テデスキ・トラックス・バンド・ライブ

昨日、渋谷公会堂での東京公演初日を観に行ってきた。埼玉の片田舎に住んでしまったせいか、渋谷に来るのもたぶん5年ぶりくらい。渋谷公会堂でのライブとなるとおおよそで20年ぶりくらいになるのではないか。久々の渋谷は駅とかもずいぶんと様変わりしている。センター街は昔と同じ雰囲気もありつつみたいな感じか。
渋谷はそれこそ20年近く前には、勤め先があったところなので、そこそこに思い入れもある街ではあるのだが、そんなこんなの感慨に耽ることもなく、とりあえず渋谷公会堂に足早に向かう。
前夜4時近くまで起きていたこともあり、もう完全に寝不足状態である。願わくば眠らないことをと思いつつもアルバム「Revelator」のやや緩めのサウンドで全編攻められてはこれはアウトかなとも思っていた。現地で待ち合わせた連れには、もし途中で落ちていたら、突いてでも起こしてと頼んだのだが、その相手もあんまりこの手の音楽聴くタイプでもなく、どちらかといえば先に落ちていそう。二人して舟漕ぐのはちょっと恥ずかしいかなと思った。
そしてライブは「Revelator」の2曲目「Don't Let Me Slide 」から始まる。3曲目には一番のお楽しみの「Midnight In Harlem 」も奏ってしまう。あらら、この後は大丈夫かななどと思ったりもしたが、それはもう杞憂も杞憂。ライブは濃密でエネルギッシュに2時間半とたっぷり続いた。もう凄すぎる。11人のメンバー一人ひとりの技量も半端じゃない。デレク・トラックスの神技ともいえるスライド・ギターとパワフルなスーザン・テデスキのボーカル。だけどそれだけではないのですね、このバンド。芸達者なメンバー達によるグループ・サウンズなわけ。
誰だよ、このグループの基本はユルユルなレイドバックだなどと訳知り的に語ったのは。って私でしたか。もう全然違うわね。途中には大迫力のブルース・ロックあり。そのへんはスーザン・テデスキの独壇場。さらに後半には怒涛のブラック・ファンクになだれ込む。テデスキ・トラックス・バンドの基調はどっファンクじゃねえかよと。
ラスト近くではスーザン・テデスキがマイク片手に踊りながら歌う。なんとも懐かしいナンバーはモータウンサウンドの「Uptight」。後で調べるとスティーヴィー・ワンダーのヒット曲らしいけど、なんかシュープリームスとかで聴いたような記憶がある。こういうウキウキムードの曲はいいな。ちなみにこの曲の出だしの部分、ピチカート5の「スィート・ソウル・レビュー」に似ている。小西さん、ちょっとパクリ気味ではないか。
さらにこの後にはドラムとベースだけのセットとなり、オテイル・バーブリッジのインプロビゼーションとなる。これがまた凄まじく、長尺なスキャットとベースのユニゾンによるアドリブが朗々と続く。ベーシストのスキャットによるユニゾンは古くはライオネル・ハンプトン・オールスターズによる「スターダスト」の名演奏の中でスラム・スチュアートがユーモラスにやっているのとかが有名だけど、綿々と続いているんだね。ある意味ベーシストのアドリブの演奏としては定着しているんだろうか。しかし大変よろしかったよこの演奏は。
最後に「Love Has Something Else To Say」で幕となる。この時点ですでに2時間をとっくに過ぎている。年齢層のやや高めの客もこの時点で総立ちとなる。我々のいた2階席でもあちこちで立って拍手を送る。所謂スタンディング・オベイションってやつだね。私もつい立ち上がって手が痛くなるほど拍手してしまいました。
そしてそしてお約束的にアンコール・ナンバー。これがまた懐かしいファンキーナンバー。「Sing a Simple Song > I Want To Take You Higher」のメドレー。ようはスライ&ザ・ファミリー・ストーンのメドレーなのである。後で調べるとスライのこの2曲はこのバンドのお約束的なナンバーの一つらしいのだが、予備知識のない私なぞには、もうなんつうかまさかのスライなのである。思わず右手を振り上げて一緒に♪♪ハイヤー♪♪と合唱に参加してしまいました。隣の連れにはどう聞こえたことかね。
2時間半を超えるライブはこのノリノリファンキーナンバーで終了。場内からは鳴り止まぬ拍手。全体的にもう満足というか、お腹一杯状態。場内に電気がついて少しだけほっとしたというか。これでさらにもう1曲アンコールがあったりしたら、こっちの体力がもたなかったかもしれん。と、そのくらいに満足しまくりましたですな。
ライブの後は渋谷の街に繰り出して飲み歩き、ライブについて夜が明けるまで語り明かしたかったところだが、なにせ埼玉のど田舎に帰らねばならない。連れのほうは都内中央線沿線、新宿から15分足らずのところなので余裕なんだが、こっちはもうあまり時間が残されていない。選択の余地もなくセンター街のキリン・ビア・シティで短期集中的にビール数杯、さらにビールをチェイサーにジンを1〜2杯で心地良くリラックスした。良い音楽と良い酒に、久々至福の時っていう感じかな。
テデスキ・トラックス・バンドに関する短感をいくつか。メンバー11人のうち白人はメインのデレク・トラックスとスーザン・テデスキの他、ツイン・ドラムの片割れ、JJ・ジョンソンの三人のみ(しかしJJ・ジョンソンてば、往年の名トロンボーン奏者じゃない、紛らわしいね)。
