横浜へ戸籍謄本をとりに行く

 年金の手続きに必要なため、横浜に戸籍謄本を取りに行くため半休をとった。東武東上線はずいぶん前から副都心線を通じて東急と相互乗り入れをしているので、1時間に1〜2本乗り換えなしで横浜まで行くことができる。今回は和光まで池袋行の急行に乗り、そこから横浜中華街行に乗り換えた。この電車がそのまま東急の急行となる。降りる駅は昔懐かしい東白楽だったので、菊名で各駅に乗り換える。乗り換えを含めると1時間半と少し、ほとんど小旅行の気分だ。
 東白楽で降りてからは10数分歩いて神奈川区役所へ行く。ここが自分の本籍地がある役所だ。その途中で本籍地のある場所にもちょっと寄ってみる。といっても自分の縁戚が住んでいるような家がある訳でもない。ここは父親が生まれた場所で、確か祖父が材木問屋をやっていたところらしい。以前から何度か探してみたのだが見つからず、まあそういうものかと諦めてもいたのだが、少し前に偶然本籍地の住所に行き当たった。そこは旗竿の土地で奥まったところに狭小住宅が建っていたうえ、なんとその住宅は民家でありながらお寺でもあるという風変わりなものだった。
 元々はかなり広い地所だったのが細かく分筆されたのではないかと勝手に推測しているのだが、本当のところはどうなんだろうか。
 役所ではほんの数分で戸籍謄本を取ることができる。それからまた10分程度歩いて東神奈川の駅に出る。東神奈川駅京浜東北線横浜線がそれぞれ止まる横浜から一駅目のところだ。横浜から都内に通勤している時はいつも通り過ぎるだけなんだが、この駅で乗り降りをしたことが実は初めてなのではないかと思っている。それほど記憶にも残らない駅だ。
 首都圏近郊の駅は多分普通の人よりは乗り降りすることは多かったのではないかと思っている。それは30代に出版営業の仕事に就いていたから。それこそいろんな街の書店を訪問営業した。東神奈川にあまり記憶らしい記憶がないのは、多分ここにそこそこの書店がなかったせいではないかと思っている。小さな路面店はわからないけど、中規模の本屋というと確かアシーネかなんかがあったかもしれず、一度や二度ひょっとしたら訪れたかもしれないが忘却の彼方というところだ。
 その後は桜木町まで行き野毛に出た。いつもの三陽で餃子と生、そしてラーメンを食す。店は移転して少しだけ広くなったし、店員も多い。店主は相変わらずだがさすがに老いたなと思う。さらにいえば醤油ラーメンはかっての白濁スープのこってり系からオーソドックスな支那そば風に変わっていた。記憶の味とはだいぶ違う。ここに来るのももう終わりかなと少しだけ思った。
 それからこれも昔からのコースであるダウンビートにちょっと寄ってみる。なんでもオーナーが代わったとのことだが、店内の雰囲気は30年、40年前とまったく同じだった。カウンターには数人の多分常連さんがいるだけで、ボックス席は自分一人という、いつものガランとした状態。小1時間寛がせてもらった。ちょっと悪ノリしてリクエストをしてみる。多分にそういう気分だったのだろう、マイルスの「ジャック・ジョンソン」をかけてもらう。
 この電化マイルスの傑作ロックアルバムを最初に聴いたのも多分ダウンビートだったと思う。いきなりのコブハムの激しいドラムにジャジャーンというマクラフリンのギター。高校生くらいだった自分はなんだこれはと姿勢を直す。その後すぐに数人の客が憮然として席を立った。電化マイルスがジャズであってジャズでない時代の神話みたいな風景だった。