トランプ政権の本質

 今日、久々通院のため都内に出た。お茶の水で街頭販売されていた『THE BIGG ISSUE』を久々に購入した。

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 どの記事もけっこう濃いのだが、その中でアメリカで活動するジャーナリスト大矢英代(おおやはなよ)氏による現地・米国大統領選挙「バイデン勝利したが、新たな混沌と分断の始まり」は、トランプ政権の本質を的確にとらえられている。大矢氏はムスリム系移民やヒスパニック系移民を目の敵してきたトランプの手法をこう論じている。

~社会の中で助けを必要とする人たちを敵と見なし、大統領権限を使って吊るし上げてきたトランプ大統領の姿は、「暴力の肯定化」と「集団いじめ」を体現しているように私には見えた。

  嫌いなやつは虐めていい、自分を批判する人は辞めさせてもいい。信じたくない情報は嘘だと言えばいい。トランプ政権の政策の根底にあるのは、好き嫌いと損得勘定に過ぎない。あまりにわかりやすい単純明快な世界観は、裏を返せば、単純明快だからこそ大衆受けしやすい危険性をはらんでいる。

  選挙期間中にAP通信が行った調査では、トランプ支持者が5割を超えたのは「男性」「既婚者」(性別不問)「45歳以上」で、彼らの関心事は「経済と仕事」「中絶問題」「移民問題」だったという。そこから大矢氏はトランプの政策をこう分析する。

 結局のところ、トランプ政権の政策とは支持者たちの関心分野ばかりだった。ビジネスマンのトランプにとって、支持者とは自分を好んで選んでくれる「顧客」であり、彼らを満足させる「サービス」を提供することで支持を得ようとしたのだろう 。

  そうした分析から浮かんでくるのは、トランプにとってはアメリカ全体、あるいは世界の政治、経済をリードする超大国として世界全体を導く政治ではないということだ。バイデンが勝利宣言で呼びかけた「融和」や、政治は異なる階層の利害を調節し、最大公約数的な利益を追求することではなかったということだ。

 トランプは自らを支持する層だけの利益を前提にした政治を行う。支持者たちはトランプさえいてくれれば利益が享受できるという信念あるいは幻想に抱いており、その中で彼らのエゴイズムは増大し続けている。おそらく彼らはトランプ同様に敗北を認めず、このまま分断されたアメリカ社会を生き続けていくのかもしれない。

 民主主義に通底する最大公約的な公共の利益を希求するのではなく、あくまで自らの関心事としてのエゴイズムを追求する。大矢氏はそれを新しい分断と混沌の始まりしている。