旧宅に最後の別れ

家族三人でふじみ野に行く。翌日、売買の決済が予定されているので、旧宅に最後の別れを告げにきたのだ。
家の前に車を止めドアを開ける。1階の居室の窓を開けて明かりと空気を入れる。家具のないがらんとした部屋。2階のリビングもなにもないとさすがに広い。勾配天井とちょっとリッチなシーリング型の照明。わずか4年半しか住まなかったけれど、けっこう思い入れがある。妻は前日にも、やっぱり売りたくないといっていた。注文建築でいろいろこれも欲しい、あれもつけてといって建てた家なので、私なんかよりも強い思い入れがあるのだろう。
でも4年半のうちの1年数ヶ月は妻の病気ともシンクロしている。この家を建て、妻と二人でそれぞれローンを組んだ。それがけっこうプレッシャーになっていた部分もあったようにも思う。この家を建てなければ、あるいは妻はあんな病気にならなかったかもしれない。タラレバを言い出したらきりのない話ではある。
家の中で何枚か記念撮影を撮った。これは未練みたいなことなのかもしれない。いろいろあったけれど、たぶんこれが最後なのだ。もう二度とこの家の中に入ることはないのだ。そんなことを思いながらも、さほど感慨深くなることも実はなかった。もっとぐっとくることがあるかなと思っていたのだが。
結局30分もいなかっただろう。すぐに近所のドラッグストアに買い物に行き、そのままふじみ野を後にした。