海街diary

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

  • 作者:吉田 秋生
  • 発売日: 2007/04/26
  • メディア: コミック
海街diary: 陽のあたる坂道 (3) (フラワーコミックス)

海街diary: 陽のあたる坂道 (3) (フラワーコミックス)

  • 作者:吉田 秋生
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: コミック
海街diary 4 帰れない ふたり(flowers コミックス)

海街diary 4 帰れない ふたり(flowers コミックス)

  • 作者:吉田 秋生
  • 発売日: 2011/08/10
  • メディア: コミック
先日、都内の本屋で1巻を衝動買い。今年のマンガ大賞なのだそうだが、購入動機にけっこうマンガ大賞の帯が影響していたかもしれん。その日は友人としこたま酒を飲んだのだが、帰りの電車の中で読み出して止まらなくなった。帰宅後もずっと読み、すぐにパソコン立ち上げてアマゾンで検索。2巻から5巻を一気の大人買い。こういう時のために金はあるのである、ストレス溜めながら働いているのであるなどと自分に言い聞かせる。
で、早いねアマゾンはやっぱり。翌々日には二回に分けて届きました。なので昨日は一日オフにしてずっと読んでましたが、なかなかに充実した一日を過ごした感じ。
お話は鎌倉に住む四姉妹の物語。中学生の四女だけは異母姉妹で、しかも父親は子どもと妻を捨てて四女の母と駆け落ちしているという設定。四女の両親は亡くなっていて、三姉妹が中学生の四女を引き取るという、けっこうきわどいというか、ややこしい設定でもある。なので話の持っていきようによっては、それこそグズグズに陥ってしまうところなのだが、そこが作者の力というべきか、抒情性とほんのりとした明るさ、ジメジメ感がほとんどない。そして、なんていうのだろう、人が人と触れ合うことで生じる小さな機微みたいなものがうまく描けているように思える。
ある意味、コミックの域を超えて、もう文学そのものといえる。そんな風にいうと、コミック好きからすれば、とっくのとおにマンガは文学を超えているみたいに言われるかもしれないな。実際、そういうところはあるにはあると思う。言葉でチマチマ、クドクドと書き連ねるよりも、ストーリーテリングの妙とともに、大胆に省略したコマ割りで、実に見事に人の気持ち動きを描き出すような素晴らしい作品が、マンガの中には幾つもある。
本作はそういうマンガの良質な部分のトップランナーみたいな作品だと思う。
吉田秋生は以前からずっとお気に入りの作家である。『バナナ・フィッシュ』や『YASHA』とかを繰り返し読んできた。この2作が妙にハリウッド映画を意識したような娯楽路線だとすれば、今回の『海街dairy』なんとなく小津安二郎を想起させるような感じかなとも思う(あくまで個人の感想です)。
舞台となる鎌倉の雰囲気もなかなかよく出ているなとは思う。四姉妹が住む古い家も谷戸にあるという設定なのだが、鎌倉という町はけっこうジメジメしたところだったりもするのだが、そんへんは軽くスルーしているかなとも思う。
どうでもいいことだが、かれこれ20年近く前になるか、半年ほどだったが鎌倉の小さな版元に世話になったことがある。今の会社からけっこう無理目なくらいに強引に来いという誘いがあり、まあ安定性とかもろもろ考えて移ったのだが。ちょうどその頃は結婚とかを現実的に考えなくてはいけない時期だったこともあったかな。
それで鎌倉周辺をけっこう営業して回ったりとかもした。坂も多いし、道は狭いし、けっこう難儀な思いもしたっけ。
もともと横浜生まれで鎌倉は自転車で遊びに行けるような場所だったし、わずか半年とはいえ、仕事で徘徊していたところでもある。そういうのがあるので、なんとなく鎌倉舞台にしたお話とかだと、他の人よりも少しだけ感情移入が強くなるところも無きにしもではある。まあ、そういうのを差し引いても、『海街dairy』はいい作品だとは思うけど。