絵を飾る

 ここ10年くらい美術館巡りとかするようになった。審美眼とかそのへんは多分皆無なんだろうけど、一丁前に趣味美術鑑賞とか言うようになっている。多分枕にお恥ずかしいがとかつけているだろうか。とはいえ自宅に絵を飾るとかそういうのはあまりやらない方だし、まして絵を買うとかそういう財力も余力もない。

 絵は複製画もけっこう高いしリトグラフとかもまあ手の出るような金額ではない。無名の画家の作品とかそういう選択肢も沢山あるのだろうが、正直なにを求めていいのかもわからない。感覚的にこれいいなみたいに思ったものを、例えば10万とか20万とかするものを購入するというのもどうなんだろう、もともと下世話で形而下に生きている人間だし、芸術に金を使うというのが感覚的に見についてない。なので絵を買うみたいなことは、とてもとてもと気がひけてしまう。

 それ以前にずっと貧乏生活続けてきたし(今もそう)、生活にゆとりや余裕のないまま過ごしてきたので、家に絵を飾るというのはちょっと庶民のそれと違うかなとかと思って来た。それでも美術館へ通うようになると、グッズコーナーで売っている額絵というやつが少しずつ気になるようなった。

 そして最初に買ったのは山梨県立美術館でジュール・ブルトンの「朝」だったか。これは自分も気に入ったのと、妻がこれいいなというので買った。そしてホームセンターで売っている安いポスターフレームに入れて壁にかけた。まあ一応持ち家だし、多分終の棲家というか売ることもないだろうから、壁に小さな穴を開けようがなにしようが自由ということである。とりあえず居間にかけてみた。

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 それからしばらくはこれ一枚だったのだが、じょじょに上野の西洋美術館や箱根のポーラ美術館などで気に入った額絵を買ってすこしずつ階段などに飾るようになった。まあ素人なんで圧倒的に印象派ルノワールやモネ、スーラとかである。

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 安い額絵を安いフレームに入れて飾るだけで、なんとなくご満悦というか気持ちが豊になったような気がした。ポピュラーな画家の名画ばかりだから、いかにも俗人的ではあるけど、基本構わない。そういうものだ。

 ここ何年かはだいたいこのパターンできた。それ以降も美術館に行けばなんとなく気に入った額絵を買うことはあるのだが、新たにフレームに入れたり入れ替えたりはせず、それらは丸めたまま放置している。マイブームはけっこう一過性みたいなものだったのかもしれない。壁にフックを差すみたい作業もなんとなく面倒くさいとか。

 最近、友人からマティスの額絵を何枚かもらった。なんでも新聞販売所がなにか拡販用の宣材として持ってきたものだとか。いらないからやるというので貰ってきて、これも当然放置していたのだが、つい先日出してみると有名どころがけっこう揃っている。なのでちょこっと飾ってみようかなまたホームセンターでフレーム買ってきて入れてみた。一部はたしかルノワールかなにかを入れていたものを差し替えたりもした。そして階段スペースに追加して飾った。ついでに初めて自分の部屋にも一枚架けてみた。

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 マティスはこういうのなんていうんだろう、インテリアみたいなものには割とよくあうような感じだ。鮮やかな色彩感覚と装飾性みたいな部分だろうか。というわけでチープな額絵だけど、それなりに一人悦にいっている。だからどうのということはない。
 まああとは、和室に川合玉堂とかをちょこっと飾ってみようかなんて思ったりもする。でもピアノ置いてるから日本画はちょっと違うかなとか適当に思ったり。こういうことを考えているときって割と楽しい。