兄の遺したCDの1枚。フレディ・ハバードが新生ブルーノートに復帰した第一作で1987年の作品。
自分は80年代、90年代のジャズというのを積極的に聴いていないので、ほとんどこの時代のCDを持っていない。ちょうどこの頃はというと、仕事に忙しくジャズを積極的に聴いていなかったか、あるいは50年代ジャズにのめり込んでいたか、多分そのどちらかだと思う。
音楽全般についていえるのだろうけど、ジャズについても聴くジャンル、アーティスト、それぞれのアルバムなどにあたっていくと、それだけで膨大な時間が必要になる。いっぱしの見当をつけるために名盤だけでなく、それ以外のものも聴いていく、そして芋づるのように派生していく興味とアーティスト群。どんどんと時代を遡行していく必要が出てくる。
そんな風にして時代を遡っていくととても同時代のものにまで視野を広げることができない。そういう風にして20世紀の後半を過ごしていたのかもしれない。
本作についていうと新しさ、今風という感じである。しかし33年も前の作品を聴いて今風もないだろうとは思わないわけでもない。
ついているライナーノートは多分レコードに貼付したものをそのまま縮尺しているのだろう、サイドA、サイドBという風にして曲を説明している。そしてサイドAはフュージョンサイド、サイドBは新主流派的なストレート・ジャズサイドという形になっていると説明がある。
SIDE-A
1.Battlescar Galorica
2.A Saint's Homecoming Songフレディ・ハバード(tp)
スタンリー・タレンタイン(ts)
ジョージ・ベンソン(g)
ラリー・ウィリス(key)
ウェイン・ブレイスウェイト(el-b)
アイドリース・ムハマッド(ds perc)
SIDE-B
1.MELTING POT
2.LIFE FLIGHT
フレディ・ハバード(tp)
ラルフ・ムーア(ts)
ラリー・ウィルス(p)
ルーファス・リード(b)
カール・アレン(ds)
サイドAは60年代以前だったらジャズとは呼べないような感じもしないでもない。特に2曲目の「A Saint's Homecoming Song」はR&B、ソウル風である。8ビートの単調なリズムの中で、ジャズテイスト溢れるフレディのソロが疾走する。ずっと聴いていると癖になっていくような感じだ。こういうサウンドには軽いジョージ・ベンソンのギターがえらくマッチする。
B面はというとまさにオーソドックスな新主流派のジャズだ。ハバードはなんとなく当時売れっ子だったマルサリスを意識しているような感じがしないでもない。まあ技術面で卓越したものがあるハバードからすれば、俺らはこのくらい朝飯前だぜみたいな感じがあったのかもしれない。1938年生まれのフレディ・ハバードは当時49歳。円熟味を増す頃だが、ちっとも枯れた雰囲気はなくバリバリという感じだ。
80年代、ハバードはこんな演奏をしていたのかと、今更ながらに思う。そしてこんなアルバムを兄は聴いていたのかという思いを抱いたりもする。なかなかに聴かせるアルバムだ。ジャズは色褪せないし、いつ聴いても同時代的だと感じる。