京都国立近代美術館

 上村松園京都市京セラ美術館の後、多少時間があったのではす向かいの京都国立近代美術館にも寄ってみる。まあ次いでといっては失礼なくらいコレクション充実しているMOMAKである。ここに来るのも2回目くらいか。

 閉館まで1時間と少し、受付で企画展と常設展どちらにしますときかれ、欲張りな自分は当然両方と答える。京都にはたまにしかこれないし、わずかな時間でもと思うのは人情というものではないか。

 とはいえ時間の都合もありコレクション展はA西洋近代美術作品選とB明治・大正時代の日本画だけにする。まず西洋近代美術作品、ブーダン『アントウェルベン、スヘルデ川の船』、シスレー『ブージヴァルのセーヌ川』、シニャック『サン=トロペ、岬』、マルケ『港のクルーズ船』の4点に圧倒。いずれも寄託作品らしいが、なかなかの良作。ブーダンは相変わらずのブーダン。特にマルケの作品は良作だと思った。

 明治・大正の日本画も、さすが京都だけに大家の作品が目白押し。山本春幸、竹内栖鳳、福田平八郎、富岡鉄斎、富田渓仙、川合玉堂、大観、春草などなど。ぱっと見するにはもったいない作品ばかり。

 

 名画、良作に後ろ髪惹かれながらも下の階で開催されていた企画展にも顔を出す。

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発見された日本の風景 美しかりし明治への旅|京都国立近代美術館 | The National Museum of Modern Art, Kyoto

 ビゴー、ワーグマンなど明治初期の横浜から広まった日本の風景画、風俗画を集めた企画展だ。五姓田芳柳、五姓田義松、小山正太郎、五百城文哉といったお馴染みの名前、作品の中に満谷国四郎の名前が。あの平面的というか独特な装飾性のある満谷が写実的な風景画を描いている。あとで調べるともともと満谷国四郎は五姓田芳柳に師事し、小山正太郎の私塾で勉強したのだと。なるほどなと思った。

 いずれの作品も日本洋画草創期の作品であり、技術はある意味借りもの、習作的な形で洋画によって日本の風景や風俗を描いたものばかりであり、芸術的かと問われればそこそこのという答えになってしまうし、美的にどうかとなると微妙となる。実際に写生されたものか、あるいは写真を基に描いたものかもわからないような気もする。

 この手の作品は写真や絵葉書の類と同じく、横浜に来た外国人相手のスーベニアだったのかもしれないなと思ったりもする。

 そんな中で笠木次郎吉の作品が多数展示されている。ざっと数えると12点くらいある。写実性とどことなくフランス近代のアカデミズム派的な技法も散見される。笠木って誰?という感じである。

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『提灯屋の店先』(笠木次郎吉)

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『牡蠣を採る少女』(笠木次郎吉)

 水彩の作品なんだが、画力、構図ともにかなりレベルが高い。ゆっちゃなんだが、山本芳翠の作品、例えば『浦島』なんかよりも情緒性も豊かな表現だと思ったりもする。

 笠木次郎吉についてはほとんど知られていないようで、作品のほとんども散逸しているのだという。

J.Kasagi - かさぎ画廊 Gallery Kasagi

 この画廊のオーナーは笠木次郎吉のお孫さんなのだとか。明治期初頭、無名ながら異彩を放つ作品を描いた祖父の絵や情報の収集を行っているという。こういう縁もあるのだと思う。

無名の画家笠木治郎吉の奇跡 | かさぎ画廊ぶろぐ Gallery Kasagi Blog

 

  この企画展「発見された日本の風景」の会期は10月31日までという。機会があえばもう一度行きたいと思う。出来ればもう少し時間をかけて観たいと。