毎日かあさん

毎日かあさん(通常版) [DVD]

毎日かあさん(通常版) [DVD]

  • 発売日: 2011/09/07
  • メディア: DVD
以前から気になっていた映画。TSUTAYAのレンタルで観た。
西原のコミックはほぼかかさず読んでいる。もちろん「毎日かあさん」も全巻揃えているし、新刊の予告が出ればすぐにアマゾンにオーダーする。西原のフォロワーの一人といっていいだろう。
以前にも書いたことがあるが、西原の生き方には凄みがある。税務署と本気で喧嘩してそれを漫画のネタにする(「脱税できるかな」)。麻雀で数千万負け続けた賭博中毒を自虐ネタにした麻雀放浪記などなど。彼女にかかわった多くのインテリ、同業者が、この女にだけはかなわないと脱帽する。鉄火場女さながらでありながら、一方で可愛い女でもある。それは数少ないテレビ出演とかでも垣間見れる。
存在感抜群のアクの強い女であることは間違いない。一方それに輪をかけるくらいに異彩なキャラクターだったのが、元夫である故鴨志田穣だったんだろう。西原夫婦とつきあいのあるだれか、たぶん板谷あたりだったかもしれんが、この夫婦をとにかく濃いキャラ同士の夫婦みたいに表現していた。たぶんにそういう異色なつながりのあるカップルだったのだろう。
なぜ鴨志田はアル中になったのか。普通に考えれば、売れっ子漫画家の居候同然の形で夫に納まった報道カメラマン。稼ぎはない、仕事といえばカミさんのコネクションから回ってくるおこぼれ仕事ばかり。妻への僻みその他もろもろと焦燥感。まあ普通に考えればそのへんが理由なんだろう。
もう一つ、これもよく西原によって語られていたようにも記憶するが、戦場カメラマンとして極限状況を体験した者が、平和な日本で暮らす上でのギャップ、トラウマその他もろもろ。たぶんこのへんが様々に錯綜して彼を酒に走らせたのかもしれない。
結果として西原は、子どもたちと自身の生活を守るために鴨志田といったんは別れる。まあ普通に考えて稼ぎのない、アル中のしょもない男など、早くに放逐してしまえばいいのにという感もある。でも、あまり西原のコミックには出てはこないけれど、西原は鴨志田と知り合い、付き合い、一緒に暮らすことによって、救われた部分もたくさんあるのだろう。西原語り下しの『この世でいちばん大事なカネ」の話』(理論社刊)にこんなくだりがある。

わたしがギャンブルをやめることができたのは、「鴨ちゃん」に出会ったことが大きかった。
わたしの元夫で、戦場カメラマンだった鴨志田穣、通称・鴨ちゃんは出会ったころのわたしにこう言ったの。「どんなギャンブルより、戦場のほうがよっぽど大きいギャンブルだよ。だって、人の生き死にがかかっているんだから」って。
そのひとことで目が覚めた。それまでは「もっと刺激を」「もっと高揚感を」ってよく効く薬を求めるみたいにバクチにハマっていた気持ちが、ウソみたいに、すーっとひいてしまった。
戦場だけじゃない、鴨ちゃんは世界中を回ってきた人だった。
「ぼくが見てきた世界を、きみにも見せてあげる」
そうしてわたしは鴨ちゃんと、自分が育ってきた場所よりも、もっと貧しい、もっとたいへんな暮らしがあるアジアの国々を旅して、それでもそこで生きている子どもたちのことを漫画に描くようになった。P148-149

なんの話だっけ、そうだ映画の「毎日かあさん」のことだ。西原フォロワーはみな原作漫画「毎日かあさん」やその他の漫画を通じて、西原の家族のことはけっこういろいろと知っている。うちの娘と同い年であるがんじ君のことは、漫画を通じてそれこそ保育園の頃から知っている。その成長を、西原の子育ての悪戦苦闘もけっこう自身の体験を含めて共感できる部分もたくさんある。ある意味他人ごととは思えない部分もあるにはあるのだ。
アル中を克服したけれど末期ガンに侵されていた元夫を引き取り、最後の数ヶ月を家族で過ごした話も漫画を通じてみんな知っていた。泣かされる話なのである。
そういう総てわかっているお話の映画化である。どうしたって贔屓目に観ることになる。原作の良さを全部帳消しにするような映画になっていれば別だけど、今回の映画は基本総て原作踏襲である。主役の小泉今日子もかなり西原に似せたキャラ作りしている。たぶん西原をそこそこ痩せさせてキレイにすれば、キョンキョンになるのかなと思わせるくらいには似ている。
鴨志田役はかってキョンキョンの夫だった永瀬正敏である。これがまたけっこう鴨志田に似せた雰囲気を出している。キャスティングの勝利かなと思わせる。二人の子ども役もいい感じである。まあだいたい子役をつかえば、当たり外れがないのだ。
原作踏襲、役者も漫画のキャラに似せたキャスティング。とりあえず西原好きなら、これでぜんぶ許してあげてしまう。これはそういうタイプの映画である。というわけで諸手を挙げて絶賛する。だって西原の漫画が、西原自身が大好きなんだからしょうがないということ。だいたいにおいて齢50を超えたジイさんからすると、10こくらい年下で個性ばっちり、存在感抜群の仕事ができる女なんていうのには正直たいへん弱い。ある意味西原みたいな女がストライクゾーンなのかもしれん。
西原に似せたキャラ作りをしているということもあるのだろうが、主演の小泉今日子がまたたいへんいいね。40代の女の色気というか、存在感というか、もう抜群にいい。「東京ソナタ」だったかな、中年の奥さん役やって、ちょっと疲れた雰囲気とかがたまらんなと思ったものだが、今回は逆に元気印的と西原的凄みとかをうまく演じていたと思う。
結局のところ、とにもかくにも西原ワールドである。そしてキョンキョンが演じている。それだけでこの映画は及第点というか、私的にはかなりの高得点なのである。