皆既月食

 442年ぶりの皆既月食と天体食-天王星、そして次回の天体食は土星食で322年後ということで、朝からテレビで盛んに天体ショーについて報道している。

 別に天体観測とかそういうのはほとんど興味もない。記憶を辿っても星を見たとか月食や日食を観測したとかそういうのがほとんどない。う~んと昔のことでいえば、小学生の多分低学年の頃に、クラス全員で校庭に出て日食を見たのをなんとなく覚えている。たしかガラスの板だかにロウソクの炎をかざしてススをつけて見たような記憶が。

 かれこれ60年近く前のことなので、いろいろなことがごっちゃになっているけれど、当時購読していた学研の学習誌には、日食や月食を見るための紙製のメガネが付録でついていたことがあった。多分、そういう天体ショーがあるときについてきたのだろう。紙で出来ていて、レンズの部分は色付きのセロファンかなにか。でも、その付録メガネで日食なりなんなりを見た記憶が残念ながらない。

 子どもが小学生の頃、夏休みの自由研究はたいてい親がかりでやっていた。毎年、毎年、親が子どもに希望を聞いてからネタを用意してみたいなことだったか。子どもの自主性とかそういう点ではまったくダメダメなのだが、数少ない親子での共同作業みたいなことで許してもらうしかない。

 この日常雑記にもいくつか記録が残っている。懐かしい子育ての記録みたいなものだ。それでどうのと言われても、多分そういうものだ、としか答えられない。子どもにとっては黒歴史に類するものかもしれないが、親的には懐かしい記憶、思い出だ。

夏休みも終了 - トムジィの日常雑記

2006年、卵を酢につけて作る浸透圧の研究。

10円玉実験 - トムジィの日常雑記

2007年、10円玉をいろいろな液体(酢、ジュース、牛乳などなど)につけて変化をみる酸化銅の研究。

顕微鏡クイズ - トムジィの日常雑記

2008年、USB顕微鏡でいろいろなものを拡大する顕微鏡クイズ。

 

 あまり科学的向上心に結び付くものではないようなものばかりだった。みんな短時間でできる安直なもの。だいたいこういう自由研究も、夏休みの最終週とかにギリギリになってやったものばかりだった。子ども的にはあまりそういうのに興味もなく、夏休みの宿題も可能な限り放置するタイプだった。誰に似たんだか。

 2007年は本当は天体観測をやるはずだった。子どももそのつもりでいた。たしかその年の夏も皆既月食があったのだったが、生憎当日が雨降りで急遽10円玉実験になった。その時の記録を見ると、どうも5000円程度の玩具のような天体望遠鏡を買って、それにデジカメを据え付けてということにしようと親子(主に親が)で計画していたみたいだ。皆既月食の日の準備のために、親はその週は天体望遠鏡にデジカメを装着して撮影の準備とかをしていたみたいだ。そうやって準備していたのに、残念ながら当日雨だったとか。

皆既月食は雨で・・・ - トムジィの日常雑記

 そのときに自分の人生でも多分初めて、そして最後とでもいうような、割と大きな月の写真を撮った。たまに昔の写真を見ていて、この写真に出っくわすと、よくデジカメでこんな写真が撮れたなと思ったりもしたのだが、玩具とはいえ天体望遠鏡使ったんだった。

2007年8月の満月

 そして話は2022年に戻る。

 妻がデイサービスに行く前から今日は皆既月食を見に行きたいと話していた。そして午後、帰ってくるなりに「月食見に行くよ」と声かけてくる。その気はないのだが、テレビで報道されるうん百年ぶりとか、次は三百うん年先とかいう喧伝についその気になる。

 月食を見るとなると選択肢は、家のベランダ、ご近所散歩、ちょっと開けたところへ行くとそのくらいになるのだろうか。ちょっと開けたところだと、この近辺だと運動公園の駐車場とか川島の平成の森公園とか、いくつか頭の中で巡らしてみる。でも出来れば星とか月を見るとなると、低地よりも小高い丘系の方がいいかもしれない。基本、車椅子だしあまり辺鄙なところもうよくない。トイレとかのことも。公園のトイレはあまりキレイじゃないし、夜とか使うのはどうか、などなど。

 ということで高速のSAがいいかと思った。駐車場は広いし、トイレもキレイで完備されている。SAだと街燈類がけっこう多くて明るいから月を見るに適しているかどうかはわからないが、まあ基本はなんちゃって天体観測である。近所のSAというと関越道の高坂か圏央道の狭山のどちらか。帰りのことを考えて高坂をチョイスする。狭山SAだと帰りは入間で降りて下道、高坂だと東松山。どっちでも同じようなものかもしれないけど。

 高坂SAではトラックが沢山止まって待機している。時間調整、仮眠など諸々。ご苦労様である。このトラックの群れが日本の物流を支えている。ここだけは自動化、無人化できない。それでいて運転手の収入はずっと下がり続けている。少子高齢化、3Kのトラック運転手の成り手が多分減少しているはず。5年後、10年後はどうなっていくのだろう。ずっとそんなことを考えているのだけど。

 駐車場内を1~2週回ってからレストランから少し離れた所に車を停める。高坂SAは上りと下りが隣接しているのだけど、下りの方が少し高台になっていて坂戸の町とかを見下ろせることになっている。このSAをチョイスをしたのはそんなことをもあってのこと。

 月はじょじょに満ち欠けている。近くでは夫婦と思われる二人連れで男の方が小さな天体望遠鏡を設置している。そのベンチにこちらも座ってとりあえず月を見る。スマホで写真を撮るが望遠にしてもちょっと大きな丸い点みたいにしか撮れない。いちおう双眼鏡を大きいやつとコンパクトのやつと二つ持ってきていたので、そちらで覗いてみるとそれなりに月が欠けているのがわかる。ついでに8倍光学レンズ付きとかいう昔買ったデジカメの方で撮ってみる。手持ちだとブレることブレること。なかなかうまく撮れない。月とか星を撮るなら三脚は必須だなと、当たり前といえば当たり前のことを思う。

 

 ほぼ月が地球の影にすっぽりはまった段階でもデジカメレンズだとこんな風に写る。

 

 妻は車椅子に乗ってiPhoneで撮影するのだが、うまく撮れないねと言っている。まあそんなものだ。

 なんだかんだで小1時間、月を見て過ごす。長く外にいるとそこそこに寒い。妻に缶のコーンスープを買ってあげると、時間をかけて全部飲んだ。いつもだと二人でシェアするのだけど。

 その後は、また月が上弦の方から欠けて戻ってくる。さすがにそれをずっと見ているのもしんどい。夕食も取ってないし。ということで撤収して東松山PAで降りて下道で帰宅する。途中でスーパーによってカットされたカボチャ(半額)と安いベーコンを買う。帰宅してカボチャとベーコンのチーズ焼きみたいなのを作る。カボチャをレンチン、ベーコンと一緒に炒めてから粒状のシチューの素をパラパラと入れ牛乳も足して混ぜる。それから皿にもって溶けるチーズを載せてもう一度チンして。まあ適当だわ。

 料理の前に二階のベランダに出てみるとまだ月は欠けたまま。試しに三脚出して数枚撮ってみた。

 とりあえず天体観測は終了。

 何回か生まれ変わって、そして運よく人間に生まれ変わって、うまいこと322年後にも人間やっていたら、また月食と天体食に巡り合うことができるかもしれない。