西洋美術館で遊ぶ(5月24日)

 上野周辺を散策したあと、やっぱり小1時間くらいということで西洋美術館の常設展に行くことにする。もっと時間的余裕があれば企画展「西洋絵画、どこから見るか?」を観たいところだけど、土曜日かつ会期末なのでけっこう混んでいるだろうと思い、最初からこっちはパス。まあ一度観ているのでそのへんは余裕。

 常設展もけっこう混んでいる。やはり企画展からの流れだろうかと思ったりもする。でも混んでいるといっても、なんていうかちょっと人が多い、あるいは人がこそこそいるみたいな感じ。ウィークデイの常設展、しかも4時過ぎとかだと、もうのんびりしていることの方が多いので。そしてそういう混まない西洋美術館の常設展は、同じように混まない東近美の常設展と同様、自分にとっては一番好きな美術館でもある。

 仕事している時なんかでも、会議や打ち合わせで都内に出たあとに、少し時間があるとふらっと寄るみたいなことやっていたっけな。キャリア末期にはそういうことが許される立場にいたってこともあるにはあったのだけど。

 

 今回はとりあえずというか、小1時間くらいとのつもりだったので、ほとんど流すみたいな感じで、あっちへふらふら、こっちへふらふらみたいで、じっくり観るみたいなことはしなかった。まあ年に何回も来ているし、展示作品もほとんどが何度も観ているお馴染みさんばかりなので、まあこういうリラックスした鑑賞も許されるかなと思ったり。

 

 その中で多分3月に来た時にも観ている作品、2024年購入の新所蔵品。

《ホロフェルネスの首を持つユディト》 フェーデ・ガリツィア 1622年
 油彩/カンヴァス

 フェーデ・ガリツィアは17世紀初頭のミラノで活躍した女性画家で、カラヴァッジョと並ぶ静物画の旗手として知られているという。カラヴァッジョの影響化にある画家というと、どうもそうでもないようだ。というのはガリツィアはの生没年は1578年頃-1630年頃で、カラヴァッジョは1571年-1610年。ほとんど同世代ということになる。おまけに、ガリツィアは宗教画や肖像画でも評価されていたという。いわれてみるとこの絵などは、バロック風というよりもルネサンスの宗教画的な雰囲気が漂っているような気もする。

 16世紀から17世紀にかけての女流画家というのは、けっこう珍しい存在だったのだろう。この時期に活躍しカラヴァッジョの影響化にあった所謂カラヴァッジェスキの一人である女流画家アルテミジア・ジェンティレスキを想起する。彼女の場合はレイプ被害者として公文書に残るというみたいな事柄で記憶されることがあるが、彼女の生没年は1593-1652年でガリツィアよりも20歳以上年下だったようだ。フェーデはミラノで活躍し、ジェンティレスキはフィレンツェ、ローマ、そして最後はナポリに永住したという。ガリツィアとジェンティレスキの二人に交流があったのかどうか。そういうことを想像するのも楽しい。

 敵軍の将ホロフェルネスを酒に酔わせ斬首するユディトという主題で、ガリツィアは何点も作品を残しているという。そしてジェンティレスキにも同様の主題による作品がある。最近はこの女性が敵軍の将の首を刈るという主題にフェミニズム的な意味性をもたせて語られることがあるとも聞く。

 でも当時的には、女流画家が「男の首を切り落として殺す」画題の作品を残すっていうのは、それだけで何かセンセーショナルな感じがあったのではないかと思ったりもする。「この絵を描いたのは女だってさ、怖いね~」みたいな反応。そういうことで絵が売れるみたいなこともあったのではないかと、まあこれは勝手な想像。

 ガリツィアにしろ、ジェンティレスキにしろ、描かれるユディトはなんとなく逞しい、それこそ女の二の腕みたいな感じのふくよかな女性が描かれている。そういえば《ヨハネの首を持つサロメ》を描いたツィッツィアーノの作品も、逞しいサロメ、まさに女の二の腕的だったっけ。

 西洋美術館にはホルフェネスとユディトという主題でルーカス・クラナハの作品もあるが、これはまったく違うタイプの女性。

《ホロフェルネスの首を持つユディト》 ルーカス・クラーナハ(父)

 しかしクラーナハの描く女性は、スレンダーでどこかロリっぽい、そして冷たい視線を向ける女性が多い。クラーナハの趣味なのか、北方ドイツではこういう女性が好まれたのか。

 ちなみにガリツィアの《ホロフェルネスの首を持つユディト》 は2024年の購入ということで、最近の所蔵品はけっこう調べると購入額とかが公表されていることが多いので、試しにググってみた。どうにも下世話な人間で申し訳ない。

 するとけっこうすぐにヒットする。ジェトロの政府公共調達データベースの中にありました。

美術品:フェデ・ガリツィア作《ホロフェルネスの首を持つユ... - 落札者等の公示 - 独立行政法人国立美術館 | 政府公共調達データベース - ジェトロ

 5億6500万円、まあ無難な金額だろうな。そういう価値のある作品だとは思います。 

 

 あとは例によって何点か拡大して写真を撮ったりして遊びました。マチエールの確認みたいな意味もあるのだけど、まあこれは個人的な趣味。

 

 「夜の画家」と称されるラ・トゥールの光のあて方みたいな部分にはなんとなく興味を覚える。ただそれだけのアップ。

 

 そして海辺の風景。当時のブルジョア、あるいはプチプルが海で遊ぶ姿を描いたある種の風俗画。さまざまな人々の姿が描かれていて、けっこう楽しい。ヴーダンはモネのお師匠さんみたいな風に紹介されることが多いんだけど、こうやって人物の描き方、色使い、絵肌とかにはなんとなくマネ的要素もあるような気もしないでもない。しかしこの絵の人物群像、けっこう好きだな。特に子供たちの姿がけっこう好き。