カレンダーについて

 

 現役時代、カレンダーの用意など考えたことがなかった。年末になると取引先が持ってくる。それが当たり前だった。一応、長く出版業界にいたので、印刷会社、製本所、運送会社などから沢山カレンダーをいただく。社員で分け合っても、けっこう年末ぎりぎりになっても残っていて、それを仕事納めの時に持って帰る。ずっとそんなことでやってきた。

 カレンダーは実務的というか、見やすくて書き込みができるものが使いやすい。そういうのは意外と運送会社や製本所のものが多い。質実剛健的である。それに対して印刷会社はというと、これはもう本業との兼ね合いもあり、お洒落で美しいものが多かった。社名を出すと恐縮だが、大日本とかはやはり金がかかっているし、発色も良い。光村あたりもキレイなものが多かったように記憶している。

 印刷会社にとってカレンダーは本業の技術の見せ所みたいなところもあるから、印刷技術をそこそこ駆使しているのだろう。にじみでもあろうものなら笑われてしまう。

 そういう質の良いカレンダーがずっと無償で手に入れることができた。そしてそれが当たり前だったのだが、仕事を辞めてみると悲しいことにどこからもカレンダーが回ってこない。多分、在籍していた会社に連絡すれば、カレンダーを分けてもらうことは可能だろう。なんなら後輩の誰かが届けてくれるかもしれない。しかしそれはいくらなんでも、だ。

 「カレンダーですか。いつでもお届けしますよ」と言ってくれるだろうが、多分内心では何言ってるんだかみたいな部分もあるかもしれない。自分だって立場が逆ならそうだろう。リタイアした上司筋のところに頼んだ本を届けに行った記憶が・・・・・・。まあ当然そういことで煩わせるわけにはいかないから、もちろんそんなことで連絡取ったりすることはない(きっぱり!)。

 そうなるとカレンダーは無償ではなく、きちんと買うことになる。普通に文房具屋に行けば11月くらいから賑やかにカレンダーが沢山販売されている。お洒落なものから、質実で実際的なものまで多種多様。お店に買いに行かなくても、通販サイトで簡単に入手可能だ。
 ここ2年くらいはアマゾンで購入している。実際的なものだと、新日本カレンダーやキング・コーポレーションのものなんかがいい。だいたい千円前後だろうか。

 今年使っているカレンダーは、そうしたものと一緒にモネの絵画のを買った。そっちは多分二千円くらいしただろうか。さらにいえば卓上カレンダーは大塚国際美術館のものを使っている。昨年は山種美術館や玉堂美術館などで買ったものも使っていた。これは当然高い。

 仕事を辞めて二年、それまでタダで手に入ったカレンダーは毎年買うことになった。リビング、ダイニングに一つずつ。そして自室にも。まあ仕方ないことだと思うが、年金生活の身では、カレンダーごときにあまり金かけたくないなあと思う部分もある。ずっとタダだったのだから。

 昨日、久しぶりに子どもが帰ってきた。特に理由はなく、実家の飯が食べたくなったとかそんな程度の理由らしい。友人の結婚祝いを入れる紙袋やメッセージカードがいるというので、家族三人で近所のダイソーに出かけた。するとダイソーにもカレンダーコーナーがあり、質実系のカレンダーが山ほど売っていた。値段を確認すると当然のごとく100円である。

 若干紙質なりが安っぽいような気もしないでもないが、文具店やホームセンター、アマゾンなどで売っているものとさして遜色もない。
 そうかカレンダーはダイソーで買えるのかと思い四部ほど購入した。妻は犬の写真のものがいいというので、そちらも買った。
 リタイア後の当たり前といえば当たり前の教訓。カレンダーはタダではない。そして淋しき年金生活者は百円ショップでカレンダー買う。多分百円ショップの運営企業では、高齢者向けの市場調査が為されているのかもしれない。