今日の朝日新聞一面の記事である。読者アンケートの詳細は5月3日の紙面に掲載されるという。
しかし日米安保条約を基軸としてきたこの国の世論が対米協調という名の従属からいよいよ自立へと世論動向がシフトしてきたということか。もっともこの間のトランプ政権の動きを見れば、これは致し方ないというか、アメリカは頼りにならないと考えざるを得ないのは自明かもしれない。

いざとなったらアメリカは日本を守ってくれるのかの問いに77%が「そう思わない」という回答。それでは誰が守ってくれるのか。となればEUのような集団安全保障的な志向をもっているかといえば、どうもそうでもないようだ。
同じ記事の中で近隣アジア諸国との連携強化ついての質問には否定的な回答となっている。
とはいえ、日本外交を、対米優先から中国を含むアジア諸国との連携強化に転換すべきだという意見に対する賛否を聞くと、「反対」が66%と多く、「賛成」は16%にとどまっている。
いやそもそものところ今の日本の論調は、中国はどちらかといえば仮想敵国視している部分が大きいかもしれない。「日本を守る」は「日本をどこから守る」かである。その場合、多くの者が中国から守ると思っているのではないか。あるいは北朝鮮から守るあたりだろうか。
しかしそのどちらの国も実は先の世界大戦においては、日本の侵略を受けた国である。彼らからすれば日本の侵略の記憶とともに、いつまた日本から侵略を受けないかという危機感があってしかるべきだ。被害者とはそういうものだ。
しかし日本ではもう先の戦争の記憶は風化しきっている。同じ調査では、戦争や植民地支配を通じて被害を与えた国や人々への謝罪や償いについて、「十分にしてきた」が58%、「まだ不十分だ」が29%となっている。7割の人がもう謝罪はすんだという気持ちなのだろう。それはそのまま日本の侵略戦争への記憶の風化でもあり、よりタカ派的な論調からすれば「いつまで謝り続けるのだ」であり、よりソフトには未来志向の外交うんぬんとなるのだろう。
まあ加害者の側の記憶や立ち位置などそんなものだろう。でも例えばイジメ問題でも、被害者はずっとイジメられた記憶を抱き、イジメた側はたぶんとっくにそんなことは忘れてしまう。「いろいろあったけど、とりあえず仲良くやろうや」は、加害の側からは出てくるだろうけど、被害者の側からはたぶん決して出ない言葉だろう。
世界史的にみてもユダヤ人はナチスによるジェノサイドをずっと記憶し続けるだろう。そしてドイツも公式的には、謝罪や償いは十分にしてきたとは言わないだろう。もっとも最近は極右勢力が台頭し、移民問題を含めて排外的な論調が一定の勢力を得ているので状況は変わってきてはいるかもしれない。
とはいえ日本の社会動向は歴史的な問題に関して、きわめて無自覚かつ無神経であるかもしれない。そういう国がこれまで安保条約を基軸にした外交関係から、自立した外交姿勢にシフトするとなると、どうなるのだろう。たぶん最近は当たり前のように語られる憲法改正をもとに自主的な軍事力の整備であり、自らで日本を守っていくという方向にシフトしていくことになるのだろう。
今現在でも日本の軍事費は世界で10位くらいにある。
中国やロシア、北朝鮮の脅威を喧伝しながら、アメリカに頼るのではなく独自に守るとなれば、軍事費=防衛費は増加していくことになるのかもしれない。今後の成長産業は軍需産業になるかもしれないな。一方で日本の軍事費が増加するとなれば、近隣諸国である中国、韓国、北朝鮮はそれを脅威ととるだろう。なんなら日本からすると味方のはずの台湾だってそうだろうし、一番それに強く反応するのは軍事国家ロシアかもしれない。
もはや経済成長が望めない国は、軍事強国を目指すか。なにやら北朝鮮やロシアと同じ道を歩むか。そして日本にとっては悲願ともいうべく核保有国の道が待っているかもしれない。せっかくそのために地震の多い狭い国土に多数の原子力発電所を作り続けてきたのだから。いまこそ保有するプルトニウムを活かすときかと。