残りの8人が黒人。そのせいもあるのだろう、洗練されてはいるのだ、けっこうブルージーというかアーシーな感じもする。だから後半のどっファンキーがとっても映えるというか、よくフィットしている。
デレク・トラックスのギターはある種超越した様相を見せている。ブルース、ファンキー、ジャズテイスト、どんなサウンドにあっても、彼のギターは常に変わらず、普遍のスタイルを堅持している。音は柔らかく、右手はピックをつかわないフィンガー・ピッキングである。ギターを持ち帰ることもなく1台のギターで全編通していた。
彼はだいたいEのオープン・チューニングで通すという話なのだが、それだけであの多彩な音色が出せるのはある種驚異である。途中で伴奏よろしくコードを指弾のストロークでリズム刻んだりするのだが、変則チューニングでそれって可能なんだろうかと思わざるを得ないくらいだ。
演奏のスタイルはほとんど静的。派手なパフォーマンスもなく、体でリズムをとることもない。どんなに激しい曲であろうが、まったく同じスタイルで演奏する。さらには超絶技巧的なテクニックをも、なんともまあ普通に普通に弾いてしまう。これ見よがしのドヤ顔ならぬ、ドヤプレイが一切ない。さり気なき超絶プレイとでもいうべきか。
やや腰高の大柄な体系を含め、なんというか人の良いオタクを思わせる容貌である。こいつ究極のギターオタクなんじゃないかと勝手に想像してしまう。いいとこのボンボンが、ギター好きで好きでたまらなくて、ずっと弾きまくって弾きまくっていたら、みんなが上手い上手いとほめてくれる。でもそんなこと我関せず的に、ただただギターが好きで好きで、ずっとやってきましたみたいな、そういう雰囲気を醸し出してくれる。
今回のライブでも2時間半という長尺で聴かせまくってくれるのだが、デレク・トラックスについていえば、もういつまででも演奏してくれていられそうな、なんかそういう感じがする。悪い意味ではなく、ギター・キッズがそのまま大人になってしまったみたいな印象だな。
カミさんのスーザン・テデスキはこれはもう美人だし、ボーカルはパワフルだし、いうことなにもない。去年の暮れにクラプトンのコンサートに行ったときに、武道館の2階席でステージが遠く、少しだけ悔しい思いをしたこともあり、今回は双眼鏡持って行ったのだが、レンズを通して見るスーザンさんは、思いのほか美人である。デレク・トラックスは絶対にこのカミさんにベタ惚れなんではと勝手に想像。
途中で彼女のギターソロも何度かはいるのだが、これがまたハードというか、硬質で大変ブルージー。クラプトンの影響を感じさせるというか、なんつうかクリームとかでの演奏を彷彿とさせるというか。美人でミニスカの容貌とのギャップがなんとも凄いというか。ギターテクはまあ、デレクに比べれば、まあ普通というかそれなりというか、技術的には凡庸な感じではある。とはいえそこそこにレベルは高いとは思う。ただ相方がいってしまえば神なんで、その隣にいるとどうしても相対的に凡庸に感じると、まあそういう意味合いだろうか。でも、個人的には大好きなタイプではある。
あと、演奏やボーカルは大層エネルギッシュかつパワフルなんだが、MCとなると妙に可愛らしくて、それがまたちょっとギャップがあってよろしかった。
今回のライブのレポートはもう幾つか出ているようだが、このへんは参考になったかな。
テデスキ・トラックス・バンド @ 渋谷公会堂2012.02.09 洋楽ライブレポート|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)
 さらにセットリストはこちらが詳しい。
テデスキ・トラックス・バンド、東京公演1日目セットリスト: The Offending Instruments
メモ的な形ですべて引用させてもらおう。

1 Don't Let Me Slide
2 Everybody's Talkin'
3 Midnight in Harlem
4 Rollin' and Tumblin'
5 Until You Remember
6 Bound for Glory
7 Learn How to Love
8 Nobody's Free
9 Darling Be Home Soon
10 That Did It
11 Uptight
12 Love Has Something Else to Say
13 Sing a Simple Song > I Want To Take You Higher

 しかし本当に良かったわ。最近はライブなど1年に1〜2度みたいな感じになりつつあるけど、今回のテデスキ・トラックス・バンドのライブは、これまでの人生の中でも10指に入りそうなくらいよくできたものだったと思うぞ。
最後のスライ・メドレーの雰囲気はこんな感じかな。最も渋谷公会堂でのライブのほうが遥かに洗練されている感じがしましたけどね。

このバンドはカバーがけっこう多く、それらがオリジナリティもあって中々に味わいがある。個人的には彼らのビートルズナンバーも聴きたかった思いもあるな。名古屋でのライブでは「I've Got a Feeling」とかも奏っているらしい。Youtubeとかで検索すると「ヘイ・ジュード」なんかもよくやっているとか。そのへんが聴けなくて若干残念。ひょっとすると最終公演の今日のライブとかではやっていそうだな。