インシュリンの打ち方

 病院でインシュリンの打ち方を教わってきた。

 前日、妻から連絡があり、病院に来たらインシュリンの打ち方をレクチャーするということらしい。入院時に、退院の時に教わるみたいに聞いていたので、あれれと思うが、まあ教えるというのだから病院へ行く。

 妻の入院している大学病院は完全看護のうえ、コロナの関連でか見舞いはシャットアウトしている。必要なものも病棟入り口で呼び出しボタンを押して、出てきた看護師に渡す。15日に入院してから一度着替えを持って行ったが、その時も看護師に渡しただけ。今回も妻と一緒にレクチャーを受けるかと思いきや、自分一人だった。

 まずエレベーターホールから病棟の入り口付近で、要件を伝える。しばらくして出てきた担当看護師から、別室に案内されてインシュリン注射のレクチャーを受ける。出てきたのは「ゾルトファイ配合注フレックスタッチ」という器具。これには薬剤(GP-1受容体作動薬)が入っていて、毎回針を交換して注射投与を行うというもの。

 このゾルトファイや交換用の針には見覚えがある。兄が糖尿でインシュリンを打っていたので、家にもあったことを思い出した。兄が何度か糖尿以外で入院するたびに、家にあるインシュリン持ってきてと言われたことがあった。当時は、どれが注入器具でどれが針だかわからず、針だけ持って行ったりして、看護師から「これだけ」などとガッカリされたこともあった。

 練習にはまずゾロトファイ配合注、消毒用のアルコール面、注射針の三点を用意する。そして練習用に出されたのが、この練習用パット。

 これをお腹に見立てる。しかし注射は大の苦手。痛みとかよりも針が刺さるところとかが絶妙に苦手なので、自分がされる時にも目を背けていることが多い。採血なんかの時でもいつもそうしている。昔はよく看護師さんに「先端恐怖症です」などと軽口言ってたけど。

 そしてまず「ゾルトファイ配合注フレックスタッチの使い方」というマニュアルを見ながら、看護師さんが一度打ち方を実演してくれる。それから「はい、やってみましょう」ということに。

 

① ゾルトファイ配合注と薬剤GLP-1(GLP-1受容体作動薬)の確認

② ペンのキャップをはずす

③ ペンのゴム栓をアルコール綿で拭う ※消毒

↓ 

④ 注射針の保護シールをはずす

⑤ 注射針をペンのゴム栓にまっすぐ奥まで刺し、止まるまで回す(上側)

⑥ 「針ケース」をまっすぐ引っ張りはずす

⑦ 「針キャップ」をまっすぐ引っ張ってはずす


⑧ ダイアル表示の数字を2単位(ドアーズ)に設定する

⑨ カートリッジ内の気泡を上部に集めるため「トントン」指先ではじく

⑩ 針崎を上に向けて注入ボタンを押し込む(薬液が出ることの確認)

⑪ ダイアル表示の確認(⑩で注入ボタンを押すと表示が「ゼロ」になる)

⑫ ダイアルを回し、指示された量に合わせる

⑬ 注射部位をアルコール綿で消毒する

⑭ 皮膚の面に対してまっすぐ根本まで針を刺す

⑮ 「カチッ」と音がするまで注入ボタンを真上から押し込む

⑯ 6秒以上注射針刺したままにする(大体ゆっくり10数えるくらい)

⑰ 注入ボタンを押したまま注射針を抜く

⑱ 注射針に「針ケース」まっすぐつけ、針ケースごと回す(下側)

⑲ まっすぐ引っ張って注射針をはずす

↓   ※使用済み注射針は医療廃棄物になるので、一般ゴミとしては捨てない

⑳ ペンにキャップをつける

  慣れてしまえば簡単なんだろうが、けっこう面倒な手順を踏む。そしてこれを必ず毎日行わなければいけない。これがかなりやっかいなことになる。そしてそれを必ず自分が打ってやらなければならない。医師の判断だと、片麻痺の妻にはこの手順を一人でやるのが難しい。なので家族の自分がやる必要があるということだ。そう、毎日である。

 片麻痺となった妻の介助はずっと自分がしている。とはいえ当初入院してリハビリを行った国立リハビリテーション病院でのOT、PTの成果もあり、妻は一人でできることが多い。着替えも時間はかかるが自分でやる。簡単な料理もできる。退院後、デイケアのOTの先生に教えてもらったという焼売を作ったときなどは、けっこう感動ものだった。

妻、焼売を作る - トムジィの日常雑記

 今、彼女が病院からもらっている薬も自分で管理している。そういうことでいえば、インシュリンもできれば自分で打ってもらいたいと思っていたのだが、投薬の手順を自分でもやってみるとこれは片手では難しいかとは思った。まずはゾルトファイ配合注を回したり、針を取り付けるのが難しい。

 しかし毎日、必ず自分がやるとなるとなるといきなりハードルが上がる。今の予定では、夕食の前の空腹時というとことで夕方に打つことになりそうだ。妻がデイサービスから帰ってくるのはだいたい4時半から5にかけてである。自分は必ずその時間に家にいて、注射を打つことになる。無職年金生活とはいえ、ぜんぜん外に出ないわけでもないので、同じ時間に注射をするために家にいるというのはかなりハードルが高い。

 試みに片麻痺の人のインシュリン注射について検索をかけると、まったく情報がない訳でもない。注射器をたてて固定するような器具もあることはあるようだ。ただしどこで入手できるのかどうかまでは判らない。このへんはもう少し調べてみる必要がありそそうだ。

 でもまずは自分が手順をマニュアルを見ずにできるようになるまで慣れる必要がある。それから準備を自分でして、実際の注射を本人にやらせるとかそういうことをやったうえで、本人にできることの領域を広げていくということになるのだと思う。

 しかし注射嫌いの自分が慣れるのかどうか。まずはそれが問題だ。