フォードVSフェラーリ

 ここのとこちょくちょく映画を観ている。BSで放映されたのを録画したものとか。AmazonプライムNetflixの映画のリストをつらつら眺めていることも多いのだが、今ひとつ食指が動かず、リストを何度も見てそのまま終わったりという夜も多い。

 昨日はというと、Disney+の映画一覧見ていて選んだ。最初に観たのはこれ。

フォードVSフェラーリ

フォードvsフェラーリ | Disney+

  これは一度か二度観ている。最初に観たのは確かアメリカ行の機内だったか。字幕なしで微妙だったが雰囲気だけは判ったみたいな感じだったか。次は多分レンタルのDVDかなにかでだ。

 再見なのだが、これは文句なく面白い。モータースポーツに興味がなくてもけっこう楽しめる映画だと思う。時代は1960年代、すでに世界的大企業であるフォードがモーターレースに参戦し、無敵のフェラーリに勝負を挑むというもの。主演はかってアメリカ人として初めてル・マンを制したが、心臓に爆弾を抱えてしまったために引退しカーデザイナーをしているキャロル・シェルビーをマット・デイモンが、イギリスから移住した破天荒なドライバー、ケン・マイルズをクリスチャン・ベールが演じている。

 また当時フォード社で副社長を務めフォードのレース参戦を手動したリー・アイアコッカ役をジョン・バーンサルが演じている。リー・アイアコッカはその後フォードの社長を務めたが解任されたが、請われて破綻寸前だったクライスラーの社長・会長に就任して経営を再建した。フォード時代にはベストセラー車マスタングを開発し、クライスラーではアメリカ発のミニバン、ダッジ・キャラバンを発売し、それぞれ大成功を収めている。

 自分が書店に勤め始めた頃、アイアコッカはすでにアメリカでの経営の神様的存在でその自伝『アイアコッカ』も世界的ベストセラーになっていた。邦訳はたしかダイヤモンド社だったと思うが、大学内の書店でもけっこう売れたのを記憶している。アイアコッカはそのうちレーガンの後を受けて共和党から大統領選に出馬するのではないかなどという噂も流れていたのを覚えている。

 ということでシェルビー、マイルズ、アイアコッカと実在の人物が出てくる。フォードに対峙するフェラーリを率いていたのはエンツォ・フェラーリ、またフォードのドライバーでマイルズの同僚としてあのマクラーレンも出てくる。そのへんは60年代、70年代のモータースポーツの情報に接することもあった、自分のような古い世代にはどこか懐かしい映画でもある。

 映画の舞台となるル・マンのレースというと自らレース・マシンを運転したスティーブ・マックウィーンの映画を思い出す。そう、60年代のモーター・スポーツは若者にはけっこう身近だったし、子どもたちはみんな車が大好きだった。ということで、この映画はどこか懐古趣味的で、オールド・ファンには馴染みがあるのではないかと思う。

 映画は、大企業のため意思決定も遅く、様々な横やりが入るなかで、シェルビーとマイルズがただレースに勝つためだけにまい進していく。二人は純粋に車が、レースが大好きな男たちだ。そういう車命、レース命の男たちとあくまで車の販売台数を稼ぐための道具としてしかモーターレースをみていない背広組との闘い、そういう図式がフォードVSフェラーリという縦軸に対して横軸のようになっているそういうタイプの映画だ。

 主役ではケン・マイルズ役のクリスチャン・ベールが圧倒的に良い。幾分風変りで破天荒かつ純粋に車を愛し、レースを愛する男を見事に演じている。頬のこけたストイックなレーサー役を見ていると、クリスチャン・ベールってこんな役者だったっけ。もっとハンサムなタイプだったのに、いつのまに渋い顔になったんだと思う部分もある。まあ役作りのためにはとてつもなく体重を増やしたり、減量したりで有名な俳優である。今回も相当役作りに拘ったのかもしれない。

 ウィキペディアで彼の経歴をチェックすると、彼の映画デビューはスピルバーグの『太陽の帝国』であり、あの主役の少年だったという。これまでまったく知らなかったというか、クリスチャン・ベールのキャリアなどあまり意識したことがなかったのだが、これはビックリだった。

クリスチャン・ベール - Wikipedia (閲覧:2023年3月8日)

 もちろんシェルビー役のマット・デイモンもいい。車好き、レース好き、心臓の薬を飲みながらACコブラのハンドルを握り、公道でも荒っぽい運転をするところなども、いかにもという感じだ。

 そのほかでは、妙に艶っぽいフェロモンぷんぷんに振りまくようなケン・マイルズの妻役のカトリーナ・バルフもいい雰囲気だ。とにかく抜群のスタイルで、多分モデル上がりかと思ったがそのとおりのようで、最盛期には世界のトップモデル20の中に入っていたという。

カトリーナ・バルフ - Wikipedia (閲覧:2023年3月8日)

 『フォードVSフェラーリ』は個人的にはけっこう気に入っている映画だ。なぜかたまに観たくなる、そういう映画だ。また何年かしたらそういう気になるかもしれない。