台湾有事とか、存立危機事態について思うこと

 高市総理の台湾有事に関する国会答弁以来、日中関係は大きく冷え込んでいる。日本にとって最大の貿易国である中国との関係悪化は、様々に影響が出ているし、また今後も出ることが予想される。これについては様々な意見があるようだが、自分的には隣国の超大国ともめて何の得があるのかといことに尽きる。とにかく中国は最大の貿易国である。一方で中国にとって日本はというと、2022年度データでは輸出入ともに5位の位置づけ、構成比では5~7%である。関係悪化で大きな影響があるのはどっちか。明白である。

 

 そもそもの高市総理の発言はというと。11月7日の予算委員会において、立憲民主党岡田議員との質疑でのことだ。

衆議院インターネット審議中継

岡田委員

海上封鎖をした場合、存立危機事態になるかもしれないと仰っているわけですね。例えば台湾とフィリピンの間のバシー海峡、これを封鎖されたという場合に、それは迂回すれば、何日間か余分にかかるかもしれませんが、別に日本に対してエネルギーや食料が途絶えるということは基本的にありませんよね。どういう場合に存立危機事態になるのかって言ういうことをお聞きしたいのです。いかがですか?

高市総理

その台湾に対してですね、武力攻撃が発生する、まあ、海上封鎖っていうのも、これ、戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて、まあ、対応した場合には、武力行使が生じ得る話でございます。あの、例えば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。まあ、こういった事態も想定されることでございますので、まあ、そのときに生じた事態、いかなる事態が生じたかっていうことの情報を総合的に判断しなければならないと思っております

岡田委員

勿論、日本の艦船が攻撃を受ければ、これは武力行使を受けたということになって存立危機事態の問題ではなく武力攻撃事態ということになるんだと思います。そういう場合があるんだと思いますけれども、日本の艦船が攻撃を受けてないときに、少し遠回りをしなければいけなくなるという状況のなかで、存立危機事態になるということは、私はなかなか想定し難いんですよ。そういうことをあまり軽々しく言うべきじゃないと思うんですよ。例えば、自民党副総裁の麻生さんが昨年1月に、ワシントンで『中国が台湾に侵攻した場合には存立危機事態と日本政府が判断する可能性が極めて高い』という言い方をされています。

高市総理

麻生副総裁の発言については内閣総理大臣としてはコメントいたしませんが、ただ、あらゆる事態を想定しておく、最低、あ、最悪の事態を想定しておくということは、非常に重要だと思います。まあ、先ほど有事という言葉がございました。それは色んな形がありましょう。例えば台湾を統一、あの、完全に、まあ、中国北京政府の支配下に置くような、えー、ことの為にどのような手段を使うかま、それは単なる、ま、シーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それから偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それは、あの、色んなケースが考えらえれると思いますよ。だけれども、あの、それがやはり戦艦を使ってですね、そして、武力の行使もともなうものであれば、ま、これは、あのー、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府が全ての情報を総合して判断するということでございます。もう実に、あの、武力攻撃が発生したら、ま、これは存立危機事態にあたる可能性が高いというものでございます。法律の条文通りであるかと思っております。

<以下サイトより引用>

【資料】高市台湾有事発言(書き起こし)|伊賀 治 デマ撲滅ファクトチェック集

 

 高市総理は、中国が台湾を統一し、支配下に置くために武力行使海上封鎖を行う場合、その海上封鎖を解くために米軍が来援し、米軍が攻撃された場合は、日本の存立危機事態になるため、自衛隊が米軍を応援するために武力を行使する可能性について明確に示唆してしまった。

 そしてそもそも事前質問と官僚が作成した答弁書には具体的な答弁はなかったことも明らかになってしまった。

 

  当初の答弁資料ではこうなっている。

岡田氏の事前質問

最終的に海上封鎖がどのようになった場合に、存立危機事態になりうるのか。説明を聞かせてくれない。総理の見解をうかがう。

 

回答

一般論として申し上げれば、いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府がすべての情報を総合して判断する。

