持っているDVDでタイトルだけで出してきた。DVDは小スペース収納のためパッケージやケースから出して、皿だけケースに入れていることが多い。このタイトルはまったく見覚えない。なんだろう、たぶん法廷物かなにか。ハリソン・フォードとトミー・リー・ジョーンズあたりか。それは『逃亡者』だな。
とりあえず再生してみると、なんとポール・ニューマンが初老の弁護士演じている。観た記憶がまったくないけど、多分きっと観ているに違いないな。もうなんていうか昔のこと、かなり忘れている。なんとなく引っかかり的にちょっとは観た記憶がありそうなものだけど、なんていうかすべて忘れてしまっている。
初老のうだつの上がらない弁護士ギャルヴィンは、かっては花形弁護士として活躍したキャリアがあるのだが、今は落ちぶれて新聞の死亡記事をチェックして、葬式会場に出かけては遺族に「いつでもお力添えになります」と名刺を渡して営業活動をしている。時には「人の不幸に付け込んで」となじられたりもする。ギャルヴィンは、そうした日々に落ち込み昼間から酒を浴びるアル中弁護士だ。
みかねた先輩弁護士が仕事を回してくれる。それは医療事故で、出産中に麻酔投与のミスで植物人間になった主婦の病院との示談交渉。カソリック教会が運営する病院での事故で、教会は21万ドルの示談金を用意している。三分の一が弁護士の取り分というチョロい事件。
示談交渉のため、病院を訪れて生命維持装置をつけて昏睡状態にある主婦の姿をポラロイドに写すギャルヴィン。感光紙に次第に鮮明に映し出される主婦の姿を見ているうちにギャルヴィンの心は変化し、この事件を示談ではなく裁判に持ち込み、病院の責任をはっきりさせようとすることに決める。
病院側は大手弁護士事務所に訴訟を委ね、資金力、多数の弁護士を有する大手と先輩弁護士と二人だけで対峙する孤独な闘いが始まる。そして途中から酒場で知り合った、ちょっとミステリアスな女性が加わる。
最初に医療ミスを証言してくれるはずの医師は、なぜか長期休暇をとりいなくなる。当初医療ミスを認めていた病院側は、ミスを否定する。担当した麻酔医はその分野で専門書を出版するベテランでもあり、証言がなければ医療ミスを立証するのは難しい。新たな証人探しに奔走するギャルヴィンは、事故後に姿を消した看護師の行方を追う。そして最後にどんでん返しが・・・・・・・・・・・・。
この映画が製作された1982年、ポール・ニューマンは57歳、渋いいぶし銀のような名演技をみせている。何度もアカデミー主演男優賞にノミネートされていたが受賞していなかった。この映画での演技は受賞に価する名演だったが、ノミネートもされていない。この映画の3年後に長年の功績が認められ特別賞を受賞。さらに翌年の1986年に『ハスラー2』でようやく男優賞を受賞した。たぶん特別賞受賞後に主演男優賞を受賞は初めてのケースじゃないかと思ったりもする。
ポール・ニューマンは昔から大好きな俳優だった。若くて生きのいい頃のポール・ニューマンは、例えば『傷だらけの栄光』、『長く熱い夜』、『熱いトタン屋根の猫』などなど。さらに円熟期の『明日に向かって撃て』、『スティング』の頃もいい。でもやや年齢がいってからの方が渋味が出て個人的には好きだった。『新・動く標的』、『スラップ・ショット』あたりだろうか。
なのでこの映画の演技は本当にいい感じである。なのに観たことすら覚えていないというところがなんとも。
酒場で知り合い、途中からギャルヴィンの仕事を手伝う(ふりをする?)ミステリアスな女性はシャーロット・ランプリング。ヴィスコテンィ映画に出ていた人。『愛の嵐』の退廃的かつエロチックなナチスのコスプレが印象的だった女優。今回もちょっと謎めいた雰囲気だが、今回の役柄は今一つな感じ。説明不足というか、たぶんもう少し彼女の役の説明部分が編集上カットされてしまったのではないかと思えた。なにか中途半端な役柄で残念。
主人公を助ける先輩弁護士役はジャック・ウォーデン。脇を固める性格俳優として長いキャリアを持っていて、とにかくこの人がいるだけでなんとなく作品が締まるような感じがする。この人を最初に知ったのは『十二人の怒れる男』だっただろうか。この人のWikipediaを見ていると、本当にいろんな映画に出ている。好きな俳優さんだ。
監督はシドニー・ルメット。社会派ドラマの名手というイメージは監督デビューの『十二人の怒れる男』のせいかもしれない。70年代には 『オリエント急行殺人事件』、『セルピコ』、『狼たちの午後』といった様々な映画を撮っている。自分的にはルメットはノーマン・ジュイソンと同じ括りで、職人的な感じでなんでも撮れる人というイメージが強い。
映画の舞台はなんとなく寒々として暗い色調の街並みが続く。たぶんボストンかなと思ったのだが、案の定そうだった。ボストンでカトリック教会が運営する病院での医療事故。それを教会、病院がもみ消そうとする。それを暴こうと奮闘する弁護士。ボストン、カトリック教会、不都合な事実・・・・・・。
なんとなく思い当たるものがあるなと思ったら、神父による児童への性的虐待を教会がもみ消してきた事件を暴いた『スポットライト 世紀のスクープ』もボストンが舞台だった。ちょっとググると、ボストンは全米でもカトリック教徒が多い都市として知られているのだとか。とはいえカトリック教会へのマイナス・イメージは、当地ではどんな風に受け止められていたのだろうか。ちょっと気になるところだ。
しかし以前観たはずで、映画としてなかなかに素晴らしく、また出ている役者も思い入れのある人ばかり。なのに内容どころか、観たことすら覚えていないというのはちょっとばかりショックというか。まあ面白かったし、新鮮な気持ちで観ることできたからそれはそれでいいのだけど、ちょっとばかり微妙な気分でもある。年をとると、こういうことばかりになるのだろうなとは思った次第。
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