やけど

妻は今回、26日、27日と二泊自宅で過ごした。今回は二日とも雨だったので、ほとんどの時間を自宅で過ごした。外食もせずにすべての食事を家ですませた。26日の夕食は野菜と鳥肉の煮物、鮪納豆など。昨日はワンパターンな麻婆豆腐とカニ玉。他にそれぞれ漬物やサラダとかも付けたし、味噌汁とかも作った。料理自体はけっこう作り慣れているのでなんとかなるけど、毎日朝昼晩こうやって続けていると料理、後片付け、料理、後片付けの繰り返しみたいになってくる。ちょっとしんどい部分もあるな。主婦の人もけっこう大変だな、休みの日とかはなどと思ってみたりもする。
妻は自宅での外泊の際も一番最初の時にトイレの失敗があったくらいで、ほとんど失敗らしい失敗もなく過ごしてきていた。これならなんとかなりそうだなとも思っていた。それが今日の昼食時、といっても2時頃の少し遅い時間だったけど、いきなり味噌汁をひっくり返した。私は料理の盛り付けとかでまだ台所にいた。妻の分と娘の分を盛り付けて先に食べさせようとした矢先だ。
熱い味噌汁をちょうど麻痺している左手、左足の側に広範囲にかけてしまった。着ていたのは長袖のパジャマだったのだが、袖をまくるとすでに水ぶくれが破れて皮がむけた状態だった。あわてて彼女を立たせて風呂場に連れて行き介護チェアに座らせて衣服を脱がし水をかけた。腕は皮がむけているうえさらに水ぶくれができそうな状態。足のほうは太もものあたりが全体に赤くなっている。時間にして2〜3分程度だったかもしれないがそうやって水をかけてから、とりあえず新しい衣服に着替えをさせた。それから病院のナースステーションに電話を入れる。電話口に出た看護師は簡単に状況を聞いたうえで「すぐに病院に連れてきてください」という。病院で診てもらうのが一番適切だろうとも思っていたので、すぐに妻を車に乗せて病院へ直行した。
娘はというとまだ昼食も食べていなかったので留守番させることにした。妻を風呂場で水をかけている時とかも、妻のこぼした味噌汁の後片付けとかをしてくれていたのが娘だ。「タオルもってきて」、「ママの着替えもってきて」という矢継ぎ早な私の要求にもけっこう迅速に応えてくれた。「お前、お腹減っているだろう。ご飯食べてそのまま留守番していろ」と言うと素直にしたがった。
病院に着くとすぐに3階に直行。処置室で待機すると当直の医師が着てくれた。結局全治がどのくらいかとかの説明も一切なく、妻は患部に抗生物質を塗ってもらい包帯ぐるぐる巻きということになった。後で聞いたら当直の医師は整形外科だという。「片麻痺の人の麻痺している側をやけどさせるというのは、一番あってはならないことです」とは開口一番。こちらから「金曜日に退院なんですが、影響でますか」と聞くと、「たぶん大丈夫でしょう。必要なら退院後に別の医院とかに通院すればいいだけですから」とのこと。とりあえず重度のやけどではないようなので一安心。
医師のいう麻痺した側のやけどという一番あってはならないことというのは、まさしくその通りなのだろう。妻は麻痺があるとはいえ、特に腕についてはけっこう痛みやひりひり感があるという。とはいえ、麻痺がなければもっと大騒ぎするほどの痛みがあるだろう。麻痺して感覚がない分深刻でもある。今回は近くに娘がいてすぐに知らせてくれた。私も身近にいてその後の対処ができた。でも、妻が一人の時にこういうことが起こったら、けっこう大変なことになるなとも思った。結局、病人を家に一人で置くということ、介護生活とはそういうことの心配を常に留意しておくということになるのだろう。
妻にはとにかく気をつけるように何度も言った。そうでないと熱いものを食卓に出すことができなくなるとも言った。とはいえ、妻はやはり病人だ。妻のやけどの責任はある意味では100%介護する立場の私の責任なのだろうとも思う。とはいえ常に看視しているわけにもいかないし、私が離れている時にそれを娘に求めるのも酷だし、たぶん難しいだろう。周囲も気をつけるとしても、結局のところ本人の自覚が必要なわけだ。ただでさえ改善されつつあるとはいえ注意障害がある。だとすれば必要以上に注意力を働かせてもらわなければならない。しかしこうしたことが続いていくようだと、本人もショックだろうけど家族もまた擦り切れていくような気がする。
いつか自宅に帰ると階段下で蹲っている妻を発見する。そんな最悪な場面を考えてしまうことが何回かある。医師や看護師の話で何でもかんでも注意、注意と言っても効果がないから、一番ポイントになりそうなものだけをリストアップして張り紙するとかが必要とも言われた。階段、ガス、熱ものを徹底的に注意させるような工夫が必要なのかもしれないな。