朝日新聞朝刊に報じられた記事。

これ埼玉地方欄ではなく全国版の社会・総合欄でした。
いったいこれはどういうことかというと、SNSで「差別反対」、とくに「クルド人差別」反対を発信していた福島めぐみ議員に対して、市役所や市議会事務局に抗議の電話などが寄せられ、さらに福島氏の殺害と市庁舎爆破の予告が届き、予定されていた子ども議会イベントが中止となった。
福島市議への抗議が始まったことから、市議会の議長は非公式に発言の自粛を要請していたが、これが受け入れられなかったことにより、鶴ヶ島市議の肩書によるSNSへの発信を自粛する決議を臨時議会を開いて決議したということだ。
決議案の文書はこういうものだ。


https://www.city.tsurugashima.lg.jp/data/doc/1754287600_doc_559_0.pdf
福島恵美議員に対する「鶴ヶ島市議会議員」の肩書を使用して発信することの自粛を求める決議
上記の決議を別紙のとおり、鶴ヶ島市議会会議規則第14条第1項の規定により提
出する。
提 案 理 由
福島恵美議員は、「鶴ヶ島市議会議員」の肩書を使用し、個人的な意見を発信した
ことにより、市民の安全と行政・議会の業務に重大な影響が生じている事実がある。
よって、鶴ヶ島市議会では、福島恵美議員に対し、「鶴ヶ島市議会議員」の肩書を
使用して発信することの自粛を求めるものである。
福島恵美議員に対する「鶴ヶ島市議会議員」の肩書を使用して発信することの自粛を
求める決議
我々鶴ヶ島市議会の役割は、市民福祉の増進であり、市議会議員は、その構成員と
して意思決定するものである。
しかしながら、福島恵美議員が、「鶴ヶ島市議会議員」の肩書を使用し、これに関係しないことについての個人的な意見の発信により、市民等から市及び市議会への問い
合わせが増加し、通常業務に支障をきたしている。
また、市役所への爆破予告などがされたことにより、鶴ヶ島市議会が主催する「鶴
っ子議会」が中止に追い込まれている。議会として、個人の発言を制限する考えはな
いが、市民の安全と行政・議会の業務に重大な影響が生じているのも事実である。
従前より、議長は議長権限に基づき、個人的な考えを「鶴ヶ島市議会議員」の肩書
を使用して発信することの自粛を再三要請してきたが、応じていただけなかったこと
から、市議会としての公式な対応が必要となった。
以上の状況を踏まえ、議会としての責任ある対応をするべく、鶴ヶ島市議会は、福
島恵美議員に個人的な意見を「鶴ヶ島市議会議員」の肩書を使用して発信することの
自粛を求める。
以上、決議する。
実はこの件については、先週からSNSなどでも情報が出ていて、この日にこの決議案だけのために臨時議会を開くことは知っていた。なので今回初めて市議会なるものを傍聴したが、まさに淡々とした議事進行で、議長の開会宣言、議案提案者として公明党議員がこの議案を読み上げ、その後対象となる福島議員が退席、そして一切の質疑討論が行われることなく、出席者15名のうち反対1名以外を除いた全員の賛成で議案は可決された。
反対者1名は2名の共産党議員のうちの一人。もう1名はこの臨時会を欠席している。さすが共産党となるかというと、実はこれには理由がある。実は鶴ヶ島市議会では議員提案の議案は、議員全員の賛成がないと提案できないという慣例がある。そしてこの議案には当初2名の共産党議員も賛成しており、今回欠席した1名は議案の賛成者として議案に名前を載せているのである。
週末にSNSで話題となり、まず今回の参院選挙で議席を失った共産党元議員がSNSでこの議案について問題視した。さらには共産党の県委員会や地域委員会もこの議案を差別反対の言論を封殺するものとして反対の声をあげた。
