27日土曜日の第九のコンサートに行ってきた。
年末の第九コンサートは風物詩みたいなものだけど、実は一度も行ったことがない。そもそもクラシックのコンサート自体、長い人生の中でも数えるくらいしか行ってない。最後に行ったのはひょっとすると20世紀のことかもしれない。
クラシックはまったく聴かないかといわれると、どうだろう。CDは150枚くらいあるだろうか。小学生から中学生くらいの時に、当時買ってもらった学研『原色学習図解百科』の最終巻の付録でクラシックのレコードが10枚くらいついていて、それを繰り返し聴いたのが最初。その後は多分、親が聞いていたLPレコードを引っ張り出して聴いたりしてたか。
自分でクラシックのレコード買うようになったのは、おそらく勤めてから。基本、ジャズかロック、ポップスばかりなので、クラシックは数年に一度くらいで気まぐれにみたいな感じだったか。それこそベートーヴェンの5番と6番のセットになったやつとかショパンのピアノ曲集とか、そんなものだっただろうか。30代になってから、駅とか書店とかで売っている廉価CDのモーツァルトとかを時間つぶしに買ったりとか。
そういうニワカのクラシックファンをずっと続けてきた。要するにちゃんと聴いてない。
今回はというと、妻が定期的にあっている友だちが今回の第九に合唱でのるということで、チケットをとってもらった。なので妻と子どもと三人でいそいそと出かけた。
第九特別演奏会2025 大栄不動産・クラシック・スペシャル[第259回芸劇シリーズ] | 日本フィルハーモニー交響楽団

東京芸術劇場は初めて。池袋を通勤で長く利用していたし、飲んだくれることも多かったから当然知っているし、その前を行き来していたけれど、中に入るのは本当に初めて。子どもは何度か吹奏楽のコンサートとかを聴きに来ているとか言ってた。演奏したことはないのかと聞いたら、アマチュアがステージに上がることはあり得ないそうな。
そしてベートーヴェンの第九である。指揮は小林研一郎、通称コバケン。炎のコバケン、炎のマエストロと呼ばれる御年85歳だ。合唱に参加する妻の友人に言わせると、コバケンの指揮で歌えるのは感動ものなのだとか。
自分はというと、多分名前は聞いたことある程度か。というか日本の指揮者は、それこそ小澤と岩城くらいしか知らなかったりして。いずれも鬼籍に入っているな。海外の著名指揮者だって、すぐに出てくるのはそれこそカラヤン、フルトヴェングラー、アバド、オーマンディとかそのくらい。まあニワカだから仕方がない。
なので小林研一郎といっても今一つピンとこないのだが、コバケン指揮の年末の第九もまたある種の風物詩なのだという。85歳のレジェンド、小澤なきあとはこの人が最長老なのかもしれない。いつか子どもとコバケンの第九聴いたっけね、と昔話ができたらいいかもしれない。
さてと第九である。さすがにこれは知っている。もともとニワカなので交響曲はベートーヴェンから入る。これは皆さんそうだと思う。自分もまた第五「運命」と第六「田園」をよく聴いていた。「田園」は父親が好きで聴いていたこともあり、好きになった。そして第九は年末にかかるし、合唱付きということで耳にすることもあった。ということでベートーヴェンといえば第五、第六、第九という時代が長かった。素人はみんなそうだと思う。あとは第三番の「英雄」あたりか。これはナポレオンとのエピソードとかを音楽の授業で先生が蘊蓄してくれたから。
おそらく多くの日本人は、ベートーヴェンの交響曲といえば、五番、六番、九番、そして補欠的に三番という風に認識しているのではないか。そこに新たに加わったのが七番。これは「のだめ」の影響。『のだめカンタービレ』のオープニングソングとして使われたおかげで、一気に七番の知名度はあがって、それこそ今では五番、七番、六番みたいな感じかもしれない。まああくまで個人の感想です。
たぶん「のだめ」の頃だったか、ベートーヴェンの残りの交響曲ってほとんど知らないなと思い、一度聴いてみようと思いベートーヴェンの交響曲全集みたいなCDセットを買ってみた。最初に買ったのはクリュイタンスで次にバレンボイムを買った。そしてiPodに入れて、車の中でひたすら聴き続けたりした。ロングドライブのお供はずっとベートーヴェンみたいな。その結果、一番はモーツァルトの影響が強いとか、二番、四番は軽やかでいいなとか、三番は無駄とはいわないけど長いなとか、まあ一丁前に蘊蓄するようになったり。まああくまでニワカのしょもない蘊蓄だけど。
結果として八番以外はだいたい聴けば判るくらいにはなった。そして、ベートーヴェンに限定することなく、交響曲の中で一番好きなのは実は第九、みたいなことになった。個人的には第二楽章の軽快な雰囲気が好き。あのティンパニーの「ドコドン」みたいなところがたまらなく心地よい。
