もう、D的なものにときめかないかも

 週末に子どもが家に来た。珍しく二週続けて。家の料理が食べたいというので、煮物とかカレーとかステーキとかふるまう。いつまでたっても子どもには弱い。

 毎回、住んでいる千葉まで送っていくのだが、途中でそっち方面のショッピング・モールとかに寄る。前回は船橋ららぽーとで今回は舞浜のイクスピアリ。お出かけ好きの妻も大喜びだ。子どもは無類のディズニー好きなので、聞けば彼氏やら友人やらと月に1,2回はここに来てはやれショッピングだ、食事だ、お茶だをしているという。京葉線沿線に越したのも、どうも舞浜に近いということがあるらしい。

 子どもがディズニー好きになったのは多分親の育て方だ。1歳になるかならないかくらいから、アニメといえばディズニーものばかり見せていた。「ピーターパン」、「シンデレラ」、「白雪姫」、「眠れる森の美女」、「ファンタジア」などなど。ピクサーぽいアニメになる前、アラン・メンケンが音楽を手掛けるずっと前、クラシック・ディズニーと総称されるやつだ。

 TDLTDSもにもけっこう連れて行った。子どもが1歳くらいからだったか。今はどうか判らないが、当時は3歳まで幼児は無料だった。そして埼玉県民で舞浜が埋め尽くされるという埼玉県民デーなどなど。小学校に上がるか上がらない頃までは年に2回くらいは行っていたのではないか。

 そして妻が脳梗塞で障害者になってからも、出来るだけ普通の生活をさせたいということで、ディズニーランドにはよく行った。だいたい年に1度くらいは車椅子の妻と小学生の娘の三人でディズニー詣でを続けた。

 普通の生活をする、障害だからといって生活のハードルを下げたくないという理由で、海外旅行にもチャレンジした。治安が良くてホテルからの移動にあまりストレスいらないのではという漠然とした理由でカルフォルニアのディズニーランドを選んだ。かなりシンドイ目にもあったがなんとかなるもんだ。

 同じ理由と子どもが大学を卒業するときに再度カルフォルニア・ディズニーに旅行した。コロナが流行る直前で、帰国して二週間後にはカルフォルニアはロックダウンしたので、ギリギリセーフだった。

 そういう生活を続けていたから、子どもはある意味無類のディズニー好きになった。多分、TDLTDSに良く行く人は世の中に沢山いるだろう。でも子ども的には自分はアメリカにも行っているみたいなことがある種のアイデンティティになっていたみたいだ。それが興じて卒論のテーマがディズニーの映画音楽だったのはまた別の話。

 子どもをディズニー好きにしたのは親の子育てのせいだろうとは思う。もともと親の自分がディズニーで人格形成したような部分もなきにしもだ。自分が子どもの頃、日本テレビで「ディズニーランド」が放映されていた。それを食い入るように見ていた記憶がかすかにある。かれこれ60年前のことだ。たしか当初はプロレス中継との隔週交代で放映されていたのではないか。

 そしてディズニーの長編アニメも映画館で随分と観ている。初期のものはたいていリヴァイバルだったのだろう。古いアルバムには「わんわん物語」が映るスクリーンを撮った写真もあったりする。小学生の高学年の頃「ジャングル・ブック」を一人で観に行った記憶もある。

 ディズニー長編アニメは多分1960年代制作までのものをクラシックと称しているらしいのだが、そういう意味では「ジャングル・ブック」が最後のクラシック作品で、72年の「おしゃれキャット」や77年の「くまのプーさん」などとは区別していることが多い。まあ一般的には80年代くらいまでをクラシックに分類して、90年代以降の「美女と野獣」、「アラジン」、「ポカホンタス」あたりからを新ジャンルにしているようだ。

 60年前にテレビ番組の「ディズニーランド」に胸ときめかした子どもがそのまま長編アニメを観て育ったのだから当然ディズニーファンになる。なのでTDLが出来た時にも、最初はちょっと胡散臭く思っていたけど見事にハマったクチだ。よく通ったと思う。多分、付き合った女の子の数だけ行ったと思うし、一人と平均2~3回行ってるとして、付き合った子は両手ではきかないから・・・・・・。ちょっと見栄張ってるかも。

 大人になってどころか、オッサンになっても割とディズニー的なものにはウキウキ心躍ることは多かった。実際のところ50を超えてもけっこう楽しんでいた。でもやっぱり少しずつシンドイというか、楽しめなくなってくる。普通に疲れるし。

 子どもが大学入った頃からは家族三人でランドやシーへ行く機会も少なくなった。多分年に一度も行ってないかもしれない。子どもは次第に友人と行くのが普通になった。まあ当たり前の話だ。

 子どもが一人立ちしてからは一度も行っていない。妻は時々、たまにはディズニー行きたいと口にするけれど、だいたいいつも「もう楽しめないよ」とか「車椅子押してあの人混みはシンドイ」などと答えることが多い。

 実際のところ、ここ最近のディズニーの異様な混み方には閉口する部分多かったし、コロナ禍で厳密な予約制になってからは、そこまでして行きたくないみたいな感覚がある。正直、もうディズニーはいいかなというのが本音だ。

 なので、ランドに隣接したショッピングモールなどに行ってもちっともときめくことはない。物欲もじょじょに枯渇しつつあるので、ブランドもの含めて買い物とかを楽しむ気にもなれない。子どもはディズニー的な雰囲気に触れるだけで満足らしいのだが。そして妻はというと、おでかけ好きだし、久々都会の賑やかさに触れ、それがディズニー的ということでけっこう満足している。でも、ここはまあようするにショッピング・モールだし。

 ということで滞在時間は2時間ちょっと。最後に三人でパンケーキ食べてから退散することにした。最後にアンバサダー・ホテルの売店を物色するも欲しいものはなんもない。そういえばこのホテルにも2回、ディズニーランド・ホテルに1回泊まったことがあるな~と、ちょっと遠い目。そのまま駐車場に抜けた。