『オールド・ガード』

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オールド・ガード | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

  シャーリーズ・セロンの映画が観たいと検索してヒットした作品。2020年Netflix制作による配信映画である。

オールド・ガード - Wikipedia

 何世紀もの間、ひそかに人類を守ってきた不死身の戦士の物語。シャーリーズ・セロンはそのリーダーである戦闘のプロ。もう彼女のアクションが最高にカッコいい。もはや彼女はアクション女優という感じである。この流れは『マッドマックス』のフュリオサや『アトミック・ブロンド』以来そういうイメージが完全に定着している。一方で『ダーク・プレイス』『タリーと私の秘密の時間』などでこじらせ系女子を演じているか。

 自分の場合、彼女の映画といえば『モンスター』、『スタンドアップ』あたりからだったと思う。『モンスター』は最底辺で生活し犯罪に染まる以外に生きる術を見いだせない女性を描いたもの。もう陰々滅滅映画の頂点みたいな作品。傑作だけど二度と観ることはない、観れない作品の堂々1位にラインナップされてる。『スタンドアップ』はセクハラ、パワハラに立ち向かう炭鉱労働者の女性を演じた作品。この映画もけっこうシンドイ内容、シンドイテーマだがいい作品だった。

 ようはシャーリーズ・セロンは美人だけど、演技力抜群という女優の範疇だった。演技のためなら肉体改造にもトライする。『モンスター』『タリーと私の秘密の時間』ではそれぞれ10数キロ短期間で太り、それをまた短期間でスリムな体系に戻すという過酷な肉体改造を行っている。最初にその話を聞いたときは、この人は女ロバート・デ・ニーロかと思った。確かデ・ニーロも演技のため肉体改造やったことがあったと記憶してたから。たしか実在のボクサージェイク・ラモッタを演じた『レイジング・ブル』だったか。

 『オールド・ガード』で不死身の戦士の女リーダーを演じるシャーリーズ・セロン、その役名はアンドロマケ、通称アンディと呼ばれている。アンドロマケっていうと確かギリシア神話かなにかだったような。

アンドロマケー - Wikipedia

 名前の意味は「男の戦い」か、なるほどなるほど。そしてアンドロマケといえばヘクトールの妻であり、ヘクトールがアキレスに殺されると、アキレスの子ネオプトレモスの愛人となり一児をもうける。こういう数奇な人生についてはホメロスの『イリアス』の記述らしい。『イリアス』は要約版の『イーリアス物語』を大昔に読んだはずだが、ほとんど忘れている。

 さらにいうとヘクトールとアンドロマケというと、この二人を題材にしたジョルジュ・デ・キリコの不条理抽象画を思い出す。あれは富士美かポーラ美術館のどっちかで観たんだったか。

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ヘクトルとアンドロマケ』(ジョルジュ・デ・キリコ

 これは第一次世界大戦に出征して精神をやられたキリコが戦争のへの不安、不条理を描いたものだとか。まあこれは余談というか関係のない話だ。

 『オールド・ガード』は、人類の危機を救ってきた戦士たちと、その不死身の秘密をDNA情報の解析によって暴こうとするコングロマリット製薬会社との対決というのがお話。まあ不死身の情報を解き明かし汎用化させれば、多大な利益を得ることになるということだ。

 製薬会社のトップを演じるのはハリー・メリング。ちょっとオタクっぽいというか狂気な目つきのひ弱な男というのが特徴的。この人はハリーポッターシリーズで知られているようだが、最近だと確か『クイーンズ・ギャンビット』に出ていたのを覚えている。

 この作品、Netflix制作モノだがラストがいかにもTo be continued的で、絶対これ続編ありでしょうみたいな感じだが、今のところそういう発表はないようだ。ただし、ディズニーがマーベル系で様々なシリーズ・コンテンツを持っているだけに、Netflixとしてもシリーズものをぶち上げたいと狙っているはず。登場人物も白人、黒人、さらにアジア系の女性も今後キーになってきそうだし、シリーズ化すればここにさらにヒスパニック系とか登場させるんじゃないかとか適当に考えている。

 映画としては荒唐無稽なアクションだけど、そこそこストーリーもこなれているし面白い。シャーリーズ・セロンの際立った魅力に依拠している部分あるけど、彼女が降板してもさらなる登場人物の登場でどうとでもなりそうなコンテンツではある。もう1、2作は十分いけそうな気がする。