アイロン掛けとTシャツ

 久々にアイロン掛けをしてみた。妻のブラウスと自分のエディーバウアーのオックスフォードシャツに掛けるため。

 会社勤めしている時はラフなかっこといっても一応上はワイシャツだったので、週に2回くらいクリーニング屋に通っていたのだが、今は月に1~2回あるかないか。スーツやジャケットの類もほとんど着ることがない。そういうものだ。

 アイロン掛けは多分家事の中で一番苦手、嫌いな部類に入る。なので出来ればやりたくない。現役時代も自分のワイシャツ、コッパンなどにもほとんど掛けることはなかった。もともとは洗濯屋のせがれなのにね。

 自分が小学校に上がる前、父親は横浜山下町でクリーニング屋をしていた。ちょうど元町と中華街の間にある通りだったか。本牧の米軍住宅がメインの顧客だったという。父や従業員はカブの後ろに大きな布製のカゴを載せて配達をしていたらしい。兄が生まれる前から始めたので10年くらい続けたのだろうか。その後、事業に失敗して川崎に都落ちした。60年以上前のことである。

 当時のクリーニング屋にはアイロン掛けは職人技のような部分があり、日々様々なものにアイロンを掛けていた。実際、洗濯屋とはアイロン掛け職人と同義だったりもしたらしい。当時の店には何人かアイロン掛け職人のようなオジサンがいたらしい。

 出自が洗濯屋というのだが、自分はアイロン掛けは苦手である。家事という家事はだいたい中学生くらいからやっていたけど、料理や掃除に比べるとどうもダメである。洗濯はもちろんやる。家族四人分をまとめてやるのは週末のルーティンだった。何回も洗濯機を回す、一気に干す、取り込む、畳む。洗濯はほぼそこまでで、その次のアイロン掛けの工程は端折ってタンスにしまい込む。

 アイロン掛けが必要なもの、ワイシャツなどは全部配達に来るクリーニング屋に出していただと思う、なのでアイロンはあまり使わなかったし、せいぜい学生服のズボンに線を入れるとかそんな程度だった。

 とはいえ子どもが中学や高校に行き始めるとアイロン掛けは必須になった。通学用のワイシャツは毎日取り換える必要があったから。ワイシャツはクリーニング屋に出しても1枚100円くらいだったが、女の子用のワイシャツはなぜかブラウス扱いで倍以上したように記憶している。それでさすがにこれは自前でやるしかないということで、毎日洗ってはアイロン掛けをした。

 とにかく替えがない状態で朝あわててアイロン掛けたりというのは避けたかったので、毎日着替えても良いように5~6枚の在庫を確保して稼働させる。2枚洗濯し、2枚アイロン掛けするみたいなことを実践した。冬はベストや上着があるので、多少しわがあっても問題ないのでサボることが出来たけど、夏はそういう訳にはいかない。中学、高校の6年間、我ながらよくやったものだとは思う。

 子どもが大学に行き始めてからはあまりアイロン掛けはしない。必要なものはみんなクリーニング屋に出した。せいぜい自分のコッパンくらいは時々まとめて掛けたかもしれない。今回のアイロン掛けも本当に久しぶりのことだ。

 3枚にアイロン掛けしてミッション終了してから、思い立ってTシャツにアイロン掛けをしてみることにした。いつも洗ったらそのまま干して乾いたらたたんでしまい込む。なんとなく着るときにしわがあるなと思ったりもしていても、ずっとそのままだ。街で見かけるTシャツを着た人々はしわのないのを着ている。あれはマメにアイロン掛けをしているのだろうなとは思っていたが、多分マメなお母さん、奥さんがやっているのだろうなと勝手に想像していた。

  そこで手持ちのTシャツを2~3枚タンスから出してみてアイロン掛けしてみる。コットン地なので割と簡単に掛けられる。プリント部分はちと問題ありそうなので、ガラの大きなものは掛けないとか適当に工夫する。

 それで調子が出て来たのでさらに7~8枚掛ける、その後にたたんでみるとシワのないTシャツは重ねても見映えが良い。収納も楽だ。これはちょっと続けるかな・・・・・、とは思わない。やっぱりアイロン掛けは熱いし、疲れる。

 アイロン掛けしているとつまないことがいろいろ思い巡らされる。子どもが中学くらいの反抗期だった頃のこと。高校時代、土曜日の部活は必ず車で送って行ったことなどなど、だいたいが親的な黒歴史である。

 持っているTシャツの8割方はユニクロのものだが、以前に比べると生地が薄くなっているような気がする。いや実際まちがいなく薄い。自分は割と厚地で大き目のものをダボっと着るのが好きなのだが、最近のユニクロTシャツは薄くて少しスリム系のものが多いような気がする。

 プリント柄でも最近のギターシリーズではグレッチとフェンダーはもっているようだが、ギブソンがない。まだ出てなかったのか、その手の買うのに飽きたからか。大昔、ブルーノートのレコードジャケットをプリントしたものがシリーズ化されていたけど、あれは大人買いして10枚以上持っていたように思う。「クール・ストラッティン」や「サムシングエルス」「サイドワインダー」は2枚ずつ買ったような記憶がある。

 つまないことを諸々考えながらアイロン掛けをしていた。あらかた終わる頃、妻が「お腹が空いた」と声をかけてきたので、Tシャツをたたんでしまってから昼食作りに取り掛かった。

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