バイデンとカマラ・ハリス

 接戦のアメリカ大統領選はジョー・バイデンに当確が出たようだ。接戦州でバイデンの優勢が決まりメディアが当確を報じた。トランプは再集計や訴訟を主張しており、確定するのはまだ先になりそうだが、ほぼこの情勢が覆ることはなさそうである。トランプ側がよく途上国を揶揄していうバナナ共和国でない限りは、選挙制度に疑義を呈しても覆らない。それが民主主義国の建前だ。

 自分は別にバイデンを積極的に支持している訳でもない。まあ民主党共和党という点でいえば、民主党の方が若干贔屓にしているかもしれないが、しょせんアメリカ、かっては米帝と罵っていたクチである。基本、五十歩百歩だとは思っている。しかしそれでも素直に民主党の大統領の選出を喜びたい気分である。

 なぜかといえば、今の共和党の現職が、トランプが酷すぎるからだ。分断を煽る、自国ファーストを強調し、敵か味方かを明確にする。自分に対して否定的なメディアはすべてフェイクと切って捨てる。例えば大統領線での候補者討論会でもバイデンが話しているところに、かぶせて自説をひっきりなしに話続ける。史上最低の討論会と称され、トランプ、バイデン共に批判されたが、ルールを無視したのはトランプである。

 モラルに欠け自国の利益のみで動く唯一の超大国のトップ。そういう人間が4年間大統領の座にあり、へたをするともう4年君臨する可能性が高かった。バイデンに当確が出たのはほとんど安堵に近い。

 もともとトランプにはなんの見識もない。彼になって景気が回復した、とんでもない。たまたま世界経済は回復期にあっただけだ。彼の4年間、戦争らしき戦争はなく、アメリカの軍事介入もなかった。これも世界の情勢があらかたその前のオバマ時代に収束局面にあったというだけのことだ。紛争地の状況はアラブであれ、中南米であれ、東欧であれ、危機的な状況が回避され、局地的な小紛争に限定されている。トランプの外交により解決されたものはほとんどないといっていい。

 欧州の首脳はトランプと一定の距離を置いていた。外交面での同調、強調はあっても親密な関係を構築することはなかった。なぜかトランプがモラルに欠ける人物というのは、ある意味共通認識としてあったからだ。先進国で唯一、トランプの懐に入り親密度をアッピールすることで、自らの権威権力を増長させた人物が一人、東アジアの辺境国の首脳にいた。そう、安倍晋三である。彼もまたモラルに欠ける人物であり、トランプ同様反知性主義の塊である。

 4年前の大統領選でトランプが当選したときに、就任前であるにもかかわらずいち早く馳せ参じてトランプと会談したのが安倍晋三だ。まだオバマが大統領であるにも関わらず、同盟国の首脳が時期大統領に会いに行った。これは外交的には相当に非礼なことだが、これを安倍周辺と日本のマスコミは大々的に外交上の勝利として喧伝した。

 安倍は健康面を理由に8月に辞任した。そしてトランプが敗北した。モラルに欠け反知性的な日米の首脳が退陣した。ひょっとしたら世界は少しだけ良い方向に向かうかもしれない。そんな思いを抱いている。

 バイデンが当確となったことにより、アメリカでは初の女性かつ非白人系の副大統領が誕生することが確定した。4年前、ヒラリー・クリントンが女性大統領の座に後一歩まで迫り、ガラスの天井によって阻まれた。バイデンが非白人系の女性、カマラ・ハリスを副大統領候補に指名したのは大きい。就任時に78歳と高齢であるバイデンは、場合によっては任期途中での退陣もあるえるかもしれない。そうなれば必然的にカマラ・ハリスが大統領となるのである。

 カマラ・ハリスは検事出身で前カリフォルニア司法長官で現在は上院議員1期目。まだ政治的キャリアという点では乏しく、能力は未知数かもしれない。プエルトリコ系の父、インドからの移民の母をもつ。アフリカ系アメリカ人にしてアジア系という出自はアメリカの多様性の象徴ともいえる。カリフォルニアとはいえ地方検事から46歳で州司法長官に駆け上ったのは、能力とともに幸運があったのだろう。

 12年前にバラク・オバマアフリカ系アメリカ人として初めて大統領に選ばれた。そして女性の大統領の実現がもうあと少しのところにあるのだ。女性差別、男女の不公平、それは西欧社会にあっても2000年近く続いてきている。先進国ではイギリス、ドイツで女性の首脳が生まれているが、まだまだ男性中心の社会が続いている。アメリカが4年後、あるいはもう少しかかるかもしれないが、女性の首脳を生むことは、世界にとってはある種の福音かもしれない。

 しかし、今回は関西旅行とアメリカ大統領選が重なっていて、どこにいてもネットのニュースを見てばかりいた。とにかく気になって仕方がなかった。それもこれもトランプの悪夢が後4年続くのかどうか、その結果が知りたかったからだ。

 ニュースやSNSを見ていると大統領選を巡る楽しい、興味深い動画をたくさん見た。

 まずカマラ・ハリスがバイデンの当確が決まり、バイデンと初めて電話で話した時の映像。


'We did it, Joe!': Kamala Harris calls president-elect Biden to celebrate election victory

 そしてカマラ・ハリスの当確を受けての感動的なスピーチ。


Watch Kamala Harris' full victory speech