たぶんそこから共産党内部でも議論があり、鶴ヶ島市議の当初の行動にも批判があったと、これは想像するしかない。そこで2名は急遽反対に回るはずだったが、当初賛成して議案が提出されてから反対することはできないとして、議長は2人の出席を認めないということになったのだとか。そこで1名は欠席、もう1名はあくまで個人の意思として参加して、議決には反対したということのようだ。
それにしてもこの決議、いくら抗議などの声が寄せられていたとしても、福島市議は殺害予告まで受けた被害者である。それに対して議会は同じ仲間によりそうこともなく、市議の肩書での意見表明の自粛を求めることを決議したという。記事にあるとおりに決議は「発言を制限することはないが、市民の安全と行政・議会の業務に重大な影響が生じている」という理由で、自粛という名目で市議個人の言論を封じようとしたということだ。
これでは殺害や爆破予告などのテロや脅迫に民主主義の基盤となる議会が屈したことを意味することになる。脅迫を受けて、市民の安全や業務に支障が出たから口を噤むとなれば、テロリストや脅迫者に成功体験を与えるようなものである。これは絶対にあってはならないのではないか。
ほぼ同時期に同じように女性市議の発言に対して殺害予告が出た川崎市議会では、市議長名で脅迫に屈しないという声明を出している。
川崎市 : 川崎市議会議員への殺害予告等に関する川崎市議会議長コメント
川崎市議会議員への殺害予告等に関する川崎市議会議長コメント
去る7月22日に、川崎市議会議員に対する殺害予告等があったことが、昨
日明らかになりました。
言論活動に対する身体的・物理的な攻撃は、仮にそれが実行に移されず、示
唆するだけであったとしても、多大なる委縮効果を招くおそれがあり、議会制
民主主義の前提を壊す行為として、断じて許されるものではありません。
「議員は、市民の負託にこたえるとともに、開かれた場での議論によって議
会の透明性を確保しつつ本市の諸課題を解決するため、積極的に活動する」と
の、川崎市議会基本条例の基本的な考え方に基づき、言論活動に対する身体
的・物理的な攻撃は決して認めないことをここに明らかにするとともに、警察
に提出された被害届について、厳正なる捜査が行われることを求めます。
川崎市議会議長 原 典 之
鶴ヶ島議会とは真逆な対応である。鶴ヶ島市議会議長の内野議員は、川崎市の対応について聞かれて、「他所は他所、内は内」みたいなことを答えたそうである。
しかし内情について詳しい方に聞くと、今回の決議にいたったには理由があるのだという。それは日ごろから福島議員が1年生ながら、活発に議員活動を行い、質問回数もダントツであり、「差別反対」以外にも議会での活動などについても積極的にSNS等で発信を行っていた。そのことに対して快く思っていないベテラン男性議員が多数いたようだ。
最初は1年生議員で年齢的にも比較的若い女性ということもあり、先輩議員としていろいろとアドバイスしたこともあったようだ。でもこれは想像的だが、議会の慣例的なものごとや、議会での討論以前の打ち合わせや談合、立ち話的な意見交換などで、ものごとが決まって行くことに対して、福島議員は正攻法にそのおかしさを指摘したのだろう。そのことから逆にベテラン議員たちは、彼女を無視したり、彼女のいないところで協議会などを開いていたとも聞く。さらに彼女の質問中にヤジをとばすなども横行していたらしい。
こうしたイジメは男性議員だけでなく女性議員からもあったという。福島議員は選挙に立候補したときから、自らが躁うつ病の病歴があることを公表している。さらに彼女は発達障害があり、文書などには明晰で論理的な展開ができるが、口頭でのやりとりでは混乱することがあり、相手の話をすべて理解できないことがあるという。
そこで議会での質疑などでも、タブレットなどを使って録音・文字起こしをするソフトなどで、文字情報で理解しながら対応することがあるのだという。
