ジョニ・ミッチェル~Wild Things Run Fast

 ジョニ・ミッチェルというときちんと聴いてきたのは実は70年代までのように思ったりする。70年代後半からジャズ系の若いミュージシャンを起用してフュージョン系の音作りを行っていた。その中で自分的には最高傑作だと思っているのは『Hejira』だ。

 それからドンファンとじゃじゃ馬娘~Don Juan's Reckless Daughter』、『Mingus』とよりジャズ志向を強めた。その集大成がライブ盤『Shadows and Light』だったと思う。そこに参加したジャズ、フュージョン系ミュージシャンはジャコ・パストリアスマイケル・ブレッカー、ドン・アライアス、パット・メセニーライル・メイズ等。

  これ以後、つまり80年代以降のジョニ・ミッチェルはロック志向を強めていくようだが、その頃から自分は次第にジョニ・ミッチェルから遠ざかったのかもしれない。そして多分、再び聴き始めたのは2000年前後からだったように記憶しているのだが、相変わらず自分が聴くのは70年代の彼女だった。

 今回、たまたまネットでつらつら彼女のアルバムリストを眺めていて、彼女の80年代以降のアルバムをほとんど聴いていないことに改めて思い立った。多分、きちんと聴いているのは1991年の『Night Ride Home』くらいだろうか。そこでまずアマゾンでポチったのがこのアルバムである。

Wild Things Run Fast

Wild Things Run Fast

  • アーティスト:Mitchell, Joni
  • 発売日: 1999/03/20
  • メディア: CD
 

  多分、これはもちろん初めて聴くのではないと思う。聴き覚えのある曲がいくつもある。製作は1982年、流れとしては70年代のフュージョン路線の延長上にあるが、ややロック的なものにシフトしている。ポップ調といってもいいかもしれない。そしてそれよりもなによりも、いつものジョニ節、ジョニ・ミッチェルのカラーといえる。彼女はこの頃からフォークでも、ジャズでもなく、ジョニ・ミッチェルというジャンルを模索し始めているようにも思う。

 パーソネルにもすでにジャコ・パストリアスの名前はなく、多分この若き天才ベーシストとの関係は終焉を迎えていたのかもしれない。このアルバムに参加したベーシスト、ラリー・クラインとジョニは後に結婚することになる。恋多き才女はベーシストと恋に落ちるか。

 その他のメンバーでは、ラリー・カールトンマイケル・ランドゥというフュージョン系ギタリストの他に若きスティーブ・ルカサーも参加している。またウェイン・ショーターも美しいソプラノ・サックスを聴かせてくれる。それ以外にもコーラス、あるいはデュエットとしてあのライオネル・リッチーや友人として、あるいはかっての恋人でもあったジェームス・テーラーもバック・コーラスとして参加している。

 当時、ライオネル・リッチーはまだコモドアーズを脱退してソロ活動を始めたばかりだったと思う。大ヒットした『オール・ナイト・ロング』は翌年の1983年のことだ。そうこの時代はある意味で自分にとってはベスト・ヒットUSAの時代だった。マイケル・ジャクソン全盛期、ポール・マッカートニーウィングスと共に再ブレイクを果たした時代。シンセサイザーサウンドや打ち込み系のリズムが始まる時代が到来しつつあった。

 そんな時代にジャズ、フュージョン風味とロック的志向、それでいてジョニ・ミッチェルしか出せないサウンド。そういうアルバムがこの「Wild Things Run Fast』だった。

 収録曲は以下のとおり。

 1. Chinese Cafe/Unchained Melody

 2. Wild Things Run Fast
 3. Ladies' Man
 4. Moon at the Window
 
 5. Solid Love
 
 6. Be Cool
 
 7. (You're So Square) Baby I Don't Care
 
 8. You Dream Flat Tires
 
 9. Man to Man
 
 10. Underneath the Streetlight
 
 11. Love