妻一人で渋谷へ行く

昨日のこと、妻が親しい友人二人と渋谷で待ち合わせて忘年会をするのだといって一人で出かけていった。週の初めに忘年会やるからとアポを取り出して木曜日に決めたのだとか。当日はデイケアがあるので、帰ってきてからタクシーを呼んで駅まで行き、それから電車を乗り継いでいくとのことで、それなりに用意周到準備をしていた。
少々心配ではあったが、まあなんとかなるのかなとも思っていた。帰りは多少なりともアルコールが入っているのだろうから、最悪は渋谷まで車で迎えに行くことになるかもしれないと考えていた。
妻は家を5時頃に出てふじみ野駅5時28分の急行に乗ったのだとか。それから池袋で埼京線に乗り渋谷へ着いたのは6時20分頃だというから、まあ健常者とさほど変わりない感じで移動できているように思った。ただし渋谷で埼京線のホームが遠いところあるので、6時半の待ち合わせに少しだけ遅れたということだった。
友人たちと落ち合ってから店に入ったのは7時過ぎだったとか。あんまり邪魔しちゃいけないと思い、時々こちらからお伺いメールを入れたのだが、その都度返事は返ってきたけど、それなりに楽しんでいるようだった。
夜の9時半頃に一度連絡を入れると、「もう少し」という返事だったので、とりあえず娘を連れて車で向かえに行くことにした。娘には「ママを向かえに東京へ行くけど、留守番しているか」と聞くと、「東京?行く、行く」。
途中でTUTAYAに借りていたDVDを返してから、川越街道を一路東京に向けて走った。途中で妻から連絡があり、もうすぐ渋谷で電車に乗るという。時間は10時過ぎくらいだ。それで「今、車で向かっているから、池袋で待っていれば」と言ったのだが、妻は一人で帰れると言い張る。とりあえずそのまま車を走らせたのだが、和光と成増の間くらいまで来た時に妻からまた電話があり、もう池袋に着くという。そして電車乗り継いで帰れると言うので、結局車をユーターンさせてふじみ野に向かった。妻にはふじみ野で待っているからと話したが、「大丈夫、タクシー乗って帰れるから」と返事。
遅い時間の東武東上線はけっこうゆっくりなので、ふじみ野には車の方がかなり先に着いた。駅前のロータリーでしばらく待っていると妻がようやく出てくる。アルコールが入っているわりには、しごくしっかりしている。多分相当に気を張っているんだろうとは思った。ただし、足取りもしっかりしているし、あまり疲れた様子もなかったので、本当にタクシーで帰ってくるのも大丈夫そうだった。
妻は車の中でも「ぜんぜん平気だったでしょ」と誇らしそうにしていた。数週間前に妻は会社の友人と待ち合わせをして飲んだ。その時は娘も連れていったので、私もけっこう心配だったから仕事終わってから池袋まで足を運んだ。その時の帰りは電車の中でぐったりして、となりの人にもたれるようにしていた。そのことがあったので、こっちとしてはやっぱり心配だったんだが、意外にもけろっとして帰ってきた妻を見ていると、改めてその回復ぶりとかを思い知る部分もあった。
体が不自由なぶんどうしても健常者よりは時間はいろいろとかかるだろう。でも、そのへんを差し引いて考えてみれば、けっこうたいていのことができるのだ。病気だから、心配だから、とばかりにあんまり過保護にしたり、半人前扱いするのはいかんことなんだろうなとも思った。
脳梗塞片麻痺になってから、気がつけば二年の月日が過ぎた。入院から自宅療養、デイケアと日々を送ってきた妻も、とりあえず一人で渋谷に出かけて行き、友達と飲食して楽しい時間を過ごすことができるまでになった。そして深夜近くになっても一人で電車を乗り継いで帰ってこれるようになったわけだ。まずは目出度し目出度しということなんだと思う。