ムンク「叫び」

 今朝、朝刊の一面にこんな記事が。
ムンク「叫び」、上野で会える 来年秋に回顧展」
ムンクの「叫び」、上野で会える 来年秋に回顧展:朝日新聞デジタル
 あの有名な絵が来年、日本にやってくるという。しかも今回、初来日という。そこで少し引っかかる部分がある。自分はかってムンク「叫び」を実際に観ている。忘れもしない、中学生の頃一人で鎌倉の神奈川県立近代美術館に観に行っている。多分、美術館に行ったのも初めての経験だったせいか、けっこう鮮明に覚えている。ネットとかで検索するとそれは1970年のことだという。万博の時のことだから、自分はまだ中学生だった。自転車少年だったので、住んでいた横浜からは鎌倉あたりは自転車で何度も行っていたから、多分その時も自転車だったと思う。もう47年も前のことになるのだ。
 今回の「叫び」が初めて来日するとなると、あの時の「叫び」はどういうものなのか、調べてみるとムンク「叫び」は5枚存在するという。

油彩画(オスロ国立美術館
テンペラ画(ムンク美術館)
パステル画(1893年ムンク美術館)
パステル画(1895年版)
リトグラフムンク美術館)

 今回来日するのはムンク美術館のテンペラ画だということだ。このへんはウィキペディアの受け売りになってしまうが、パステル画の一枚は個人蔵で2012年にサザビーズのオークションにかけられ96億円で落札されているという。おそらく世界で最も高額なパステル画といえるのだろう。
 ムンク「叫び」は現代人の不安や神経症的を具象化した絵で、若い頃には一番好きな絵だったかもしれない。不安定な子どもの気分をそのまま投影できる絵なんだと思うが、今、還暦を過ぎた自分にはそれほどしっくりくるものはないかもしれないとも思う。だいたいにおいて、ムンクはある時期にはああいった不安定さをそのままキャンパスに描きつけたような不気味な絵を幾つも描いているが、それは彼の長い画業の中ではいっときだったようだ。後年は割とオーソドックスな絵を描いている。何かああいった情念を叩きつけるような、不安、憂鬱、死への恐れと誘い、そういった神経症的な絵を寡作的描き、若くして死んだみたいなイメージがあるのだが、実はけっこう長命で81まで生きているし、多作家でもあったりもするのだ。
 おそらく1970年に鎌倉で観たのは最も有名な油彩画のものではないかと思う。きちんと調べれば、50年近く前でも色々と資料は残っているだろう。試しに図録を検索してみたら、古書として千円以下で入手も可能のようだ。
 テンペラ画だとしてもほぼ50年ぶりに再開できるというのはけっこう楽しみなことだ。まあそれだけ長生きしたということになるんだろうけど。