こころの遺伝子〜西原理恵子

http://www.nhk.or.jp/idenshi/special/index.html
 ジムでエアロバイクやっている時に何気につけていたNHKの番組で本日10時から西原理恵子出演とかって予告が流れた。彼女が家族のこと亡夫の鴨ちゃんのことを語るのだとか。一応ファンの端くれだから、これは見なくてはいかんかなと思い、今日はあんまり体いじめるつもりもなかったから早目にあがることにした。
とはいえ風呂入ったのが9時15分頃だったか。ちゃっちゃと風呂入ってと思っていたのだが、ついつい心地よさで壷風呂で寝こけてしまい風呂上がったのは10時5分前くらい。携帯チェックすると、娘からやれオレンジ・ジュース買ってこいだのなんのと勝手なメールが入っている。とりあえず家に電話して番組録画してくれるように頼む。
帰宅後はビール飲んでのんびり遅い夕食。それからもろもろ後片付けして、ハイボール片手にこたつに入ってようやくこの番組を観る。
西田敏行と局アナの黒崎めぐみが司会を務めゲストの人生をもろもろ語ってもらう。そこに再現フィルムや様々な映像、写真がちりばめられてゲストの人生を描いていく、まあそういう番組だ。
西原のことについていえば、コアなファンというか、とりあえず出た漫画をだいたい読んでいれば、だいたい判る。基本的に私生活を笑かしながら露悪的に描いてしまう人だから。私小説作家というか私漫画作家とでもいうのだろうか。
だから西原のファンは、西原がどうやって鴨ちゃんと知り合い、所帯を持ったか。子どもが二人できて、西原が子育てに悪戦苦闘しながらも、母としてのアイデンティティを確立していったこと。鴨ちゃんがアル中になって二人は離婚して、また一緒に暮らし始めて、でも鴨ちゃんは癌にかかっていて亡くなって、それからそれから。なんかそういうことをみんな知っているわけ。こんなに一作家のプライバシーを良く知っているファンが沢山いるなんて、あんまり例のないことかもしれないな。
とはいえそれらは概ね西原が漫画に描くうえでより誇張されたことではあるし、ある意味では実体験、実人生をモデルにしてはいるけど、あくまでフィクションの範疇なのかもしれない。
今回、リアル西原が自身から語る実生活はやはり漫画で誇張されたり、脚色されたものとは様々に異なっていたし、また初めて知ることなんかもいろいろあったように思う。実際、西原の最初の父親がアル中で亡くなったことや、母親が再婚した相手がギャンブル狂で、最終的には首吊り自殺していることなんていうのも、断片的な話としては何かで読んだようにも思うけど、ある意味初めてのことだったかもしれない。
そして鴨ちゃんとの微笑ましい出会い。さらに彼のアルコール中毒による家庭の崩壊などは、漫画での笑かしとはまったく異なる戦慄なものだったようだ。西原はたんたんと語るが、夫の暴力に逃げ惑いながら、最後の最後の離婚して夫を追い出すだけのエネルギー、バイタリティは凄まじいものだと思う。修羅場の中でも彼女の精神力の強さはやはり半端じゃないものだと思う。
最後はやはり鴨ちゃんの死にまつわるエピソードだった。やらせじゃないのだろうが、鴨ちゃんのことを語り続ける西原がじょじょにこみ上げるものを抑えるようになる。最後に両の目からふた筋涙が流れる。その一筋が口のわきに流れてきた時にペロっと涙を舌でぬぐうしぐさがなかなかに可愛らしかった。
番組を通して西原の女性としての凄みやらなんやらがけっこう伝わってきた。正直、こういう女には勝てないだろうみたいな率直な感想もある。しかしそれ以上にまたこの女は異様に可愛いく魅力的でもあった。才あり性根の据わった女だけがもつ特別な愛らしさとでもいうのだろうか。こういう女には勝てないなと、そういうものが伝わってくる番組だったかな。
しかしアニメ化されるわ、「毎日母さん」は出るたびにベストセラーだし、そのうえNHKでこういう番組まで出来ちゃう。ひょっとして西原はもはや現代の長谷川町子の椅子を確保しつつあるんじゃないかって、なんかそんな気がしてきた。国民的漫画家・・・・、なんかそんな称号が冗談じゃなくなりつつあるんじゃないか。
ところで西原の「パーマネント野ばら」が映画化されるという話だ。

菅野美穂が主演だという。あの土田舎の美容室の世界がどんな風に映像化されるのか楽しみである。バイタリティのある美容院のママ役は夏木マリだという。西原モノは「女の子物語」「いけちゃん」などなど映画化目白押しという感じである。本当、冗談でなく国民的漫画家の地歩がどんどん固まりつつないか。
西原、もう税務署と喧嘩とか出来なくなるんじゃないだろうかなどと、別の意味でも心配してしまう。しかしこの「パーマネント野ばら」なんだが、実はこの漫画は絶対「マグノリアの花たち」にインスパイアされているんじゃないかと私は思っている。美容院を舞台にしてそこで語られる女たちの人生の悲哀のもろもろ。西原は洋物のこの世界を高知の原風景の中で、アーシー=土着的に消化してみせたんじゃないかとそうふんでいる。まあ単なる思いつきなんだけど。