池袋 TAKEFIVE

  ジャズが聴けて、ダラっと飲める場所はないかと日々探求中の私である。埼玉の辺境に住んでいるので地元でそういうのは難しい。仕事がら集1くらいの割合で都内に出る。神保町周辺が仕事場なのだが、帰宅途中となるとやはり池袋となる。池袋で1〜2軒そういう店があるといいものよの〜と思っていた。
で、前回だらだら飲んだくれていた時に看板見つけて次回来ようと思っていたのがここである。
TAKE FIVE(テイクファイブ) 池袋 -BAR-NAVI
 店の雰囲気は悪くない。ただし狭い。カウンターと4人掛ボックスが二つ。音響は普通、かかるのはCDのみ。レコードプレイヤーはないという。この時点でストイックなジャズ・ファンからするとアウトなのかもしれないが、私には十分である。その日は友人と一緒で、馬鹿話中心だったのでボックス席へ。というか、初めての店なのでとりあえず付き合わせたというところか。
  かかるのは当然ジャズなんだが、あまり系統だっていない。モダンジャズありボサノヴァあり。きちんと一枚のCDをというのではなく、なんかオムニバスみたいなCDをかけていた感じ。このへんでアウトな方もいるのだろうが、ようはBGMジャズで酒と会話を楽しむみたいなことなので気にすることもない。カウンターでも常連さんたちが楽しく会話している風だ。
 そういうことなので、一人で入るとどうなのかなという気もしないでもない。まあ音に浸って、酒に浸って、ついでにちょっと本でも読んでいれば、暇つぶしには十分かもしれない。まあいずれ何度かは一人で来ることもあるだろう。
  もともと自分の理想的なジャズ店はというと、かっての横浜桜木町のダウンビートということになってしまう。あそこは良かった。安い酒、極上のジャズ、寛げるボックス、気さくな老マスター。16から38まで通った店だったが、あんなジャズ喫茶はなかったな。いつ行っても特にリクエストなどしなくても、好きなアルバムをかけてくれた。ホーキンス、ハリー・ジェイムス、グラッペリなどなど。そして飲んだくれて寝呆けたら、そのまま閉店過ぎまでゆっくり寝かせておいてくれた。お陰で何度終電を乗り過ごしたことか。
  いつものように店に行くとドアにマスターが亡くなったとの張り紙があり愕然としたこと、すぐにいろいろ連絡をとって通夜にかけつけたことなどを昨日のことのように覚えている。今も同じ場所で、別の経営者の方が営業中らしいのだが、たぶんそれは私の知っているダウンビートではないのだろうなとも思う。
  あの店が私にとって生涯のベストな店といってしまえばたぶんそのとおりなのだろう。それがもう喪われてしまったことは淋しい限りではあるが、とりあえず生涯の中でそういう店に出会えたことがあるというのは、ちょっとした僥倖のようにも思えたりもする。今さら第二のダウンビートを見つけようなんて気はさらさらない。普通にジャズが聴けて、ダラっと酒が飲める場所があればいいというだけだ。テイクファイブはそういう店の一つになりそうな予感はある。