ということで大好きな第九を初めての年末第九として聴けるということで楽しみに行きました。子どもとは電車の中で合流して一緒に池袋へ。妻の車いすを押して電車に乗るのは久しぶり。
ついでにいうと、クラシックのコンサートってドレスコード的なものあるんだろうか。なにごとにも形から入るタイプなので、ちょっとだけ気になったりして。ネットで調べると、最近はカジュアルな服装で問題なしとか。でもジーパンは出来ればうんぬんとか。そして男性はスーツが無難とかなんとか。といってもリタイアしてかれこれ5年。仕事着として着ていたスーツはほとんどお蔵入りで、たぶん夏冬それぞれ両手くらいはあったけど、ほとんど来てない。さてさてとどうするか。まあ結論としてはコッパンにボタンダウンシャツ、ノーネクタイでジャケット。コートはダッフルみたいな恰好になった。
もっとも行ってみると、けっこうジーパンの人もいたりして、そういうもんだよねと思ったりもした。とはいえディープ埼玉に住んでいるお上りさんとしては一応そんなものだ。ちなみに妻も子どももちょっとおめかししたカジュアルみたいな感じでした。
さてとコンサートは13時開場、14時開演。プログラムはこんな感じ。
メンデルスゾーン:オルガン・ソナタ第1番 op.65よりⅡアダージョ
バッハベル:クリスマス・コラール《高き天よりわれは来たれり》
オルガン演奏:石丸由佳(約15分)
Intermission
ベートーベン:交響曲9番《合唱》 ニ短調op.125 (約75分)
指揮:小林研一郎
ソプラノ:小川栞奈
メゾソプラノ:山下牧子
テノール:錦織 健
バリトン:青山貴
合唱:日本フィルハーモニー協会合唱団
第一部というか前座というかオルガン演奏もなかなか良かった。東京芸術劇場のステージ上部には豪華なパイプオルガンが鎮座しており、そこで奏者が見事に演奏する。個人的にはオルガン曲としてはもっとも有名だと思われる《トッカータとフーガ ニ短調》が聴けてラッキーでした。

もっともパイプオルガンの規模としてはこれはどうなんだろう。調べると国内ではNHKホールとサントリーホールが一番大きくて、その次くらいにランクされるらしい。そして電動でパイプの並びを回転させることができる可動式なのだとか。パイプオルガンというと大昔、子どもが吹奏楽で武蔵野音大のステージで演奏したことがあった。あそこのパイプオルガンもけっこう豪華で、おまけにオルガンの教授が模範演奏をしてくれたことがあったけど、なんとなくそれを思い出した。
そして第九の演奏。小林研一郎氏はさっそうとというよりもやや腰を折ったような感じで出てきた。そしてそういう姿勢でそのまま指揮をとった。やっぱり御年85歳、これは仕方がない。でも椅子もないし、よりかかる手すりみたいなものもない。じっくりと、そしてこの人の代名詞ともいうべきややオーバーアクション的な指揮もありで75分きちんとふり続けた。
演奏も自分が思っていたよりは少しゆっくりした感じで、かといって重すぎるということもなく、素人的にはとても素晴らしい演奏だったと思う。前夜、寝たのが3時くらいで例によって睡眠不足だったので、寝落ちもあるかなと思ったりもしていたのだが、流れてくる音楽、眼前での指揮者、演奏者のパフォーマンスに、ほどよい緊張感とともに接していて、眠気などほとんどなく、まさに聴き入ったという感じ。
75分という演奏も本当に楽しい時間。四楽章までずっとステージ上で待機する合唱団も、四楽章ですっと立ち上がりスタンバイ。そしてバリトンから始まるソロパート。さらに合唱が続く。これはハマるなと正直思った。
個々の演奏がどうかについては、当然ニワカなので判らない。でも交響曲はレコードで聴くのとコンサートホールで聴くのは、なにか別物なのかもしれないなと思ったりもした。レコード的には第二楽章の軽快さ、ティンパニーみたいが一番みたいな感じだったのだが、実際にはそこまで目立つものでもない。レコードだとバレンボイムのやつやフルベンはけっこう目立つけど、カラヤンだとそうでもないなとか思ったりして聴いていた。あれは録音とかそのへんの影響もあるのかもしれない。
そしてライブで聴いていると、プロのストリングスの演奏の美しさを実感した。管もけっして悪くはないのだけど、それ以上にストリングスの心地よさみたいなことを感じた。
これはちょっとクラシックにはまるかなとちょっと思ったりもした。とはいえ年金暮らしの高齢者が毎月のようにクラシックコンサートに通うというのは、ちょっとあり得ないかなとも。でももう少しクラシックを聴く時間を増やしてもいいかとは思ったりもした。まあ残された時間はさほど多くはないかもしれないけれど。


