国土交通省「統計書き換え」~しっかりと

 財務省による公文書改竄、厚労省の毎月勤労統計調査の不正調査と続いて今度は国交省による建設業の基幹統計の書き換え問題が発覚。まず最初にデータの「書き換え」とかいってるけど、これはデータの改竄ですから。だいたいにおいて、企業が決算数字を意図的に「書き換え」たら、これは粉飾決算な訳で、誰がどういう意図で粉飾したかの責任は問われることは当たり前のことなのだけど、この国の行政にあってはそれがまったく責任問題とならない。

 国への統計データの提出というと、自分の経験では毎月勤労統計調査はけっこうな頻度でやってました。勤めていたのは中小零細企業でしたが、一応それでもきちんと期日までに七面倒臭い集計をして提出してたつもり。それが一応東京都の話らしいけど、全数調査のところを抽出調査に端折られていたとか。忙しいのに国から提出を義務づけられているからきちんと対応していたのにとか思ったりしましたよ、あの時は。

 そして今回の国交省の「統計書き換え」=「改竄」の問題。国会でも質疑がされているが、国交相の答弁もかなりいい加減である。そのへんのことは土曜日の朝日朝刊にも3面で取り上げられていた。

 

 この記事によると国会質疑はこんなやりとりになっている。

だが、この日の予算委でも、誰がどういった動機で書き換えを指示したのかは、明らかにならなかった

 これって新聞が客観的報道に徹しているような風だけど、実はこれってえらく他人事のような書きぶり。書き換えの動機や指示が明らかにならなかったのは政府、国交省の問題なのに、それをまったく捨象している。政府批判は行わないというのが、最近のマスコミの流儀のようである。

 

 共産党小池晃氏は、都道府県に書き換えを指示した文書を提出するよう要請。これに対し、斎藤氏(国交相)は、「しっかりと探しているが、私自身その文書を見ていない。もしあったら提出させていただく」と述べた。

 役所が指示を口頭だけで行うことがあるのだろうか、本省内での指示にしろ、本省から自治体への指示にしろ、役所仕事はすべて文書に基づいて行われる。その指示書が見つからない、「しっかりと」探しているというのはどういうことだ。多分、この先の流れでいえば、「しっかりと」探したがそういう文書は存在していない、あるいは事案終了のため廃棄されているというオチになるのがミエミエなのである。それでも最初に「しっかりと」という言葉を付け加えるだけで、なんとなく誠実に対応しましたみたいな印象になる、そういうことだ。いったいどこが「しっかり」なのだろう。

 さらに厚労省の「毎月勤労統計」の不正が2018年に発覚したため、政府は全ての基幹統計を一斉点検しているのだが、国交省の統計書き換え行為はその一斉点検で明らかにならなかったという。

小池氏がこの点をただすと、斎藤氏は「ピックアップできなかった。上がってこなかったということ」と述べ、第三者委員会で検証するとした。

 これに対して、小池氏は、第三者委より以前の段階で国交省として責任を持って調べる問題だと批判。「これだけ明らかな書き換えを一斉点検で見落としている。全ての統計をもう一度見直すべきだ」と主張したが、岸田文雄首相は「まずはしっかりと経緯や原因を明らかにし、再発防止のために何をしなければいけないのかが第一歩」などと述べるにとどめた。

 岸田首相はここでも「しっかりと」という言葉を使っている。そして経緯や原因を明らかにして再発防止をというもっともらしい言葉を述べている。しかしこれまでの「桜を見る会」、森友・加計学園もそうだが、経緯や原因、責任の所在は不明なままということがこの国、この政府の調査の実態である。かって森友学園問題での公文書改竄について、当時の責任者麻生財務相は、「なんで改竄が起きたか、それがわからんのですよ」と嘯いていた。そしてマスコミはその言葉を報道するだけで、さらなる追求を行わないできた。

 今回も多分なぜ統計書き換え=改竄が行なわれたのかは、曖昧なまま灰色の報告がなされて終わると思う。そして「しっかりと」と調べたうえで「しっかりと」報告したという言葉だけを空しく連発して終了となる。マスコミはそれを他人事のように報道して終了ということになるのだろう。

 まあ、実際のところなぜ統計データを改竄したのか。それは民主党から政権を奪取した安倍政権が、主に経済政策面での成功をうたうために、それを意図して改竄したということだ。多分、それは多く者が薄々感じている、いやそれが事実だろうと思っている。ひょっとするとマスコミの内部でも多くの記者がそう思っている。でも、それはおおっぴらに報道されないのだが。