西の魔女が死んだ

西の魔女が死んだ [DVD]
少し前に借りたものを観た。妻が友だちとの飲み会にいったとかで不在だったので娘と二人で観た。なんとなく娘と一緒に観るのに適した映画かなという直感があった。
原作をなんとなく知ってはいた。ストーリーも荒々のところは知っていた。登校拒否になった女の子が田舎で自給自足の暮らしをしている祖母とひと夏を過ごす。そのときの生活が描写される。そういうお話だ。
女の子は中学1年生。学校生活に馴染めず、人間関係やらなんやらのストレスでまいっている。そんな女の子が田舎での祖母との暮らしの中で癒され、徐々に回復していく。祖母は自らを西の魔女と呼び、女の子に家事、や農作業を手伝わせ、規則正しい生活をさせる。それを魔女修行とよぶ。魔女修行は楽しく生きていくための活力を得るために必要なことを日々行っていくことだという。それはそのまま女の子に生きていくための術を教えることに繋がっていく。
押し付けがましいところはあんまりないが、きわめて教育的な正しい物語である。押し付けがましくないからだろう、娘に感想を聞くと「面白かった」とのことだ。学校生活のストレスから不登校児童になってしまう女の子に対しても共感するところがあるようだ。「ああいうのはけっこう分かる」のだとか。そのへんがこの物語が本としてかなりのロングセラーを記録している所以でもあるようだ。
西の魔女が死んだ (新潮文庫)
さて、それでは大人の感想としてはどうか。内容が内容だけに可もなく不可もなくというところかな。お話自体に大きな動きがあるわけでもないのだし、出てくる人物もきわめて限られている。女の子と祖母、女の子の両親、そして祖母の仕事を時々手伝う下卑た中年の男。だいたいそんなところだし。ストーリーに起伏がない。
祖母と女の子の生活は基本自給自足の生活である。野いちごをつんでジャムを作ったり、様々なハーブティを飲んだり。ゆったりとした時間の流れの中での二人の生活の様はそれなりに面白い。
役者の演技はというと、まず女の子はたぶん12〜13歳の普通の子っぽい。そこそこに感受性が豊かな感じも受ける。でも大いなるタレント性みたいなものは感じない。きけば東北地方限定で活躍しているアイドル・ユニットの一員なんだとか。
そして祖母役のサチ・パーカー。ある部分凛とした雰囲気を醸し出している。外国人でありながら日本語をきちんと話すことができる。上品な老婆役をきちんとこなしている。いったいどういう経歴の人なんだろうとググってみると、なんとなんとあのシャーリー・マクレーンの娘さんなんだとか。
サチ・パーカー - Wikipedia
あの小森和子命名されたとか。6歳から12歳まで日本に住んでいたとかなかなかに楽しいエピソードに溢れた方ではないか。ただし役者としては偉大な母親のキャリアに比べてあまりにも淋しいものがある。この映画でも演技の深みみたいなものはあんまり感じられなかった。まあ普通の演技みたいな感じかな。
ただ1点、ちょっと驚いたのはこの人1956年生まれの52歳だとか。老婆役やるにはちょっと若すぎないかいっていう感じ。メーキャップもあるのだろうけど、もともと老け顔なのかな。あえていうけど1956年生まれはタメなのである、私と。それを思うとなんともはやである。同じ年齢の人がこういう枯れた演技ができてしまうというのが、少々衝撃的ではあるかな。あとね、シャーリー・マクレーンが自分の母親の世代になってしまうというのもちょっと癪ではあるかな。「アパートの鍵かします」とかの可愛らしい彼女を知っているだけにね。
話は脱線した。その脱線ついでだけど西の魔女というから、もっと「オズの魔法遣い」とかを意識したお話なのかなと思っていたのだが、ぜんぜんそういうことはないのだなと思った。この映画の中での西の魔女はサチ・パーカーであり、とても善人の魔女(?)なのである。でも我々の世代にとって「西の魔女」とは、あの意地悪で性悪な怖い怖い魔女なのである。本人記憶はないのだが、三つか四つのときに父親に連れられて「オズの魔法遣い」を観にいったとき、西の魔女が登場すると私はビェービェー泣いていたのだとか。ずいぶん大きくなるまで父になにかにつけからかわれた思い出がある。そういうトラウマにでもなりそうな怖い怖い魔女=西の魔女なのである。
だもんでこのお話でこのタイトルは今ひとつではないかと率直に思うオッサンなのである。