遠山記念館

 妻がどこかへ連れて行けという。出来れば遅れている西洋美術史のテキスト読んだり、レポートの準備を始めたいのだが、こればっかりは仕方ない。ご近所でどこかとしばし考えて、久々に遠山記念館に行くことにする。

遠山記念館_Toyama Kinenkan

遠山記念館 - Wikipedia

 なんか金持ちが母親のために建てた豪邸と、併設して蒐集した美術品を展示する美術館というのがなんとなく覚えている雑な知識。何度か訪れているが、いくたびになんでこんな田圃しかないところにこんな大邸宅建てたんだろうと思ったりもする。

 改めてネット情報とかを読んでみると、立てたのは遠山元一。日興証券の創業者である。苦労して株で一旗あげた遠山が1936年、46歳の時に苦労して育ててくれた母親のために、現在の価値で120億円の私財を投じて建てた豪邸なのだとか。

遠山元一 - Wikipedia

 邸宅内は自由に見て回ることができるがとにかく広い。廊下から各部屋へと行き来しているうちに、いったい何部屋あるのかすら判らなくなってくる。妻も靴を脱いで装具だけで杖をついて歩いて回ったが、本人曰く「いい運動になった」そうだ。

 以前来た時には、邸宅内を展示スペースにして、現代芸術家の作品が展示してあったが、そういう利用も出来そうだ。でもこの重要文化財に指定された大邸宅は、邸内を見て回るだけども一見の価値があるとは思った。

 美術館の方は小さな展示スペースで、古代エジプトなどの工芸品が展示してある。それ以外Bにも英一蝶、喜多川歌麿安田靫彦の作品なども収蔵されているらしいのだが、それらを観たことはない。安田靫彦の「風神雷神図」はたしか埼玉県立近代美術館で観ていると思う。遠山記念館所蔵となっていたので、こういうのも持っているんだと思ったりもした。

 記念館の入り口の脇には蓮の池がありこの時期には美しい花を見ることもできる。

 川島で観光名所というと、この遠山記念館と平成の森公園くらいだろうか。もう少し周囲を含めて観光地化できないかと思ったりもしないでもない。

 比較的近隣ということでいえば、坂戸の一番外れにある台湾の宮、聖天院などもそうだが、見応えのある施設がある。なのに周囲が畑や田圃だけというのがなんとも淋しい。もう少し周辺を含めた開発なりなんなりして、人に来てもらうようなことがあってもいいのでと思ったりもする。まあなにもない田圃や畑のど真ん中の中の邸宅とか巨大寺院というのも一興かもしれないが。

 ネットで調べた遠山元一氏の家族はなんというか華麗なる一族っぽい。長男の遠山一彦氏は実業家にして音楽評論家。次男の遠山信二氏は指揮者、三男遠山直道氏は出版社の社長だったとか。その出版社はダヴィッド社だという。ダヴィッド社、なんとも懐かしい響きだ。現在も一応活動しているらしいけれど、ダヴィッド社というとサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』やサガンの『悲しみよこんにちは』の初訳などがある。自分らからすると『校正ハンドブック』なんかが馴染がある。

 遠山記念館、たまに行くと小一時間豊かな気分に浸れる場所だとは思う。