LINEと個人情報

 LINEの個人情報が中国の関連企業からアクセスできる状態にあったということが社会問題のように喧伝されている。おまけに利用者のトークにおける画像や動画が韓国国内のサーバーに保存されていることも判明した。

 この問題について国の個人情報保護委員会はLINEとその親会社のZホールディングスに対して報告要求したと土曜日の朝日一面で伝えている。

LINEに報告要求 個人情報保護委と総務省:朝日新聞デジタル

 この問題がここまで大きく取り上げられるのはなぜか、個人情報が中国企業からアクセスできるといっても、保守管理をしている会社の技術者がアクセスできるというだけで、個人情報の流出といった事案が出ているわけではない。さらにいえば中国は中国政府が情報企業に情報提供を強要できるという懸念があるというが、そうしたことが露見しているわけでもない。

 ましてや日本人のLINEの画像、動画が韓国内のサーバーに保存されているという件についていえば、それのどこに問題があるのかもわからない。それではそうした情報が日本国内のサーバーにあればいいのか。

 今やクラウド上にある個人情報がどのサーバーにあるのか、多分そんなことは誰にもわからないのではないかと素人考えではあるが思ったりもする。韓国国内のサーバーに保存といってもそのサーバーに技術的あるいは物理的に問題が生じれば、そこで情報がダメになるかといえば、多分そういうことはないだろう。おそらく個人情報は他のサーバーにバックアップがされているだろうし、それが韓国国内なのかどうかもわからない。

 自分がイメージするクラウド上の情報はというと、多分世界中のあちこちのサーバーに分散保管されているのではないかということ。それはあるいはベルギーのサーバーであるかもしれないし、カナダかもしれないし、なんなら北欧のどこかかもしれない。個人情報を収めたファイルは分散管理されており、どこかのサーバーに不具合があってもすぐに他のサーバーによって取って代わられる、多分そんな感覚でいる。

 韓国国内のサーバーに保管されているからどうのということはほとんど意味を成さないのではないかと思う。多分それがひっかかるのは、韓国というお隣さんの国であることだからだと思う。これがアメリカ国内のサーバーだとかフランスあたりで、それを問題にするようなことがあるだろうか。

 結局のところそれは常に韓国に対して優位に立ちたいというこの国の保守的な人々の中にある意識が過剰に反応しているのではないか。さらにいえばLINEの個人情報に中国企業がアクセスの問題についても、同様に中国だから問題になっている部分があるかもしれない。IT企業では中国やインドなどで情報が処理されるケースが多くあるだろうし、最近でも年金機構のデータ処理が中国企業に再々委託されていたという事案もあったと記憶している。

年金情報中国に流出で発覚…!IT公共事業の「ブラックな実態」(佃 均) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

野党、マイナンバーの中国流出を指摘 年金機構は否定: 日本経済新聞

 これも多分、LINEの保守管理を行っている企業がアメリカだったら、ここまで大きく問題になっていないかもしれない。ようは中国だからということが大きいのだろう。日本にとって中国はもっともモノをかってくれる巨大な市場であり、さらには観光立国日本にとってももっとも観光客として訪れ金を落としてくれる重要な顧客だる。その反面、世界第二の超大国となった中国は、安全保障面では日米安保にとって脅威となる国であり、日本にとっては尖閣諸島とう領土問題でぶつかり合う仮想敵国でもある。

 さらにいえばこれは韓国と同様であるが、日本は戦争を経て敗戦国となっても日米安保によるアメリカの庇護のもとで経済成長を遂げた前世紀の記憶もあり、アジアの盟主、世界に冠たる経済大国という意識が強く、戦争中に朝鮮を併合し、中国に侵略して満州国を作ったという優位意識とともに、隣国を下に見る意識が強い。

 2000年頃まではまだ日本は中国に対して経済的にも優位に立っていたと記憶しているが、2014~5年あたりでは中国は日本の倍近くになるまで成長を高めている。多分2020年代においては経済的規模は3倍近くに差が開いている。世界レベルではアメリカと中国という二大強国とそれ以外という状況になりつつあるのだが、それを認めたくないという意識が働いており、中国を敵視する声が高まっているようにもおもう。

 そういう部分が今回のLINEの個人情報問題にも垣間見えるのではないかと、そんなことを思っている。実際のところ様々な情報サービスにおいて個人情報がどこまで守られているのかという点についていえば、ほとんどそれはブラックボックスなのではないかと思う。現にGoogleでもAmazonでも、自分の閲覧履歴や購入履歴から、自分にあった商品を提供するような広告が表示される。集積された個人情報をもとにAI的な分析が為されているのだろうが、そうしたところで個人情報が第三者の目に晒される可能性がゼロとはいえないのではないのか。

 今回、LINEは中国だったから問題になっている。例えばGoogleであり、アマゾンであり、Appleであったりが、個人情報をどう扱っているのか。GAFAは個人情報保護を徹底化しているから安心と簡単に言うことができるかどうか。さらにいえばGAFAは欧米企業だからOK、LINEは出自が韓国系企業であり、さらにその保守管理を中国系企業が行っているから問題。結局のところ欧米ならOKという、日本人の欧米コンプレックスに依拠した部分もあるのではないのか、そんなことを少しだけ考えてしまう。