ワクチン打てない 誰のせい?

 昨日の新聞を見ている。

 朝日の声欄にワクチン接種がしたくてもできない状況を訴えている女性の投書があった。

(声)ワクチン打てない、誰のせい?:朝日新聞デジタル

 若者や子どもたちの感染拡大、働き盛りの40~50代での感染増などで、感染を広げる犯人呼ばわりされるが、こうした世代のワクチン予約が取りにくい状況、接種したくてもできない状況が切々と訴えている。

私は1週間前にようやく1回目を接種し終えたが、その日の枠は予約開始わずか5分で埋まった。中学生の娘は電話でしか予約が受け付けられず、8月上旬に3人がかりで数時間電話し、下旬に接種できた。

 私は高齢者で基礎疾患もちだったのでかなり早い段階で予約を取ることができた。それでも当初、地域での接種については電話は繋がらない、指定された地域医療機関の予約サイトはまったくアクセスできなかった。たまたま友人から大手町の大規模接種会場のサイトは空きがけっこうあると教えてくれて、すぐに予約を入れることができた。しかし例の河野ワクチン担当相のワクチン供給の不手際発言以降は、しばらく予約が出来なかったという。

 妻も基礎疾患もちで8月で60になったが、彼女の予約はまさしく河野氏の発言以降の混乱の中で、かかりつけ医院のサイトは常に工事中、地域のワクチン予約専用電話はいつも話し中だった。それでもこの投書のように長い時間電話をかけ続けてようやく予約を入れることができた。

 うちの子どもはというと、職域接種で最近2回目をうつことができたという。派遣されている会社が超大手企業のため、その枠で希望した人は割とすぐに受けることが出来たのだという。

 そういう自分の周囲のことで考えると、今、ワクチン接種ができているのは、高齢者と職域などで優先接種できる人たちということなのではないかと想像している。それ以外の中高年や若者世代は、日々仕事をしているので電話予約を一日中し続けることなどできない。サイトの受付もアクセスが集中して繋がらず、多分あっという間に受付は終了してしまうのだ。

 そういう煩雑さのために半ば諦めがちな人たちが、予約なしをうたった東京都の接種会場に殺到するのも理解できる。案の定、正午からの受付に朝7時から殺到して早々に受付終了となったという。

 政府広報やニュースショーなどでもワクチン接種をうながすアナウンスが頻繁に流されている一方で、ワクチン接種を希望しても高いハードルがある現実については、通り一辺倒な報道がなされるだけだ。投書の方はアメリカの友人の話を引用する。

米国の友人に状況を聞いたところ、夫婦も同年代の子どもたちも全員接種を完了し、社会は打ちたくない人への説得に取り組んでいる状況だという。その違いにため息が出てしまう。

 ワクチンの供給量が不安定なため、一日の接種回数が制限されている現実。そうした中でのネット予約はこの間ずっと、日々瞬時に予約が埋まってしまう。キャンセルも含めて空きができたときの対応は多分電話だけなのだろうが、これは永遠に繋がらないときている。

 出版社のコールセンターを10年近く運営した経験があるが、ベストセラーが出たときの電話の本数は一日数千件になる。でも基本的に電話回線の増設、人員増員も行わない。全部の回線が繋がっていれば、次の電話はすべて話し中。コールされていても、オペレーターが別の仕事をしていれば鳴りっぱなしにするだけだ。電話が殺到している状況ではアーラン式などまったく考慮されることはない。要は電話をかける側のことなどまったく配慮されないのえある。

 投書は最後にこう綴って終わっている。

東京五輪の開催前に、国民にワクチン接種が行き届いていたら……。国の失策が悔やまれてならない。

 コロナの感染拡大が続くなか、ワクチンを打ちたくても打てない、そういうワクチン難民が増殖している。すぐに受付が終了するワクチン予約サイト、電話もひたすらかけ続け、何かの僥倖で繋がるかもしれないという蓋然性に立脚した電話受付。こんなやり方は間違っていのだが、国と自治体は互いに責任を押し付け合っているようにしかみえないシステムがまかり通っている。

 ワクチン接種については国策として進められている以上、供給から接種の運営システムの構築まで一義的に国が責任を負っていると自分は思っている。あくまで自治体は実際のオペレーティングを担っているだけだ。それを思うと、この国の新型コロナのワクチン政策は完全に失敗していると思う。

 そんなことを考えながらテレビに目を向けるとワクチン担当大臣の総裁選出馬のニュースが流れている。