今週は伊豆に小旅行に行っていた。新聞も読まないし、SNSにもほとんど触れていない。木曜に夜に帰って来て溜まっていた新聞にざっと目を通すと、訃報欄に見知った名前がいくつか。旅行前に和泉雅子とコニー・フランシスのことを書いたりしていたのだが、やっぱり全国的、あるいは世界的に暑い夏、バタバタと人が死ぬ、そういうことなんだろうか。オジー・オズボーンも死んじゃったみたいだし。
渋谷陽一
14日に亡くなった。記事によると、2023年に脳出血で倒れリハビリを続けていたが、今年に入って誤嚥性肺炎を併発したという。家族に脳血管障害に罹患した者がいるだけに、なにか他人事ではないような気もする。
1951年生74歳。10代で投稿誌に音楽評論を投稿しデビュー。21歳の時に『rockin'on』を創刊。以降、音楽評論、雑誌編集、そして出版社経営、ラジオDJ、音楽イベントプロデューサーとして日本のロック・カルチャーのフロントを走り続けてきた人だ。
とはいえじつは『rockin'on』をきちんと購読したことがない。読んでいた時期が少しはあるかもしれないが、その記憶がない。音楽評論という点でいえば、先行する中村とうようの方が馴染み深いかもしれない。そして渋谷陽一はその中村とうようを批判する形で音楽評論の文壇デビューした人である。
どちらかといえば渋谷陽一はラジオの音楽番組のDJとしてよく聴いたかもしれない。生真面目でやや生硬な語りは、ときに小生意気で挑発的でさえあった。一方では編集者として、あるいは出版社経営者として抜群のバランスを持っていた。雑誌『rockin'on』を50年以上を続け、出版社だけでなく音楽イベントやコンテンツビジネスなどのグループに拡大した。
団塊の世代のなかでは一番下のあたりだろうか、70年安保のあとに社会に出て、当時のロック・カルチャー、サブ・カルチャーの中でビジネスを成功させた人である。そういう意味では伝説的な人物ともいえるかもしれない。
自分らよりやや上の世代とはいえ、ほぼ同時代を生きてきた。そして好きなロック・ミュージックを糧に成功を収めた人生。いい人生だったのかもしれない。
ご冥福を祈ります。
ハルク・ホーガン
ハルク・ホーガン、いたっけな。見事な筋肉美のファイター・レスラー。ショーマン的な要素が大きかったが人気は高かった。アメリカのWWFでメインイベンターだったが、日本でトップ・レスラーになった印象が大きい。あの決めポーズやスタイルはすべて日本で作り上げられたのではないかと思う。そして映画『ロッキー3』への出演で、単なるプロレスのスターではないエンターテイナーとなった。
プロレス団体WWFは、レッスルマニアというショー的要素の高いイベントにより、さらにマクマホン・シニアからマクマホン・ジュニアの代になりWWEという大きなイベント運営会社となっていった。WWF(WWE)はハルク・ホーガンというスター選手とともにビジネスを拡大していく。
そのレッスルマニアの企画の一つに「バトル・オブ・ザ・ビリオネアーズ」というショーがあり、億万長者がレスラーを使って勝負させ、負けた方の金持ちが坊主になるというものだった。その億万長者はWWEの経営者ビンス・マクマホン(ジュニア)であり、それに対決するのは当時不動産王として売り出し中のあの男である。そうドナルド・トランプだ。トランプは相手に対して例の「You're Fired!」を連発したという。
ギミックなショー化されたプロレス、それを体現したのがハルク・ホーガンであり、ビンス・マクマホン、そしてそのギミックな世界がリアルな社会となってしまったのが、今のアメリカである。
ハルク・ホーガンといえば、たとえば彼の日本での必殺技アックス・ボンバーは、新日本プロレスから全日本プロレスに引き抜かれたスタン・ハンセンのウェスタン・ラリアットのコピーである。多分あの技を編み出したのは、新日本プロレスのフロントだったのだろう。そしてホーガンといえばもう一つ思い出すのは、1983年の『IWGP決勝リーグ戦』でアントニオ猪木を失神させたことだろうか。
あの試合、おそらく猪木の勝利か両者引き分けというシナリオであったはずだが、それをリングから戻りかけた猪木に対してホーガンがアックス・ボンバーを見舞う。猪木はそのままリング外に吹っ飛び失神する。猪木は下を出して昏倒、ホーガンはリング上でオロオロとうろつき回る。
あれは新日本のプロモーターにして大スターを失神させた事件、事故だった。でもそれによってホーガンは新日本を追放にはならなかった。猪木をも失神させる実力者、スター選手というエクスキューズが必要だったのだろう。でもあれは間違いなく、人気はあれど実力、技量的にはまだまだ半人前のホーガンによる事故だった。ハルク・ホーガンは怪我の功名的にトップ・スターとなった。
晩年は借金まみれだったという話もある。昨年の大統領選に際しては、トランプの集会の登場し、例のTシャツを破るパフォーマンスを見せた。トランプ的アメリカ、ギミックでショーアップされた見世物的世界を体現する人物だったのだろうか。