（閲覧：2024年1月10日）
亡くなったんだね。
実は演歌はほとんど聴かない。なのでこの人の歌もきちんと聴いたことがない。まあ同時代的に活躍した人なので、「雨の慕情」や「舟歌」はもちろん知っている。歌の上手い人だとはずっと思っていた。あとはナイトクラブで鍛えられたきた人かなくらい。
10年くらい前、池袋の行きつけのジャズ喫茶でいつものように飲んだくれていたとき、女性ボーカルのアルバムがかかった。酩酊寸前でしばし聴いていて、マスターに「これ誰」と聞いた。かけているCDのジャケットは立てかけてあるけど、席からは一番遠いところにあってよくわからなかった。レコードの時代は良かったね、遠目でも一発でも判ったから。
マスターは「これ八代亜紀だよ」と言う。そこでスマホで調べるとなるほど八代亜紀だった。
隣に多分同い年かそこらのオッサンがいて話しかけてきた。
「そういうのはあんまりよくないねえ」
多分、スマホで調べることを言っているのだろう。
「ジャズのことならなんでも聞いてよ。ジャズ、いつ頃から聴いているの」
そんなことを言ってきた。ちょっとウザってえなと思った。
「15くらいからだから、多分40年と少し。横浜のジャズ喫茶にいりびったってた」
そこで会話は途切れた。オッサンも何も言わなくなった。自分は八代亜紀の歌をずっと聴いていた。
それだけのことだ。ジャズ喫茶に長く通っていると、たまにこういうこともある。自分はだいたいいつも一人で音楽聴きながら飲んだくれる、本を読む、そんな感じだ。たまに友人と一緒に飲んだくれることもある。でもたいていは一人だ。
友人や女性と行くのは、ジャズ喫茶というよりもカフェバーみたいなとこや、ライブをよくやるようなとこ、例えば新宿DUGみたいなとこが多かったか。
その後、八代亜紀をジャズ喫茶で聴くことはなかった。CDを買うまでにはいたらずで、たまにYouTubeで聴いたりするくらいだったか。でもそのときの八代亜紀の歌はなんとなく染みた。飲んだくれた自分の中にスッと入ってきた。まあそれだけの話だ。
八代亜紀、73歳。膠原病だったという。残念なことだ。もう何年かは現役で活躍できただろうし、一度くらいライブを聴いてみたかったかもしれない。
ご冥福を祈ります。
