クロコダイル・ダンディー

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 録画したのを観た。この映画もちろん知っているけれど初めて観た。そして思った。なんでこの映画、こんなに受けたんだろう。

 この映画、予告編で観た。多分初公開の時だから1986~87年の頃だ。不思議なことにその時観た映画、劇場、誰と観たか、まったく覚えていないのにこの映画の予告だけはけっこうよく覚えている。インパクトはあったということだ。それから30数年、幸か不幸かこの映画とは巡り合うことはなかった。

 予告編によると公開時、オーストラリアでは600万人が観たという。当時の総人口は1500万人。今現在オーストラリアの人口は2568万人らしい。30数年で1000万人以上増えたということか。どうでもいいことだけど。

 映画はオーストラリアの奥地でワニ取りを野性人を美人女性記者が取材する。取材対象としてインパクトのある男をニューヨークに招待しその様子を記事にしようとする。その顛末は・・・・・。

 欧米からすればオーストラリアは辺境の地である。そのまた奥地でワニ取りをする男が文明の最先端ともいうべきニューヨークの活躍。ある種のカルチャー・ショック、異文化の衝突、そういうコメディである。この図式って、けっこう古くから使われるネタである。田舎者が都会にやってきてというシチュエーションだとフランク・キャプラの『オペラハット』『スミス都へ行く』なんかもそうだ。『オペラハット』は田舎者と都会の新聞記者という組み合わせまで一緒である。

 田舎者の凄腕が都会で活躍するというシチュエーションでいえば、テレビドラマで一世を風靡した『警部マクロード』なんかもそうかもしれない。あれは西郡の保安官がニューヨーク市警に研修にやってきて大暴れするものだったか。

 野生児と都会の女性の恋愛みたいなことでいえば、これはもうターザンそのものである。ワイズミュラーの映画でも『ターザン、ニューヨークへ行く』というのがあったし、これは確かリメイクされてもいる。

 『クロコダイル・ダンディー』の前半は、取材でオーストラリアに訪れた女性記者がワニ取り名人クロコダイル・ダンディーの噂を聞いて、本人に取材をする。オーストラリアの奥地で3日間同行取材をするエピソード。後半はダンディーをニューヨークに連れてくる。そこからはニューヨークでの異文化の衝突的なエピソードをコメディを交えながら描く。

 たわいもないストーリーで、冒頭にいったようになぜこの映画が大ヒットしたのかがよくわからない。多分に主役のポール・ホーガンのキャラクター、人気によるものなんだろうと思う。当時、オーストラリアではコメディアン、司会者としてポール・ホーガンは絶大な人気があった・・・・、らしいから。彼のコメディアン、名司会者ぶりは1987年、彼がアカデミー賞の司会者に抜擢された時の映像で伺うことが出来る。あの大舞台で臆することなく見事なオープニング・アクトをこなしている。

 映画的には特にメリハリもなく予定調和的に多分そうなるだろうという結末、ハッピーエンドで終わる。どこをどう突っ込んでいいか、それすらを与えないような見事な定型、紋切型である。多分、時代が、1980年代後半にはこういうのが受け入れられる余地があったということか。

 1986年の世界、いったいどんなだったんだろう。チェルノブイリ原発事故とマラドーナのワールドカップの年である。アメリカの大統領はロナルド・レーガン、日本は中曽根康弘が総理大臣だった。前年のプラザ合意からバブル景気が始まりつつあった年でもある。そのせいか映画の中でタイムズスクエアの夜景が映し出される。ネオンサインの広告には、JVCソニーAIWAの文字が華やかに浮かんでいる。

 それにしても、なんでこの映画ヒットしたんだろう。


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