東御苑

 天気が良い。ほぼ快晴である。どうせ妻からどこかへ出かけたいと言われるので、先手をうって青い空に似合う公園を考えた。出来れば公園散策と美術館巡りをセットにしたい。真っ先に浮かんだのが東御苑と東近美。

 東御苑に妻と行ったのは一昨年の12月だったか。前から気になっていたのだが、いつも止める北の丸公園駐車場からだと目の前にあるのだが、代官町通りには歩道橋しかなく、横断歩道は竹橋の交差点まで下らなくてはならない。車椅子だと地下そうで遠いのである。ということで割と敬遠することが多いのだが、そのときは車の通行を見計らって、「えいや」と道路を渡ったんだった。

 そのときは広い公園内を車椅子を押して歩いたのだが、妻はえらくこの公園が気に入ったみたいで、東近美を訪れるたびに東御苑に行きたいと口にすることも多かった。たいていの場合は、美術館で時間をとるので北の丸公園をちょっと歩くことでお茶を濁してきた。

 今回は晴天ということもあり、久々に代官町通りを越えてみた。まずは北詰橋門の手前で荷物検査。お堀を見つつ門に入るとすぐに天守台が迫ってくる。いつもお堀を見るとほぼ同じ場所から同じ景色を写真に撮る。まあここに来るとあとは天守台に登って公園の全体を俯瞰で撮ったりとこちらもだいたい同じ景色である。なのである意味、定点観測じみた同じ写真ばかりになる。

<東御苑園内図>

 前回もそうだったけど、今回も北詰橋門~天守台~富士見多聞~松の廊下と回り大番所、百人番所を抜けて大手門に出る。そういうコースだ。

 ウィークデイなので当然人は少ない。どこかの小学校の遠足だか社会見学の一団がいるが、少子化のせいか人数は少ない。あとは海外からの観光客がポツポツと。みなさん円安の恩恵を受けているのでしょう。

 ひととき都会のオアシスで過ごす。東京のど真ん中にこうした自然に恵まれた憩いの場所があるというのは、市民にとっては僥倖かもしれない。これはひょっとすると硬質=天皇の恩寵かもしれない。もしも明治に天皇が江戸=東京に来なかったら、江戸城跡はどうなっていただろう。もし天皇制がどこかで廃止されて共和制になっていたら。

 おおよそ公共性に乏しい日本という国にあっては、首都東京のど真ん中のこの一等地は多分開発に次ぐ開発で跡形もなく、ただのビル街が延伸していたかもしれない。東京駅や大手町から新宿まで一直線に続くビル街。そういう絵図が目に浮かんでくる。

 それを思うと東京の真ん中に自然溢れる空間があるのは天皇家の住まいがあるからというのも、なんとなくうなずける。そういう権威とのセットがないと、パブリックスペースができない国なのではないのか。もっとも皇室=天皇家のプライベートな空間に隣接したパブリックスペースということで、完全に市民のための空間ということではないのだろうけど。

 

<お堀から東近美を望んでみた>

天守台石垣附近>

天守台への道はなんとなく岸田劉生みたいな>

<桃華楽堂>

天守台から本丸を望む>

<本丸、けやきの大樹>

<松の大廊下跡>

<富士見櫓>

 大手門を抜けてからお堀沿いを東近美まで歩く。9月にこのへんを歩いたときには雨に降られて散々な目にあったところだ。お堀端の柳が風に揺れて、なんとなくいい感じだった。