栃木県立美術館「まなざしの洋画史 近代ヨーロッパから現代日本まで」

企画展[まなざしの洋画史]|栃木県立美術館
 栃木県立美術館まで足を運んだ。この企画展が気になっていた。開催は7月2日までなので、このチャンスを逃すと多分行くことは難しいかとも思っていた。
 この美術館は昨年一度行っている。雰囲気のいいところだ。栃木にはここと宇都宮美術館と二つ公立美術館があり、微妙に同じような雰囲気を持ちつつも住み分けができている。関東圏に住んでいる者としてはなんとなく羨ましい部分もある。埼玉は文化不毛の地だなという残念な気持ち抱くところもある。埼玉は県立近代美術館のみである。人口規模からしたらもっとミュージアムがあっても良さそうにも思う。東京に近すぎるのが問題なのか、政治家が悪いのかもしれない。
 今回の企画展は栃木県立美術館収蔵作品と茨城県立近代美術館収蔵作品が一同に会したしたということだが、展示作品リストを見ると圧倒的に茨城県立近代美術館収蔵作品が質、量とも凌駕している。茨城凄いなと思わざるを得ない。ここは確か水戸市にある美術館で一度行って見たいとは思っていたところだ。試しにサイトをググって見ると、開館して30年で、今はリニューアルのため閉館中で来年1月オープンとのこと。残念な部分もあるが、逆にリニューアルしたら早い時期に行ってみようとも思った。
茨城県近代美術館 | The Museum of Modern Art, Ibaraki
 今回の企画展は目玉は栃木のターナーやクールべ、モネ、茨城のルノワールピサロといった有名な西洋絵画であることは間違いないが、それ以上に茨城収蔵の日本洋画の作品、近現代の作品の質、量である。それこそ竹橋の近代美術館の展示作品を凌ぐのではと思えるくらいだ。最も近代美術館は毎回、展示替えをしており、
その収蔵作品の量は膨大であるのはいうまでもない。しかし一回の展示作品に関して言えば、今回の茨城の作品量は十分対等と言えるのではないかと思えた。
 今回、一番気になった作品は安井曾太郎の「寝たる女」

 安井曾太郎セザンヌの影響を受けたというが、これなんかはちょっとクールべぽいとかピエール・ボナールみたいな感じだろうか。
 その他、気に入ったの作品を幾つか。
麻生三郎「男」

麻生三郎「少女像」

古賀春江「物乞い」

 古賀春江は様々な技法に取り組んでいたのがわかる。これはキュビズムピカソというよりはブラックという趣だ。
 そしてやっぱり目玉のルノワールマドモワゼル・フランソワ」

 モネ、ルノワールピサロシスレーと並んで陳列されているのだが、よく画面を見てみると、ルノワールだけがキャンバスの地がうっすらとわかる。それに対して他の三人の絵は筆触分割云々以前にキャンバス地が全く映っていない。きちんと下地処理がされているように見える。試しに隣のコローやターナーを見ても同様だ。それを思うとルノワールは以外と薄塗りであるのかもしれない。意図的に余白や塗り残しを作ったというセザンヌの画面がどうなのか、どこかで確認してみようかとも思った。さらに言えばきになるのはマネかもしれない。
 往復で150キロ超のドライブではあるが、遠出するだけの価値は十分あったと思う。今日は61回目の誕生日、誰も祝ってくれる訳でもないので、これはある意味、時自分へのご褒美みたいなものかもしれない。