まあ明日も仕事あるし、そういや明日はある意味1年で一番大切な儀式があるんだったっけ。
といいつつ、8曲目の「RIGHT AS RAIN」について。このスタティックなアルバムにあって、唯一アップテンポのリズミカルな曲である。たぶん私的には一番好きな曲だな。しかし「RIGHT AS RAIN」ってどんな意味だい。エキサイトのマシン翻訳だと「右雨」だとさ。で、奇特な方がいてきちんと訳してくれていました。なんか直訳的でも、「雨みたいにまっとうに」みたいな意味合いでなんだとか。

Right As Rain 和訳 | Enchanted
Right As Rain/Adele

気になりますよね。この曲聞いてると…
『Right as rainって何だ?雨のように正しい…?』
これはイディオムで、"健康な"とか"完全な"とかいう意味。
この曲はきっと、好き勝手にやる彼に振り回されるのはもうウンザリよ、って感じだと思います。


Who wants to be right as rain, it's better when something is wrong.
You get excitement in your bones and everything you do is a game.
When night comes and your on your own you can say I chose to be alone.
Who wants to be right as rain, it's harder when you're on top.

'Cause when hard work don't pay off and I'm tired,
There ain't no room in my bed, as far as I'm concerned.
So wipe that dirty smile of, We
won't be making up, I've cried my heart out 
and now I've had enough of love.

Who wants to be riding high when you'll just crumble back on down.
You give up everything you are and even then you don't get far.
They make believe that everything is exactly what it seems.
But at least when you're at your worst, you'll know how to feel things.

'Cause when hard work don't pay off and I'm tired,
There ain't no room in my bed, as far as I'm concerned.
So wipe that dirty smile of, We
won't be making up, I've cried my heart out 
and now I've had enough of love.

Go ahead and steal my heart to make me cry again,
'cause it will never hurt as much it did then,
when we were both right and no one had blame,
but now I give up on this endless game.

'Cause who wants to be right as rain, it's better when something is wrong.
I get excitement in my bones, even though everything's a strain.
When night comes and I'm on my own, you should know I chose to be alone.
Who wants to be right as rain, it's harder when you're on top.

'Cause when hard work don't pay off and I'm tired,
There ain't no room in my bed, as far as I'm concerned.
So wipe that dirty smile of, We
won't be making up, I've cried my heart out 
and now I've had enough of love.
I've had enough of love.


誰が完全無欠になりたいと思うかしら おかしくなるよりマシよね
あなたは心底わくわくしてて やること全部ゲームとでも思ってる
夜がきたら 好きに振舞えばいいわ わたしが独りを選んだんだとか言っても構わない
だれが完璧になんてなりたがる? トップにいる方がきついのに

だって一生懸命になったって 報われないし疲れるだけ
ベッドの中すら居場所はないし
だからその汚い笑顔をふき取るわ 
元になんて戻らない わたしは心から泣いたの
もう愛なんてうんざり

誰が成功したいなんて思う? また崩れていくだけなのに
すべて諦めても 前に進むことなんてできない
思う通りになるって 信じさせられてるのよ
でも 少なくともどん底の時 いろんなことを感じるはずよ

だって一生懸命になったって 報われないし疲れるだけ
ベッドにさえもわたしの居場所なんてないんだもの
だからその汚い笑顔をふき取るわ 
元になんて戻らない わたしは心から泣いたの
もう愛なんてうんざり

わたしを泣かせるため さっさとわたしの心を盗んでいけばいいわ
だって もう前のようには傷つかないから
わたしたちが正しくて 誰も責めたりしなかったあの時のように
でももう こんなきりのないゲームは諦めるわ

だって 誰が完全無欠になりたいと思うかしら おかしくなるよりマシよね
あなたは興奮しきってる たとえすべてが重荷になってても
夜がきたら 好きに振舞えばいい わたしが独りを選んだんだとか言っても構わないわ
だれが完璧になんてなりたがる? トップにいる方がきついのに

だって一生懸命になったって 報われないし疲れるだけ
ベッドにさえもわたしの居場所なんてないんだもの
だからその嫌な笑顔をふき取るわ 
元になんて戻らない わたしは心から泣いたの
もう愛なんてうんざり
愛なんてもういいわ

なんかグズグズな状況で、粋がっている女の子の心根みたいな感じなのかな。でもこの曲は好きですな。

最後に、なんでアデルがこれほどまでに持て囃されるのか。おそらく業界人がみんな諸手をあげて礼賛しているんじゃないかと思うし、とにかく玄人受けするようなタレント性をもっている。その一つはとにもかくにも歌力だ。そしてアルバムのコンセプトが、彼女の歌のメリハリをクローズアップさせるようなアコースティックなあるいはライブ感あふれる演奏で下支えしている。打ち込み、サンプリング全盛の時代にあって、アデルのような人間的な技量を全面に出したサウンズはある意味新しいんだろうとと思う。たぶん彼女のグループたっぷりな歌声は、おそらくこの先でもヒップホップテイストなものを取り入れることもなさそうだし。
ようは音楽、ヴォーカル、それ自体の技量、凄み、魅力、それらを全面に出したこと、それが今の世の中にあってはたぶんたいへんに新鮮味をもって受け入れられたんじゃないかということだな。
彼女のヴォーカルの完成された魅力、技術、スモーキーヴォイス、それらはたぶん目新しいものじゃないとは思う。だって普通に思うわけ、ロバータ・フラックアレサ・フランクリンをアルバムを聴き込めば、アデルの歌声で受け取るような感動はまあ普通にあるんじゃないのと。さらにいえば、我々の世代にすれば、稀代のディーヴァの先人がいくらでもいたわけである。まあ冷静に考えれば、エラ・フィッツジェラルドの最盛期の凄みからすれば、アデルちゃんはまだまだ、本当にこれからの人みたいな感じなのかもしれない。でも、エラたちが切り開いた地平みたいなものがあるとすれば、その正統な後継者の一人という位置を、ミス・アデルは20かそこそこできっちり獲得している、それだけは間違いない事実だと思う。
21世紀の天才的ディーヴァ、そう礼賛しても十分だと思う。実際、「アデル21」ではよりポップというか、大衆性、売れ線にふって、見事なアルバム作りにも成功している。そしてなによりも世界はそれを正当に受け入れ、大ヒットを記録しているのだ。
でもあえて想像してみたい。エラ・フィッツジェラルドは10代の時にどんなに素晴らしいパフォーマンスをしていたんだろうか。そしてもし10代のエラが現代のアメリカ、ヴァーニジア州に光臨したら、やっぱりスーパー・スターの道を歩んでいたかもしれないなどと。
と、バックグランドで流しているiTunesから流れる曲は大ヒット曲「Rolling In The Deep」に代わった。やっぱり凄い声、凄い曲だよ。こりゃ売れるわね。そして酔った頭で勘違いの妄想。アデルって、エラの生まれ変わり?エラがのり移ってないかい。
とりあえず、もうアデルは若い人からすれば、なにを今さら的かもしれない。オジさん遅れてないみたいなことかもしれない。でも、いいや。オジさん、とりあえずお友達のオジさんやオバさんに、「アデル、アデル」って宣伝して回るわ。iPodに入った曲を聴かせまくるわ。とりあえずアデルの布教に努めてみます。