ロイ・シャイダー死去

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http://www.asahi.com/culture/enews/RTR200802110028.html
言わずとしれた『ジョーズ』のブロディ署長。75歳か。けっこう歳くっていたんだね。『ジョーズ』や『ザ・セブン・ナップス』『ブルーサンダー』とかのイメージが強烈なので、とにかくこの人はタフで誠実な警官役というイメージが強かったな。きっと前歴は海兵隊かなんかでヴェトナム戦歴もありみたいな感じ。
ウィキペディアの記述とかみても実際タフガイのイメージが定着していたらしいね。そのイメージを打ち破ったのが例の『オール・ザット・ジャズ』ということだ。ボブ・フォッシーの半私小説的映画だったよね。その中でボブ・フォッシーそのままともいうべき映画監督にして振付師役を演じたんだけど、正直ちょっといたかったな〜と思った。一生懸命歌や踊り頑張っていたんだけどやっぱりミス・キャストだったかな。
まああの映画自体がちょっと失敗作だったという印象。あの映画はたぶんボブ・フォッシーによるフェリーニの『8 1/2』のオマージュだったんだと思う。でもしょせんボブ・フォッシーフェリーニじゃなかったわけで、まあようするに一流のダンサーにして一流の振付師ではあったけれど、映像作家ではなかったんだよねということ。さらにいえば、ロイ・シャイダーもなかなか渋みのある役者さんではあるけど、マルチェロ・マストロヤンニとは違うということなんだよな。
ボブ・フォッシーは自分で出演してしまえばよかったんと違うと、今さらながらの突っ込みいれてみる。そのほうがもう少しあの映画の基調を成していた、あるいはボブ・フォッシーの基調ラインともいうべき退廃性が前面に出たんじゃないかと思う。トリフォーが『アメリカの夜』で自ら映画監督役をやったように自らが全面的に登場しちゃうという方式もあったんだと思うな。
でもこの映画で何度も繰り返されるシークエンス、ロイ・シャイダー扮するジョー・ギデオンがくわえタバコでシャワーを浴び、目薬をさし、画面に向かって「IT'S SHOW TIME」とおどけたようにしぐさで言うやつ、あれはけっこう気に入っていたな。それとジョージ・ベンソンの「On Broadway」をバックに描かれる冒頭のダンサーのオーデション・シーンはけっこう秀逸な感じで大好きでした。
ロイ・シャイダー、私のようなオールドファンからすると実はロイ・シェイダーと覚えていたんだけれど、渋めの良い役者さんでした。冥福を祈ります。