政府としては、厳しさを増す安全保障環境の中で、いかなる事態においても、我が国の浄土・領海・領空、そして国民の生命と財産を守り抜いていくため、引き続き万全を期してまいる。

 結局、高市総理の発言は、事前質問に対する政府答弁から逸脱した勇み足だったということだ。そして明らかとなったのは、中国が台湾侵攻を企図して周辺を海上封鎖する。海上封鎖を解くために米軍が来援し、中国と米軍の衝突が起きる。米軍への攻撃は日本の存立危機事態にあたるため、米軍応援のため自衛隊が出動し、中国との交戦するということになる。

 かくして東アジアで戦争が行われる。

 自分は中国と台湾の問題は、あくまで中国の内政問題だと思っている。それは中国=中華人民共和国が、中国大陸を実効支配している唯一の国で、国連の常任理事国であること。1971年の国連アルバニア決議において、中国の国連への加盟が認められ、台湾は国連での地位を失ったこと。公式的に二つの中国は存在せず、台湾を承認しているのは世界中でわずか12ヶ国にとどまっている。

 現状、台湾は台湾政府が実行支配している。でも基本的には中国は一つの国という認識であり、将来的に台湾が中国政府に平和的に帰属するのが望ましいのだろう。しかしもし平和的でない形になったとしても、あくまでそれは中国の内政問題なのではないか。

 もし今、台湾海峡で中国と台湾との間で武力衝突や、中国による海上封鎖が行われれば、米軍が出動する可能性はある。しかしあくまでそれは可能性であり、場合によってはアメリカは許容するかもしれない。ロシアのウクライナへの侵攻に関して、アメリカはウクライナに軍事支援しているが、直接的に兵力を投入していない。同じことがあるかもしれない。

 そしてここからが一番の問題だが、中国の台湾侵攻が日本にとって存立危機事態になるとして、自衛隊が参戦した場合に、中国はどうでるか。海上での交戦であっても、それだけにとどまるだろうか。中国は間違いなくまず沖縄の米軍基地、自衛隊基地への攻撃を行う可能性がある。沖縄が戦場になる可能性が高い。そこへの想像力があるだろうか。

 そして次は日本本土への攻撃、それも米軍基地、自衛隊基地への攻撃ということになる。基地周辺の住民は間違いなく戦争に巻き込まれる。

 もしも中国政府がアメリカとの全面戦争を望んでいなければ——それは恐らくアメリカも同じだろう——、中国は米軍基地ではなく自衛隊基地だけに限定した攻撃を行うかもしれない。そのときに日本は中国本土に攻撃をかけるだろうか。そうなれば日本本土は火の海になる可能性が高い。

 なにがいいたいかというと、存立危機事態とはとにかく回避しなくてはいけないということだ。戦争への想像力、国民が戦禍を被るという事態への想像力があれば、なんとしてでもそれを避ける必要があるのだということ。

 立憲民主党の岡田議員は、質問において中国が海上封鎖しても、迂回することで日本の艦船の通行は確保できるいうことも述べている。そこには台湾有事=存立危機事態と明言させない知恵を働かせているとも思える。台湾有事になれば即自衛隊の出動となれば、それは中国を刺激することは明らかだ。そして今はまさにその状態が続いているのである。

 まずは台湾有事が起きないような外交努力。中国が台湾へ侵攻させない国際世論の形成が重要。次はもし中国が台湾侵攻への第一として海上封鎖が行われても、即米中の交戦とならないような外交折衝、さらに米中が衝突しても、それを存立危機事態としない日和見的な態度を維持する。日本は自国領土が攻撃され、自国民が戦禍に遭遇しない限りは軍事的手段をとってはいけないのだと思う。

 自国の領土ではないところでの戦争に参戦し、その結果として自国が攻撃されるようなことは避けなければいけない。まずは沖縄がターゲットにされ、住民に大きな被害が受ける。先の大戦においても日本で唯一の地上戦があり、住民に大きな戦禍を被ったのは沖縄である。日本はまた同じ過ちを、沖縄の住民に被害を与えようとするのか。

 そういう想像力、リアリティに欠けたところで、存立危機事態なる言葉が軽々しく用いられるのが、なんともやりきれない。