なにやら世迷言のような話ばかりだ。日本はもともと日米安保条約と憲法9条のもとで経済重視・軽武装でやってきた国だ。外交はすべてアメリカ頼りで経済邁進してきた。しかし21世紀になってその経済が衰退し、経済大国の座がガラガラと崩れてきたそういう時代になって、いまさらのごとくに自立外交、自主防衛の道を歩むことが可能なのかどうか。
前述した近隣諸国との連携強化には否定的な世論。日本が自主外交、自主防衛の道を進むなかで、諸外国と対等な関係を構築していくことが可能かどうか。
本来的には東アジアの近隣諸国との間での友好関係を進めていくのが一番の近道なのだろう。EUが進めているような同じ地域での経済圏、集団防衛体制だ。でも日本では排外主義が一定の勢力をもち、中国や韓国との連携などもってのほかというところだ。例えば反中国という部分で、日本を中心とした反中国包囲網など築けるかというと、おそらく経済的にも、軍事的にもそれは難しい。
もはや中国はアメリカに次ぐ超大国としての地位を着々と構築している。万に一つも日本を中心としたアジアでの連携などはあり得ないのだろう。
日本がアメリカとの関係から自立する。これは多分正しい。そして軍事的にも自立せざるを得ない。これも多分自明あるいは必然かもしれない。そしてその次の選択肢はといえば、実は近隣諸国との友好関係を深めるという選択肢しかないのではないかと思う。東アジアという地理的な関係からすれば、中国を中心とした東アジア経済圏の中で生きていくのが一番なのではないかと。
もしも中国や韓国との間で相互的な条約が結ばれれば、それぞれの国は軍事費を削減して民生に金を回すことが可能かもしれない。北朝鮮は現体制の存続維持が可能かつ保障されれば、今のような軍事国家でいる必要もない。今の仮想敵国を置くことによって成立している外交関係は、ある意味では冷戦の残滓が続いているようなものなのかもしれないと思ったりもする。
権威主義国家であり、基本的に中国共産党の一党独裁国家である中国との信頼関係などあり得ないという論説がある。そして膨張する権威主義国家は覇権主義国家であるという論説も。アジアにおける危機は台湾から始まる。それは中国の膨張と侵略であるという、またしても仮想敵国を作ることによるモデルだ。
とはいえ中国が他国を侵略したのはおそらく元の時代に遡る。しかもそれは漢民族ではなくモンゴル民族による征服と拡張主義のことだ。そして記憶に新しいアジアで大規模な侵略戦争が引き起こされたのは90年前に日本によって起された。
戦後の現代史をみてきた者からすれば、中国は友好国や友好者に対してはきわめて親和的だったように思う。周恩来や鄧小平は外交においてきわめてプラグマティックな対応をし、友好者に対しては礼節をわきまえていたように思う。彼らと田中角栄との関係などが薄っすらと記憶に残っている。
政治体制についての諸々はある。それを民主主義の原則から批判することはある。でも基本的には内政不干渉が外交の鉄則だ。プーチンの侵略、トランプのハチャメチャ、それぞれに批判はしても、その政権の転覆を外交的に主張することはできない。それはそれぞれの国の国民が行うことだ。
中国の一党独裁という問題はあるにしろ、近隣の超大国ともっと親和的な外交姿勢で接することはできないのだろうか。もともと文明という点でいえば東アジアの辺境に位置する日本や朝鮮は、中国文化圏にあるといっていい。かっては朝貢外交を続けてきたこともある。今は超大国中国を中心とした東アジアでの経済、軍事、文化で緩やかなエリアとしてやっていくのが一番いいのではないかと、そんなことを思ったりもする。
アメリカを中心とするエリア、EUのエリア、中近東のエリア、いずれは人口規模や資源などからすれば、発展するだろうアフリカのエリア、そして中国やインドを中心とする極東アジア、東南アジアなどなど。
そういった点を見据えてみれば、対米外交「なるべく自立」は必然化していくかもしれないなと思ったりもする。