車椅子を置き忘れる

 いつかやらかさないかと密かに思ってはいたのだが、ついにというか。車椅子を駐車場に置き忘れてきてしまった。妻を車に乗せて、車椅子を畳んで車の荷台に積む。ルーティンといえばルーティンだけど、車を走らせてからつい不安になったりすることが時々ある。バックミラーで確認すると積んであるのが判るのでホッとするみたいなこと。そうやって不安になることはあっても、よもや実際にはないだろうとどこかで思っている自分もいる。それなのに、見事にやらかした。

 

 昨日、群馬県立近代美術館に行った折、美術館のある群馬の森公園の駐車場に車椅子を置き忘れた。車を出して高速に乗り、途中で花園ICで降りてスーパーに寄った。そこでバックドアを開けてみると車椅子がない。あれ、自分、どうしたっけ。

 駐車場まで車椅子を押してきて、妻を車に乗せた。妻が水が飲みたいというので、近くの自販機まで買いに行き、ペットボトルを渡してからトイレに行った。そして戻ってきてそのまま車に乗り込んだ。車椅子は妻が下りて車に乗ったときのまま放置して積み忘れてしまったということだ。

 ようは妻を車に乗せてから、二つの行動——水を買いに行く、トイレに行く——により、車椅子を畳んで積み込むというやらなければいけない行動がまったく抜け落ちたというか。しかも車椅子は逆側にあるので自分からまったく見えないと。

 

 駐車場は6時半に完全閉鎖される。気がついたのが7時くらいだったのだが、慌てて引き返してみる。途中でハンズフリーで通話できるので電話したが繋がらない。多分、係の人も退勤したのだろうか。

 駐車場に戻ったのは7時15分過ぎ。駐車場の門は閉鎖されているので、その前に車を止めてから、駐車場内に入ってみると当然のごとく車椅子はない。もう暗くなりかけているが、公園内に入って事務所に行ってみたが、当然電気は消えていて誰もいない。閉園間際に置き忘れたので、よもや誰かが持ち去ることはあるまい。おそらく係の人が事務所に運び保管されているのではないかと。

 

 今朝、群馬の森の開園時間をHPで調べてすぐに電話をして、車椅子の忘れ物がないか問い合わせると、「あります」とのこと。そこで妻をデイサービスの送迎で送り出してからすぐに車で出かけることにする。朝からけっこうなどしゃ降りで高速道路は80キロ規制だったけど、空いていたので藤岡ICまでスムーズに。1時間足らずで群馬の森の駐車場にたどり着く。

 公園の事務所に行くと受付には女性係員がいて、今朝ほど車椅子のことで電話したものですと声をかけると事務所の中に案内されて無事車椅子を回収できた。

 

 しかしこういう、所謂うっかりはまあ普通ないだろう。それを思うと、なんていうか物忘れとかそういうレベルではないのではと別の意味で不安になる。いよいよ認知の兆しが現れたのかと、そんな不安だ。まもなく67歳になる。そういう症状が出てきても、ちっともおかしくない。しかし障害者の配偶者を抱えている身としては、自分がそういう病気を抱えるのはいくらなんでもマズイとは思う。とはいえもしも病気の発症ということであれば、受け入れるしかないのかもしれない。

 

 まあ普通に考えても、同時にいくつかの行動を行うことが、多分年齢的に難しくなっているのだろうとは思う。これはまあ認知とか以前に単純に加齢の問題としてだ。今回も、妻を車に乗せる→車椅子を畳んでしまうという行動パターンの間に、飲み物を買いに行く→トイレに行くという別行動が入り込んだということ。ようはルーチンの中に別の行動が入り込んだことが原因。以前であれば、そういうイレギュラーが入り込んでもきちんと行うべきことが欠落しなかった。マルチタスクに対応できたはずなんだろうなと思ったりもする。多分、同時に行動制御できるキャパがなくなっているということなんだろうな。

 

 おかげで二日間連続で高崎までドライブする羽目に陥ってしまった。トホホだし、情けないし、諸々である。とりあえず自分への罰として帰りは下道で帰ることにした。降り続ける雨の中ノンストップでディープ埼玉まで。まあその前にどうせ高崎まで来たのだからと、高崎駅近くの美術館に寄ってはみたけれど。