トウキョウソナタ

トウキョウソナタ [DVD]
個人的には昨年度の邦画ナンバーワンは矢口史靖監督の「ハッピーフライト」である。最近DVDで観返しても、そのテンポのよさに改めて関心した。矢口史靖はこと映画に関していえば、すべての点で三谷幸喜よりも上だと思う。
しかし昨年度の映画賞を総なめしたのはご存知のように「おくりびと」である。やっぱりテレビ資本、しかも日テレの力は侮りがたい。けっして悪い映画ではないけれど、納棺夫というインパクトが強い題材がすべての映画である。同じコメディという意味では「ハッピーフライト」のほうがはるかに上だと思う。しかし日本ではこういう映画があまり評価されない。
おそらくこの国ではビリー・ワイルダーのごとき名匠は実はあんまり評価されないんだろう、などとさえ思う。ばかばかしい内容のコメディ、そのなかでホロリとさせたり、皮肉な問いかけをしたり、しかもテンポ良くまとめていく、それでいて作りは見事なB級仕上げみたいな感じのもの。「ハッピーフライト」がこと映画自体としてきちんと評価されないことをそんな風に感じてしまう。
で、どのへんが「トウキョウソナタ」なのか。実は評論家たちが選んだ昨年度の邦画ベストでは「おくりびと」をおさえてこの映画が1位になっているのを良く見た。で、そのうち観よう、そのうち観ようと思いつつ、ようやく最近DVDで観た。
感想はなかなか秀逸なコメディではある。深夜かなり遅い時間に観たのに寝なかったのだからなかなか観させてくれるのだとは思う。そしてキョンキョンは本当に良い女優になったなと。う〜ん、ある意味ではキョンキョンがすべてのような映画なのかもしれない。
落ち着いた色調かつ静的なイメージが強い、あんまり起伏の少ないストーリー展開の映画ではある。それが途中、役所広司が出てくるあたりは、いきなりドタバタギャグ映画に変質する。そのへんがなんとなく面白い。あれはひょっとするとキョンキョンの観た白昼夢なのかもしれないな。
面白いには面白い映画ではあるが、「ハッピーフライト」よりも良い映画かというと、個人的にはノーである。でも観るに値する映画ではある。