グッド・ナース

https://www.netflix.com/jp/title/81260083

 これは文句なく面白かった。病院を舞台に過酷な勤務に従事する看護師たちの物語。シングルマザーで心臓病を抱えるエイミーは過酷なICU勤務で疲弊している。心臓病はいつ発作を起こすか判らない。契約で1年経たないと医療保険に入れない。一回の診察代が950ドルと高額。そんな彼女の部署に、親身になってくれるベテラン看護師チャーリーが入ってくる。病院での深夜勤務での会話のなかでチャーリーと打ち解けていくエイミー。チャーリーもまた離婚経験者で、判れた妻はなかなか子どもにも会わせてくれないとエイミーに悩みを打ち明ける。

 チャーリーはプライベートでもエイミーの子どもの面倒をみてくれたりと、じょじょに二人の距離は近づいていく。そんなとき病院内で患者の不審死が相次ぐ。警察はチャーリーを容疑者として捜査を進め、エイミーにも捜査の協力を求める。エイミーは以前チャーリーが勤めていた病院に自分の知り合いがいたことを知り、話を聞きに行く。するとその病院でも不審死が相次いで起こっていたこと、チャーリーが辞めると同時にそれがおさまったことなどを知らされる。

 エイミーは捜査に協力し、チャーリーに本当のことを話すように求めて行く。

 医療現場での疲弊していく看護師の物語。それぞれに問題を抱える二人の看護師の孤独な魂。そういう人間ドラマがじょじょにミステリー的な展開へと移っていく。それでもどこか靜的な感じで、ドラマティックに観る者を惹きこんでいく、みたいなそういう映画ではない。どこまでオーソドックスに、静かな展開。

 医療現場にありがちな不審死と殺人の疑い。よくできた話だと思ったら、これは実際にあった事件を基にしているのだとか。

チャールズ・カレン - Wikipedia (閲覧:2022年11月8日)

 看護師として勤めた16年間に本人が自白しただけで40人近くの患者を殺害した男。本人がよく覚えていないもの、自白していないものをあわせる400人近くの殺害の可能性もあるという。病院を転々としながら、患者に薬品を過剰投与して殺害する。病院は薄々カレンの犯行を疑いながら、遺族からの訴訟リスクや病院の評判が落ちることを恐れ通報せず、カレンは看護師不足ということもあり次々と病院を渡り歩く。とんでもない猟奇殺人事件である。

 主役はいずれもオスカー俳優のジェシカ・チャスティンとエディ・レッドメイン。二人の押さえた演技のぶつかり合いは見事である。この映画は2022年制作なので、ひょっとするとオスカーに複数ノミネートされるかもしれない。チャスティン、レッドメインがそれぞれ女優、男優でノミネート、受賞となれば、それぞれが二度目となる。受賞に十分値する演技だ。

ジェシカ・チャステイン - Wikipedia (閲覧:2022年11月8日)

エディ・レッドメイン - Wikipedia (閲覧:2022年11月8日)

 オーソドックスで靜的なストーリー展開、ある種たんたんとしていて、過剰なスリリング感もない。それでいてダレ場がなく123分を一気にみせる。監督はデンマーク出身のトビアス・リンホルム。おそらくハリウッドでは初めてメガホンをとったようだが、今後活躍が期待される。

 この映画もNetflixによる制作映画で、劇場公開もされたという。ネット配信メインで制作される映画も良質な作品が増えているということなんだろう。