これに対して前の議長であるベテラン女性議員は、議会内での録音機器の使用を禁止することを決めたのだという。その時点で録音機器を使う議員は福島議員一人しかいないため、ピンポイントで福島議員を狙ったイジメ的な決定だと言われても仕方がないようなトンデモな話だ。
さらに現在は様々な場所、特に公的な場所においては、障害者に対して合理的配慮の提供が義務づけられているだけに、鶴ヶ島市議会の決定は、「コンプライアンス違反」、「合理的にありえない」、「不適切にもほどがある」のではないかと思える。
結局のところ、今回のSNSでの肩書を使った発信の自粛決議は、「モノ申す女性」、上司や先輩の言うことをきかない「わきまえない女性」に対するイジメそのものなのではないかと、そう思えるのだ。
まあ(田舎の)地方議会なんて、オヤジやオバサンの談合でできているのだし、民主主義だの言論の自由などとは一番対極にあるようなところなのかもしれないというのが、素直な感想でもある。
女性議員にたとえば少々エキセントリックな部分や協調性に欠ける部分があったとしよう。そういう人はエライ議員さんを何期も続けてきたオジサン、オバサンたちには、所謂「コマッタちゃん」に見えるかもしれない。そして言うことを聞かない生意気な女性を少々懲らしめてやろうみたいな暗い情熱が生まれるということはなんとなく想像ができる。でも言論を封殺するような決議、これは絶対にやってはいけない。
地方議会とはいえ、議会は言論の府である。いやSNSをやめろとは言っていない。あくまで議員の肩書で発信するのを「自粛」しろと言っているだけだと。議員は議会内で論戦をすればいいではないかと。でも、今回の臨時議会も開会から閉会まで10分とか15分くらいで、質疑は一切なし。事前に非公開の全員協議会(たしかそんな名称だったか)という打ち合わせの場があり、議会はシャンシャンの儀式だけである。おそらく議会以外の場、夜の会合やら、内輪のひそひそ話、立ち話でだいたいのことが決まるのだから、言論などあってないに等しいのだろう。
要はSNSで「差別反対」で、ベテラン議員さんからすれば悪目立ちする新人女性議員が鼻につく、癇に障る。おまけにその発言に対する抗議やクレームが寄せられている。さらに殺害や市庁舎爆破の脅迫まで受けた。「お前の悪目立ちな発言でみんなが迷惑を被った」、だから発言するなと、そういうことだ。
この決議の姑息なところは、あくまで市議の肩書での発言を自粛せよというところだ。でも今のようなネット社会で実名で発言すれば、すぐに身バレする。この「差別反対」、「クルド人差別反対」を声高に発信する女性、調べるとどうも地方議員らしい。それなら議会にクレームいれて黙らせよう。そんな暗い情熱の極右クレーマーはたくさんいるに違いない。なので肩書のあるなしは関係なく、要は発言するなということなんだろう。
しかし改めてこんな決議をしかもほぼ全会一致でよく通すものだと思う。つくづく地方、田舎ってどうしようもないなと思う。でも鶴ケ島ってどこかというと、埼玉の西側中央、人口7万人程度の都心からはちょっと離れた一応ベッドタウンだ。

ちなみに「鶴ヶ島」と「鶴ケ島」、「ケ」は小さいのか大きいのか。市の公式HPでは小さい方の「ヶ」なのだが、東武東上線の鶴ケ島駅は大きい方の「ケ」の表記だ。どっちでもいいということらしいのだが、これってけっこう検索のときに問題となる。冒頭の朝日の記事だが、朝日のオンラインページの検索欄で「鶴ヶ島」と入力しても記事はヒットしない。そう朝日新聞的には「鶴ケ島」、大きい「ケ」なのである。試しに『広辞苑』をめくってみるこうだ。
鶴ケ島
埼玉県南部、坂戸台地中央に位置する市。畑作地帯。関越自動車道のインターチェンジがあり、住宅地化が進行。人口七万。
『広辞苑』第六版より
