少年メリケンサック


少年メリケンサック (2008)|シネマトゥデイ
シネプレックスわかばで家族で観る。妻は思っていたよりは面白かったそうな。娘はあんまり面白くなかったという。まあ小学生にパンクはわかるまい。しかもそれが50を過ぎたオッサンパンクであればなおさらである。
レコード会社の派遣社員の女の子が動画サイトで10万アクセスされている伝説のパンクバンドのライブ映像を見る。社長命令でこのバンド探してきてデビューさせる。しかしパンクバンドが実は50過ぎのオッサンばかり、例の動画は25年も前のものだったという。まあそんなお話である。
監督は宮藤官九郎、所謂ひとつのクドカンワールドっていうやつである。前評判というか、なんとなく面白そうだなとふんで観た。ただクドカンは初監督作品の「真夜中の弥次さん喜多さん」が今ひとつ乗り切れなかったというか、正直観ているのがしんどかった記憶があるので、一抹の不安はあった。
で、私の感想はというと、まあまあ、そこそこには面白かった。正直、バンドの演奏シーンは下手すぎるし、しんどいを通り越して痛すぎる印象があった。佐藤浩市のパンクはゆるせる。相変わらずワンパターンの狂気演技である。「マジック・アワー」以来のお馴染み演技である。しかし木村祐一のあれはないだろう。演技もくそもない、素のままみたいな感じだから。彼にはパンクの精神がまるで感じられない。まあいいか、ある意味そういう映画だから。
演出というかストーリー的にも中盤でけっこうだれる。最近の日本映画に多い特徴である。なんだろうね、妙に説明を多くするためにダレ場が連続しちゃうような印象だ。ストーリーを繋げるために説明的でくそ面白くもないシーンがけっこうある。もっと簡潔にさあ、シーンよりもワンカット、ツーカットで、あるいはセリフとかでもうまく繋げていけないのだろうかね。ダレ場が多いとテンポが出てこない。こういうコメディ物ではけっこうそれが致命的だったりもする。
でもそれらをすべて目をつむってもこの映画にOKを出してしまうのは、一にも二にもヒロイン宮崎あおいの素晴らしさ、可愛らしさがあるからだろうな。ある意味この映画のそれが唯一の救いである。とりあえず宮崎あおいがいるから全部許してしまえる、そういう映画である。
この映画での彼女の喜怒哀楽のオーバーアクションは、ある意味若き偉大なるコメディエンヌの誕生みたいな感じである。いや〜、久々に表現力抜群の若い女優さんが出てきたなと思う。大河ドラマ篤姫」が大ヒットしたのもうなずけるね。すでに20代前半でありながら国民的女優の地位に登りつつある彼女がこういう破壊的な演技してくれると、観ている側はとても嬉しくなるね。この娘ならどんな役でも見事にこなしそうだな。将来的には大竹しのぶのポジションあたりは間違いなくいけそうな気がする。どうせなら彼女をメインにして、彼女に歌までやらせてロック・スターの映画でも作れば良かったのに。
とにかく宮崎あおい一人のお陰でこの映画はまあまあ及第点かなと、そういう映画です。ただし劇中で佐藤浩市の言うセリフには同年代の一人としては妙に共感できた。

俺たちは若いときは大人に笑われ、大人になったら今度は子どもに笑われているんだ。