そうか『広辞苑』と朝日新聞が大きい「ケ」を採用しているのだから、鶴ケ島、大きい「ケ」が正しいのか。だとすれば公式HPはどうなんだとなる。パソコンなどでの変換では多分圧倒的に小さい「ヶ」だと思うし、そういう便宜性もあって公式HPは小さい「ヶ」を採用しているのだろう。だとしたらきちんとマスコミ各社や岩波書店に訂正を求めてもいいのではないかと。
自らの名称や表記についても、確たる見解を示すことができない市、いわばアイデンティティの部分が瑕疵がある町、すでにそのへんからこの自治体はもともとかなり雑なのかもしれない。
なにか話が言論弾圧議会、イジメ議会の問題から、「ケ」の表記問題に逸脱してしまった。でも正直今回の鶴ヶ島議会による女性市議の発言封じの決議は、絶対にスルーできない大問題だと思うし、民主主義の原則を市議会自らが踏みにじったということだ。住民は恥ずかしい市議会をもったことを問題視した方がいいと思う。今回、朝日新聞の埼玉地方欄ではなく全国の社会・総合欄で報じられたことは、日本中に鶴ヶ島市議会がトンデモ議会、恥ずかしい議会であることが曝されてしまったということだ。そういう恥ずかしい議会をもつ恥ずかしい地方都市、それが鶴ヶ島市だということだ。
これからはひそひそ話的には、「鶴ヶ島市ってなんだっけ、あああのトンデモ市議会があるとこね」というイメージが定着してしまうかもしれない。鶴ヶ島市民に「鶴ヶ島ってどこ、なにが有名なの」と聞くと、「川越のちょっと先、関越の鶴ケ島インターチェンジがあるとこ」くらいしか多分答えがないと思う。でもこれからはいくぶん顔を下に向けて、「イジメとミソジニーの議会のとこ」って答えることになるかもしれない。
今回の女性議員に対するSNSでの肩書を使った発言自粛決議に至った理由の一つとして、予定されていた子ども議会「鶴っこ議会」が中止になったことがあげられている。でもね今の鶴ヶ島市議会の現状では、子どもたちに民主主義に即した議会運営など伝えられる訳がない。どちらかといえば、空気を読まない女性のハブり方、陰湿にイジメのやり方を教えるだけだ。
よく発言する女の子に「お前のこと殴るからな」という匿名の手紙が届いた。するとクラス全員でそういう手紙が来るのはお前が悪いからだ。だから「お前はもう発言するな」というクラス決議をしました。
議員さんたちが今やっていることを子どもたちに話したら、子どもたちからもそれは「イジメですよね」と声が上がると思う。鶴ヶ島議員さんたち、あなたたちがやっていることはそういうことです。
鶴ヶ島市議会は2019年に「いじめのない学校づくりに向けた提言」を行ったと聞く。でも2025年に「陰湿ないじめのある議会づくり」を実践してしまった。まあそういうことだと思う。
前回の選挙で、無党派の若い議員は今回の女性議員ともう一人、最年少の現役医師が当選した。そして女性議員と最後の一つの議席を争ったのは同じ女性候補で参政党だった。まだ参政党があからさまな極右勢力であることが可視化される以前で、どちらかというと陰謀論や反ワクチンなどを主張するとこみたいな印象だった。でも参政党が落ちたのはなんとなく良きことだったという記憶があった。
そして当選した若い二人の議員にはなんとなく期待するところがあった。そのうちの一人、リハビリ医だという男性は、次の市長選に立候補する予定だという。でもこの人も今回の決議には普通に起立して賛成していた。オヤジやオバサンのイジメ集団に加担したのだ。まああの古い体質の市議会の中で、次の市長を目指すとなれば、ベテラン議員の顔色を窺わなくていけないのだろう。でも正直、この若い医師議員には残念な気持ちしかない。
いろいろ書いたが、少子高齢化の中で鶴ヶ島市も人口は減少傾向にあると思う。なにもない町で、陰湿なイジメや女性叩きが横行するとあっては、人口減少に拍車がかかるかもしれない。公園に子どもの声がなく、年寄りしかいない町。そして声高なオヤジ、オバサンが牛耳る町か。残念なことだ。